NISSAN SKYLINE 250GT vs BMW 320i (2010/7) 中編


それではオーディオとエアコンという便利機能について2車を比較してみよう。なお、この部分に関しては最初に乗ったBMW320iツーリングの結果を先に記して、その後にスカイライン250GTによる比較結果を纏めることにする。

エアコン
まずエアコンについては、今時の電子制御エアコンなら不具合なく快適な温度コントロールができるのは当たり前で、この分野では日本に遅れをとっていた欧州車でも最近は充分な性能を持つようになった。もっとも、その大きな原因はデンソー製のエアコンを装備した事だったりするが。
今回320iツーリングを試乗したときは午後2時と気温も充分に上昇し、7月としては久しぶりの猛暑だった。外気温度計は36.5度を指しているし日差しはガンガンと照っているという、エアコンの試験には最高の条件だった。 実際に試乗車を受け取った状態では窓が全開でエアコンはフル稼働の状態だった。そこで全ての窓を閉めて、エアコンの温度設定を27℃にすると、未だカンカンに暑くなっている室内を冷やすためにダッシュボード上の4箇所の噴出し口かはゴーっという音と共に強烈な冷風が出てくる。 とりあえず、そのまま10分ほど走ったけれど、強烈な送風は収まらない。そこで、28℃に設定を変えたら、一瞬風量が収まったと思ったら今度は強烈な熱風が出てきたので、慌てて 27℃に設定を戻した。その後10分毎に3回ほどチャレンジしたが結局駄目で、諦めて最後まで強風に体を冷やされながらの運転となった。
実はE46時代のエアコンも外気温が35℃を超えた辺りから効きが悪くなったし、それにも増してATのも関わらず発進時にエンストするという持病があった。真夏の猛暑の一寸刻みの渋滞で、しかも上り坂なんていう場合は、もう冷や冷やモノだった。その後は改良されたようだが、東京の猛暑は赤道直下に匹敵するようで、BMWも東京の猛暑での試験は必須としているらしいが、年に何度もないような特殊な環境への対応となると、難しいのかもしれない。何しろドイツを始とする欧州の主力都市の緯度は、日本で言えば北海道並の北国なのだから、気温が40℃なんていうのは信じられない世界だろうし、同じ40℃でもアフリカの未開地と違い、東京の場合はこの温度で一 寸刻みの渋滞というのだから、世界一過酷な条件には違いない。

それではスカイライン250GTはどうだろうか。試乗した日は320iとは異なるが同じように外気温度は36度以上という猛暑だった。最初は目一杯室内が暖まって(というより触れないくらい熱い状態)いて、恐らく80℃以上だろうから、噴出し口からは320iの時と同様にゴーっという音と共に強力な冷風が出ている。 しかし、10分程の走行で冷気の勢いは徐々に弱まってきた。更に設定温度を上げてみても320iのように突然熱風が出てくることもなく、この強烈な猛暑でも確実にコントロールする制御と、室内を快適温度まで下げるだけの容量も持っているようだ。

結局、エアコンに関しては流石に猛暑が当然の日本の気候を知っている国産車の勝ちとなった。
 


写真11-1
上部のディスプレイ下端から水平に張り出したコントロールパネルや、アナログ時計を中心にしたオーディオなど、最近のニッサンのセオリーに従っている。

 


写真11-2
コンソール上のジョグダイヤルを使用するiDriveを中心として、エアコンとオーディオには専用の操作パネルを持つBMW御馴染みの方法 レイアウトだ。

 

オーディオ
BMW3シリーズのオーディオは400万超という価格を考えれば驚く程グレードが低いといわれていて評判は最悪だが、それでもE46時代の音は狭い音域ながらもそれなりにまとまった音創りをしていたが、ドンドン、シャリシャリという音が良いと思っている人たちには極めて評判が悪かったようだ。 現行の3シリーズの標準オーディオは320iと325iが6スピーカーで、335iではハイファイスピーカーシステム(8スピーカー)が標準となる。試乗車は勿論標準の6スピーカーが付いていて、配置は前後のドアのインナーパネルに各1個とフロントシートの下に 各1個で6個となる。スピーカーなんていうのは数が多ければ良いというものではないが、ドアのインタートリム前方に見える丸いパンチングメタルのスピーカーガードを見る限りは、 随分小口径のものを使っているようで、これは不評だったE46よりも更に小径だ。その分はシート下のウーハーで補強するのだろうが、こうするとどうしても篭った音になりやすいが、果たしてどうなのだろうか。そして、E46時代にあったAピラーのツイータ(高音用スピーカー)は見当たらない。何やら嫌な予感がするが、とりあえず聞き慣れたCDを入れてみる。 今回の試聴用もワンパターではあるが、以前320iHLでも使ったり紹介したもので、先ずはビル・エヴァンス・トリオのWALTZ FOR DEBBYから1.MY FOOLISH HEARTおよび2.WALTZ FOR DEBBYを聞いてみる。

1曲目は最初のピアノソロが流れた途端にこれぁヤバイ、という雰囲気で、右側から出るはずのピアノがよく聞こえないし、音はこもっている。更にはドラムのブラシュワークなんて全く聞こえないし、とに角音の抜けが悪い。E46時代はレンジが狭いながらもそれなりに纏まっていたのだが・・・・。 要するにツイーターを省略した事で高音が完全に無くなってしまったようだ。高音は指向性が強いからドライバーに向けないと聞こえない、なんていうことは常識なのに、ねぇ。 そして2曲目はウッドベースの音がボコボコと気持ち悪く、ピアノの抜けは悪いし、これは酷い。シート下にウーハーなんか付けるから、質の悪い低音がボコボコと出て、まるでヤンキー兄ちゃんのクルマみたいな音になってしまったようだ。 それでも念のために、もう一曲ということで、これも定番のART PEPPER MEETS THE RHYTHM SECTIONからYOU’D BE SO NICE TO COME HOME TOを聞くが、アートペッパーのアルトサックスが聞こえた瞬間に、駄目だこりゃ、という想像どおりの結果だった。
それでもめげずにバロック音楽も聴いてみた。曲はヘンデルの王宮の花火の音楽で、これは多数の金管楽器がメロディを奏でるのだが、高音の抜けが悪いくせに中高音が耳に付き、金管楽器の音がギスギスとして、実に不快だった。結局、320iの標準オーディオはFM放送のパーソナリティのトークを聴くくらいが精々か 、ということになる。

踏んだり蹴ったりの評価になってしまった320iの次にスカイライン250GTのオーディオを試してみる。スピーカーは320iと同じく6スピーカーだが、フロント用としてドアのインナートリムの下方に少し大きめ(主として低音用か)のスピーカーが、そしてウエストラインに中高音用と思しき小さめのスピーカーがある。 中高温用が高めの位置でドライバーの耳に少しは近い事から320iよりはマシな音が期待できる。
そして実際に曲を試聴してみれば、確かにビル・エヴァンスのピアノも320iよりはハッキリと、高音の抜けもマシだった。ドラムのブラシュワークも取り合えず多少は聞こえるし、アート・ペッパーのサックスだって、320iよりはまともな音だ し、ウッドベースだって320iのボコボコの低音よりはず〜っとマシだった。 そして王宮の花火の音楽は、金管楽器の音も320iよりは高音は多少伸びているし、ギズギスした感じも少ない。 とはいっても、これらは320iとの比較という条件の下での評価だから、決して良い音とは言えないのが辛いところだ。まあ、マトモにCDを聞くレベルかといえばチョッと首を捻りたくなる程度の音質だった。
 


写真12-1
スカイラインのスピーカーはフロント2×2、リア2で、フロントはウエストラインに小径の高音用があるために、多少はマシな音がする。

 


写真12-2
フロントは低めの位置にあるスピーカーのみがドライバーに向いており、もう一つはシート下にあるため、こもった低音と伸びない高音という、情け無い音になってしまった。リアのドアには左右各1個のスピーカーが取り付けられているので、合計6スピーカー方式。

 

今、この原稿を書きながらチェックのために試聴に使ったCDをパソコンで聞いているのだが、驚くなかれ量販店で 千円で買ったアンプつきのスピーカーから出てくる音は、出来の悪い320iは当然 ながら、少しマシなスカイライン250GTよりも遥かに高音質で、実はその後に乗って、320iとは比較にならないくらいに高音質と思った535i グランツリスモに近い音が出ている。 一体どうなっているのだろうか?言い換えれば、パソコンのD/A変換能力は極めて高いと言われているのが嘘ではないということだ。
ただし、ひとつ擁護しておくと、車の室内は真夏の炎天下に野天駐車をすれば100℃くらいにはなるし、極寒の北国では外気がマイナス20℃なんて当たり前で、室内だって当然氷点下となるから、その温度範囲は軍用スペック並となる。だから、パソコン用の機材を真夏の車内で使えはマトモに動作はしないだろう。従って、音質よりも環境性能を重視すると価格の割りに低性能となるのは止むを得ない面もある。

それでも、最近の最新鋭パソコンといえば、10万円も出せば64ビットのデュアル・コアー・プロセッサーという、一昔前なら何億円もする大型汎用機も顔負けの性能が手に入るという恐ろしい時代になっている。もしも旧型パソコンを使用しているならば、 この際に最新鋭のモデルに買い換えれば、投資効果は十分にあると思う。

そして、いよいよ試乗となるが、この先は後編にて。

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