NISSAN SKYLINE 250GT vs BMW 320i (2010/7) 後編


試乗は最初にセダンから乗ってみることにする。

動力性能
250GTは走り始めた瞬間から日本車らしい柔らかさというか緩さというか、まあそれが結構心地良く伝わってくる。ハーフスロットルでの加速では微かに聞こえるエンジン音とともに振動は殆ど感じないしトルク感も充分にあるから、一般的な走行では2.5ℓで充分と感じる程度の動力性能は持っている。 例によって遅い前車が左折して前が空いた後に20km/hくらいからフルスロットルを踏むと多少のタイムラグの後にシフトダウンされて全力加速を開始する。この状態でもエンジン音は結構静かでスポーツサルーンというよりも高級車に近いイメージだ。 加速自体は2.5ℓ級なりの、充分ではあるが驚くような強力なものではないが、普通のドライバーにとっては全く不足は無いし、この程度のレスポンスと動力性能があれば首都高の合流などで怖い思いをすることもない。

320iは4気筒2ℓと250GTに比べて明らかに動力性能のハンディはある。それでも従来の156psから直噴170psとなった最新モデルはそれまで遅い代表だった320iからすれば 充分に改善されている。それでも絶対的な加速性能は250GTが上回っているのは当然だ。 加速中の音は250GTに比べてよく言えばスポーティーで音量自体は大分大きい。スムーズさにおいては、よく出来ているといえ所詮は4気筒だから、V型とはいえ6気筒である250GTには、これまた敵わない。考えてみれば価格がどうであれ4気筒2ℓと6気筒2.5ℓを比較するのは反則ではある。

操舵性
250GTの操舵力は決して軽くは無いが適度で、中心付近の不感帯も少なく、中々にスポーティー味付けとなっている。レスポンスも良く国産車といては最良の部類だと思う。コーナーに突入する速度も多くの並の国産車に比べれば遥かに高い速度で安心して クリアしてしまう。 出来の良いFFが国産車でも結構見られる状況でも、やはりFR方式のメリットは充分に感じられる。ただし、ステアリングからのインフォメーション は以前程には路面状況を伝えなくなったと言われる320iに比べても少なく、、国産車的な味付けとなっている。
と、まあ、結構良い評価にはなるが、320iに比べると当然ながらあのカチッとした剛性感は感じられなくて、何処かクルマ全体に緩さを感じる。

BMW3シリーズといえば世界中のメーカーからスポーツサルーンを開発する際のベンチマークとされている車種で、しかも4気筒の現行320iは、フロント荷重の軽さという面では6気筒モデルよりも有利なために、ハンドリングという面では非常に評価が高い。 直噴版の320iも実にニュートラルな特性で、言い古された表現だが、ドライバーの腕が2ランク上がったような気持ちになるくらいに扱いやすく、しかも楽しい。そういう面では、それ自体は国産サルーンではトップの操舵性である250GTだが、この面に於いては320iには一歩、いや二歩を譲るのはしかたがないだろう。 それでも、ほんの二歩くらいで、決して歯がたたないわけではない。例えばVWゴルフGTIと国産の某ブ○イドのように。
なお、今回のMCからエンジンの直噴化とともにパワーアシストが油圧式から電動式に変更され、これに伴って操舵力はかなり軽減された。BMWといえばズッシリと重いステアリングが特徴的だが、ある時期には軽くなったこともあったから、BMW自体が昔から操舵力については迷っている兆候はあった。
 


写真21-1
スタート/ストップボタンはステアリングコラムの右側。この取り付け面はプラスチックっぽい質感がイマイチだ。

 


写真21-2
ステアリングコラム左のパネル上のスタート/ストップスイッチ。その下には電子キーのスロットがある。

 


写真22-1
基本的にはBMWと同じパターンのオーソドックスなセレクターだが、マニュアルモードはBMWと逆方向の押してアップになる。

 


写真22-2
これも御馴染みのBMWのセレクター。5シリーズ以上のスイッチ式ではなく、直線を移動していくオーソドックスな方式。マニュアルモードは左に倒すのはLHDとの共通化か。

 


写真23-1
日本車らしく自光式メーターだが、ケバケバしくないのは好感が持てる。

 


写真23-2
BMW各車に共通の御馴染みのメーター。

 

乗り心地
250GTの乗り心地はしなやかで路面からの突き上げは殆ど感じない。だからといって、フワフワする事も無く、結構フラットなこともあり、乗り心地はかなり良い部類にはいる。ただし、冒頭でも述べたように全体的に、何処か柔らかさというか、緩さを感じてしまい、ボディの剛性感も決して悪くは無いのだが、 320iのようなカチッとしたドイツ車テイストではなく、正に日本車独特のものだ。この雰囲気は極論すればトヨタのクラウンアスリートに通じるものがあるが、どちらもドイツ車のコピーをすることから脱却したことは良い方向だと思う。

これに対して320iは、250GTと同様にしなやかな乗り味だが、それでもカチッと芯のあるフィーリングはやはりドイツ車、というかBMWの一員だと感じるし、このフィーリングこそがBMWを買うユーザーが求めるものだ。 でも、最近は(いや、以前から)”LVのバック”と同様な、単なるブランド物としてBMWを購入しているユーザーも結構いるようだが、彼等(&彼女等)は、このフィーリングを理解しているのだろうか。
BMWはMモデルを除き全車にランフラットタイヤ(RFT)を装着している。ご承知のように、RFTにはレスオプションが無いから問答無用でこれが付いてきてしまう。これにより、RFT化された現行E90は先代のE46に比べて硬くゴツゴツした乗り心地になってしまい、BMMは乗り心地の面では自らにハンディを課した形になってしまっていた。 しかし、今回の直噴化とともに、足回りのチューニングも大きく進化したのと、タイヤ自体も改良されたのだろうか、RFT化前に近い状態まで改善されていた。

ブレーキ
スカイラインはクーペの一部上級モデルにはフロント4ピストン、リア2ピストンのアルミ対向ピストン(オポーズドとも呼ばれる、以下OPZ)を装着したモデルもあるが、セダンは全てオーソドックスな鋳物のフローティングタイプとなる。効きは最近進歩の著しい国産車 としては普通のレベルだから、決して悪くない。 10年前には初めてBMW3シリーズなんかに乗ると、ブレーキの効きの良さに驚いたものだった。当時の国産車のブレーキといえば、ペダルを踏んでも最初にグニャっとした遊びがあり、更に踏むと何となくブレーキが効きだすが、それ以上は一生懸命踏んだ割には減速度は増えないのに、ストロークは長くて、マルで硬いゴムを踏んでいるようだった。 メカの精度も悪かったのだろうがそれよりもパッド自体にも問題があったのだろう。
この10年前の国産車のブレーキ的だったのが数年前に試乗したヒュンダイクーペだった。その翌年に乗った同じくヒュンダイのクレンジャーは大分マシにはなっていたが、それでもマダマダで、ノウハウの塊で目で見てもサッパリ判らないブレーキパッドは、流石にパクル訳にはいかなそうだ。

さて、それではBMW320iのブレーキはといえば既に170ps版の試乗記で述べたように、以前の極端に踏力の軽いものから、適度な踏力で踏めば踏むだけ効いてくるし、遊びストロークも短いという特性になっていた。これは寧ろ好ましい方向で、折角追いついた国産車もまた少し離されてしまったような気もするが。 

写真 24-1
スカイライン250GTのV6、2.5ℓ VQ25HRエンジンは225ps/6,400rpmの最高出力と 26.3kg・m/4,800rpmの最大トルクを発生する。
動力性能ではBMW320iの直4 2ℓに圧倒的に勝る。

 

写真 24-2
BMW320iの直4、2ℓ 直噴N43B20Aエンジンは170ps/6,700rpmの最高出力と 21.4kg・m/4,250rpmの最大トルクを発生する。
 

スカイラインは北米ではインフィニティGで、しかも価格的にはライバルとなる3シリーズに近い価格で売られている。それなのに日本国内では250GTは320iよりも約90万円も安い。そして、比較の結果はといえば、内装では引き分け、オーディオとエアコンでは250GTの勝ち。
それでは”走る”はといえば、V6 2.5ℓの250GTが直4 2ℓの320iより勝るのは当然の結果だ。それでは”曲がる”の比較では、流石に320i有利か。最後の止まるは、まあ今となっては大きな違いはないが、踏めば踏むほど減速度が上がる点では320i有利となった。
さて、これが90万円の価値に結びつくかだが、単純には比較できないステータスという面では、ユーザー次第では320iの勝ち、いや250GTなんて全く目じゃない、という場合もあるだろう。まあ、これは個人の好みという事にしておこう。もう一つ、数字や単純な体感では比較できないが、所謂フィーリングというヤツについては、中々難しい。特にドイツ車特有の剛性感については賛否両論があるが、この違いを少しでも目で表すことは、出来ないものだろうか?
と、いうことから今回の特別編では、250GTと320iのボディを写真で比較して、その剛性の違いを理解できないかに挑戦してみる。

例によって言いたい放題が 気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。
また、国産車が最高だと思っている人も、この先は見ないことが幸せということで、お帰り願うことにしましょう。

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