Porsche Panamera S (2009/11) 前編 ⇒後編


一目見れば911の4ドアセダン版であることが判るパナメーラのエクステリア。
しかし現物を見ると実にデカい!
 

わずか20年程前には時代遅れの空冷911のみで辛うじて息をしていたようなポルシェが、ボクスターという新車種の発売と911の水冷化を皮切りに破竹の勢いで業績が回復し、その後にはSUVのカイエンを発売と矢継ぎ早のラインナップ拡大、そしてそれら全てが大成功 。そのポルシェが、今回遂に4ドア高級サルーンに進出するという、これまた世界的な話題をさらうような大ニュース。このパナメーラについては第一報として9月11日から日記のコーナーで5回に渡り内容を紹介 してあり、これは主としてパナメーラターボの紹介となっているので、そちらも合わせて参照願いたい 。なお、パナメーラのバリエーション一覧表は下記に転載しておく。
 
    Porsche Porsche Porsche Merceses Benz
      Panamera S Panamera 4S Panamera Turbo S600 Long
 

車両型式

  970M48A 221176

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.970 5.230

全幅(m)

1,930 1.870

全高(m)

1,420 1.870

ホイールベース(m)

2.920 3.165

駆動方式

FR 4WD FR
 

最小回転半径(m)

  5.1 6.0

車両重量(kg)

  1,880 1,940 2,010 1,630

乗車定員(

  4

エンジン・トランスミッション

エンジン形式

  V6 DOHC V6 DOHC TURBO V12 DOHC TURBO

総排気量(cm3)

4,806 5,513
 

最高出力(ps/rpm)

400/6,500 500/6,000 517/5,000

最大トルク(N・m/rpm)

500/3,500-5,000 700/2,250-4,500 830/3,500

トランスミッション

  7PDK 5AT
 

0〜100km/h加速

(sec) 5.4 5.0 4.2 -

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ダブルウィッシュボーン -

マルチリンク マルチリンク

タイヤ寸法

前/後 245/50ZR18
275/45ZR18
255/45ZR19
285/40ZR19
255/45R18
275/45R18

ブレーキ方式

前/後 Vディスク/Vディスク

価格

車両価格

1,374.0万円 1,436.0万円 2,061.0万円 2,105.0万円

備考

       

今回の試乗車は”廉価版”のパナメーラS(1,374万円)に少なくとも レザーインテリア+レザーシート(56.5万円)、ソフトルックレザーシート(6.5万円)、電動チルト/スライドサンルーフ(25.7万円)、19インチパナメーラターボホイール(25.3万円)がオプション装着されていたので車両価格は1,488万円とな り、取得税だけでも約75万円、諸費用を含めた総額は約1,600万円となる。
 


写真1
全長4,970mm×全幅1,930mm×全高1,420mmの堂々とした寸法は、見る者を圧倒する。


写真2
こうして見るとスタイルとしては4ドアハッチバッククーペで、テールランプのデザインや猫背気味のリアは911譲りだ。

 


写真3
例によって高速で自動的に上がる内蔵ウィングを出したところ。

 


写真4
オートマチックテールゲートはクローズボタン(黄色↑)を押すとパワーにより静々と閉まる。
 

 


写真5
後ろから見た内蔵ウィング。この角度から見ると911の兄弟である事は一目瞭然だ。

 


写真6
リアのラッゲージスペースは充分な広さがある。勿論セレブのゴルフ特急として使えるのは言うまでもない。

 

写真7
フロントフェンダーのサイドエアアウトレット。並みのサルーンでは無い事の証か。

久々の超大物新型車の試乗だから今回は完璧を期して確実にアポをとってポルシェセンターに出向いた。到着すると既に黒いパナメーラが駐車場に置いてあって、受付へ行くと顔見知りのお姉さんが既に指示を受けているということでキーを渡してくれたので、これを持って先ほどの黒いパナメーラの傍へ行く。 それにしえも、デカイ!キーは電子式(写真19)で ボタンを押すと何やら反応があったので恐る恐るドアの開けてみると、展示会では何度か見たインテリアがそこにあった。 それにしてもパナメーラのインテリアは何度見ても新鮮だし、高級セダンの定番であるメルセデスSクラスともまた違う高級感を持っている。シートに座ってドアを閉めて、さてエンジンはどうやって掛けるのかと考える。 スタート/ストップボタンらしきものはダッシュボードにもコンソールにも見当たらないので、インテリジェントキーを所持していればキーを差し込む必要がないという、最近の国産車的なものではないだろう。 そこで、アチコチ探したらステアリングコラムの右側のダッシュボードに電子式のスロットらしきものがあったので、ここにキーを入れてみたら中々良いフィーリングで見事にカチッと固定された (写真20)。 いよいよエンジンの始動だが、まず世の中の常識からブレーキぺダルに足を載せ、さてと考えてキーを右に捻ってみたらば、強力なセルモーターの音と共に高性能スポーツカーのように爆発的にエンジンは目覚めた。 アイドリングは千数百万円の高級サルーンの常識を全く無視したかのような、高性能の大型GT的な力強いものだ。

無事にエンジンも掛かったところで、先ずはシートの位置を合わせる。この時気づくのは911やボクスター/ケイマンなどのスポーツモデルに比べて着座位置が高い事だが、これは後ろにエンジンを積む生粋のスポーツカーと比べるからで、 BMW7シリーズやレクサスLSなどと比べれば充分に低い。この適度に高い着座位置のお陰で1,930mmという全幅の割には運転がし易い、というか特に一般道で不便を感じることもなかった。 シートもポルシェのスポーツモデルのように殆ど平らでコチコチの座面ではなく、これまた7シリーズのように表面が少し軟らかくて体の凸部分は沈むが全体はシッカリと固定するタイプで包まれ感は充分だし、それでいて体はシッカリとサポートされる。 ただし、試乗車はオプションのソフトルックレザーシートが装着されていたので特に座面が柔らかく感じたのかもしれない。何故なら9月の内覧会で座ってみた展示車はもっと硬い座面で、その座り心地はカレラに近かったような覚えがある からだ。さらに、着座位置が高めな事から、バックレストもポルシェのスポーツモデルのように大きく寝かした位置ではなく、サルーン的に多少立っている位置がベストポジションとなる。要するに運転姿勢はスポーツカーと高級サルーンの中間 となっている。

走り出す前に4シーター車ということでリアシートに座ってみる。リアシートで左右がタイトなスポーツシート(写真8、13)というのは不思議な感覚で、大げさに言えばリアでもカレラの運転席のような雰囲気がある。リアシートの中心には立派なコンソールがあり、ここにはエアコンのエアアウトレットとリアシートヒーターの操作ボタンがある (写真9)。オプションの4ゾーンクライメートコントロール(15.4万円) を装着するとこの部分にはコントロール用スイッチがずらっと並ぶことになる(写真9右)。そしてセンターコンソールの一番手前側には蓋の付いたボックスとなっていて、中にはシガーライター、電源コネクター、カップフォルダーがある(写真11)。エアコンのアウトレットは左右のBピラーにもあり(写真10)、センターコンソールと合わせて左右各2箇所から吹き出してくる。

ドライバーズシートに戻って再度周りを見回せば、オプションのフルレザーパッケージ装着の為に、室内のいたる所がレザー貼りでステッチがあるのに気が付く。 ただし、パナメーラの場合は”S”でも 標準でレザレットという人工皮革が貼られており、これがターボならフルレザーが標準となる。このレザレットは人工皮革としては非常に出来が良く、ボクススターからカレラまでのスポーツカー全てが標準シートのサイドサポート部分に使用している。従来のポルシェといえば車体価格は本当にベース価格で、実際にはオプションに50〜100万円程度を必要とするが、パナメーラの場合はオプション無しでも充分な装備が標準で備わっている。

そして天井を見上げるとフロントにはオーバーヘッドコンソールがあり、多くのスイッチが並んでいるのだが、試乗車のパナメーラSではスイッチの”空家”が多いのがチョッとシラケる (写真15)。
 


写真8
リアにも二人分のバケットシートが装着される。

 


写真9
パナメーラSの標準リアコンソール(左)とオプションの4ゾーンクライメートコントロール(15.4万円)装着時(右)。


写真10
Bピラーに組み込まれた、リア両サイドのエアコンアウトレット。

 


写真11
リアコンソールの手前部分にはシガーライター、電源アウトレット、そしてカップホルダーがある。

 


写真12
リアサイドのルーフにはアシストグリップとルームランプが設置されている。

 


写真13
一見フロントシートと見紛う程のリアのバケットシート。

 


写真14
911などに比べて遥かに高い着座位置は、ポルシェといえどサルーンである事の証となる。

 


写真15
フロントセンターのルーフに装着されているオーバーヘッドコンソール。

 


写真16
オーソドックスなパワーシートの操作部分。


写真17
パナメーラSのシートは座面がレザーでサイドがレザレット。試乗車はオプションのソフトルックレザーシート装着。

 

写真18
ディスプレイの下端から行き成りコンソールに繋がる独特のデザインをもつパナメーラのインテリアは実に新鮮だ。 あと数年もすると、これに似たコンソールの車が続々と出てきそうな気がする。


写真19
パナメーラの電子キー。


写真20
ダッシュボード上のスロット(左)に電子キーを差込(右)右に捻るとエンジンが始動する。


写真21
オプション(25.7万円)のチルト/スライド式電動ガラスサンルーフ。

 


写真22
試乗車はフルレザーインテリアがオプション装着されていたこともあるが、ドア内張りは流石に1500万円級サルーンらしく高級感に溢れている。 標準でもレザレットの内装となる。

 

写真23 (左)
ドアアームレストに組み込まれている操作パネル。手前右がリアゲートのスイッチ。


写真24
標準装着のナビはりバース時にはバックモニターに切り替わる。

 

というわけで、一通り内装のチェックも終わったので、いよいよ走り出すことにする。
1500万円也の4ドア4シータースポーツの乗り味は如何に?

⇒後編に続く