Alpina B5 BiTurbo (2011/3) 中編


ドアを開けた瞬間に目の前に広がるインテリアは、正に溜息が出るほどに豪華でセンスが良い。試乗車のインテリアカラーはシートや内装の一部が 少し赤み掛かった薄いブラウンのレザーでアルピナでは”シナモンブラウン”と呼んでいる。レザー自体は ダコタレザーということだが、BMW5シリーズよりはシボ目が細かく、なめしも手が掛かっているようにも感じた。試乗車のシートには白い縁取り(ホワイトパイピング、写真22)が施され、バックレスト表面にはアルピナのエンブレム(写真23)が付いてい た。これはオプションの”アルピナアイデンティティ&パイピング”で、確かにセンスは抜群だが、オプション価格が59.8万円となり、あと8万円で スズキアルトVP(67.7万円)が買えてしまう。なお、シートは当然ながらフルパワーで、ランバーサポートも備えている。そして、随所に使われているウッドトリムは、ちょっと赤みがかった光り輝くミルテウッドで、これがまた独特の高級感と華やかさを醸し出している。
現行BMW5シリーズ(F10)のシートは表面の2cm程が柔らかく体をサポートし、その下に硬い部分があって体が沈むことを抑えるようなタイプだが、B5のシートに座ってみるとBMWとは全く 異なり、硬い座面のカチッとした座り心地で、それにも関わらず体全体をサポートするというタイプだった。この座り心地はどこかで覚えがあると思ったら、ポルシェカレラとかなり似ているのを思い出した。ただし、カレラのように低くて手足を伸ばし、バックレストも寝かせるようなレーシングスタイルではなく、高い着座位置にキチっと座るサルーンのドライビングポジションとなる点が異なる。
 

写真 21
BMW5シリーズと共通なボディながら、ドアを開けた時に目の前に現れる豪華でセンスの良い内装には圧倒される。
シートは一見平らに見えるが、カチッとしてサポートも良く、座り心地は抜群に良い。


写真22
レザーの質も最高で、標準の5シリーズが安っぽくさえ見える。なお、ホワイトパイピングはオプション。

 


写真23
バックレスト表面のアルピナエンブレムはオプションで、左写真のパイピングと共に59.8万円

 


写真24
シート調整は当然ながらフルパワー&ランバーサポート付が標準となる。

 


写真25
サイドスカットルプレートにALPINAのロゴがあるのは
”お約束”どおり。


写真26
ドアインナーパネルもメタルをアクセントにしたミルテウッドとシナモンブラウンのレザーに統一されていて、これまた豪華絢爛、しかも上品さに圧倒される。

 


写真27
パワーウィンドウやミラーの調整スイッチなどは、5シリーズと共通だが、気のせいか仕上げが良い気がする。隙間もピタッと出ているのは、選 別した部品を使っているのだろうか?

 

ダッシュボードの眺めも正に圧巻で、天板はブラック、水平トリムが赤みがかったミルテウッドが光り輝き、その下はシートと同じ赤み掛かったブラウンという取り合わせが、なんとも言えない雰囲気を醸し出している(写真28)。ダッシュボード自体はレザー貼りではなく樹脂の成型品のようだが、表面の質感やシボの具合も実に良く出来ている(写真30)。これらの大物樹脂部品は、流石にBMW5シリーズと共有だろうが、何となくオリジナルの5シリーズよりも質感が良いような気がするのは、寸歩精度を厳しくした選別品でも使っているのだろうか。

センタークラスターのオーディオおよびエアコンの操作パネルは5シリーズと全く同一品で(写真29)、これほど凝ったインテリアのB5の割にはちょっと寂しい気もするが、それでも周りの豪華さの中で特に惨めになることもなく、それなりに合ってはいる。オーディオを鳴らしてみたが、標準装着品は5シリーズと同じものだった。決して悪い音ではないが、これまたB5の豪華でセンスの良い内装に比べると、ちょいと見劣り、ではなく聞き劣りがする。まあ、そういうユーザーのためにはオプションでハイファイシステムプロフェッショナル(600W、16スピーカー)が用意されているが、何故かオプション価格は10.8万円と、他のオプションに比べて一桁安いのは、BMWと共通の部品だからだろう。
ナビを中心としたディスプレイシステムはBMWの iDrive その物で、コマンドダイヤルやスイッチ類も全く同じものが使用されているのだが、そのスイッチが取り付けられているコンソールが例のミルテウッドのために、違う部品と勘違いしてしまう(写真31)。

そして、フロントのルーフにあるオーバーヘッドコンソールの後端には、シリアルナンバーが刻まれたオーナーズプレートが貼ってある(写真32)。試乗車のシリアルナンバーは何と022だった。B5のオーナーは、ドライバーズシートから天井に目を向ければ、何時でもその希少価値に満足できという気の配りようだ。なお、試乗車のルーフは標準のクロスだったが、オプションでアルカンターラも選択できる。このルーフライニング・アルカンターラはBMW individual というBMWと共通のオプションのために、23.5万円という割安価格となっている。
 

写真 28
ダッシュボードやセンタークラスターも、全て同じ雰囲気で統一されていて、これを毎日眺められるオーナーは、実に幸せな人生を送れそうだ。
特に赤み掛かって光り輝くミルテウッドとシナモンブラウンの取り合わせが実に良い。


写真29
センタークラスターのオーディオとエアコンの操作パネルは、5シリーズと全く同一なのがチョイと寂しいが、別に違和感は無くアルピナの内装に溶け込んではいる。

 

写真30
ダッシュボードのシボの質感も充分なのが判る。是非とも画像をクリックし拡大して、確認して欲しい。


写真31
iDriveのコントローラーは5シリーズと共通だが、ウッドパネルの質が良いために、雰囲気が違って見える。

 


写真32
中央天井部にあるオーバーヘッドコンソールの後端部には、プロダクションプレートが張ってある。このクルマのシリアルナンバーは022。何と22番目に作られたようだ。
なお、ルーフライニングはオプションのアンソラジット(6.5万円)。

 

アルピナはドライバーズカーだが、1,500万円級のクルマだから、リアに大切なお客様と乗せることだったあるだろう。 その点でもB5は充分に合格で、リアシートもフロント同様に出来は良いし、ベースが5シリーズだから狭くて不満が出ることもない(写真33)。 そしてフロントコンソールの後端を利用して、リア専用のエアコンコントロールパネル(写真34)も標準で付いているから、この面でもリアパッセンジャーに失礼は無い。ドアのインナーパネルもフロントと同等であり(写真35)、凝ったステッチの入ったフルレザーのアームレスト(写真36)にしても、リアパッセンジャーに対するおもてなしも充分だ。


写真33
リアもシート形状の良さと、充分なスペースから居心地は良く、大切なお客様を乗せても失礼にはならないだろう。

 


写真34
リアには専用のエアコン・コントロールパネルがある。

 


写真35
リアドアのインナートリムもフロントに準じた豪華絢爛たるものが使用されている。

 


写真36
アームレストのレザーとステッチも、リアパッセンジャーを充分に満足させられるだろう。

 

以上、B5の溜息が出るような豪華でセンスの良い内外装について、写真と文章で何とか読者にお伝えするべく頑張った積もりだが、いかがだろうか?まあ、百聞は一見に如かずだから、興味のある読者はご自分の目で確かめられることを御勧めする。

というところで、乗り味については後編にて。

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