NISSAN NV350 CARAVAN 前編
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今から約30年前に発売されたニッサンキャラバンは、トラックをバリエーションに持たないバン専用設計で、商用1ボックスバンとしては洒落たデザインであったこともあり、 瞬く間に商用バンの代名詞となった。しかも、乗用車仕様(ワゴン)のコーチは豪華な室内や回転対座シートなど、正に走るリビングルームであり、この手のマニアの憧れの的となっていた。それに対してトヨタはといえば、ライバルであるハイエースバンは、元々が1トン積みの小型キャブオーバードラックをバン仕様であったこともあり、街で見かけるハイエースといえばシングルキャブのトラックが殆どだった。

ところが、その後はトヨタも頑張ってハイエースを改良し、何時のまにやらキャラバンを追い越して、今では1ボックスバンの80%以上がハイエースという状況になってしまった。この手の1ボックスバン&ワゴンの使い道として、最近ではロングボディーのワゴン仕様が病院や介護施設で使われているのを見る機会が多い。10人乗りならば普通免許で運転できるというメリットがあり、最近流行のデイケア用として8ナンバーの車椅子仕様など、急速に伸びている新しい産業分野での需要増を考えれば、キャラバンだって指を 咥えて見ている訳にはいかないだろう。

そこで、ニッサンが本気でFMCしたNV350 キャラバンが発売された。 先ずは両車の諸元を以下の表にまとめておく。ただし、ハイエースの場合は流石にバリエーションが豊富、というか膨大 なために、下の表ではバンの代表的な車種のみとした。ハイエースのワゴンはコミューターと命名されて、介護用の特装車が半標準で用意されていたり、マイクロバスの範疇まで揃っている。

  

標準ボディーは両車とも4ナンバーを前提としている為に、全長4,695、全幅1,695mmと小型車枠一杯に出来ている。ハイエースはバリエーションが多いが、キャラバンも今後は拡大していくのか、それとも売れ筋だけで勝負していくのか。ハイエースがこのクラスを制覇したのも、バリエーションの多さゆえといえるが、逆に言えば売れているからバリエーションも揃えられる 、とも考えられる。



エンジンンは両車ともボトムグレードに4気筒2Lガソリンを配し、これにガソリン2.5(2.7)とディーゼル2.5(3.0)を加えてるが、どちらもトヨタの方が僅かに排気量が大きい。ATミッションについては、ハイエースが4ATであるのに対して、キャラバンの5ATは流石に開発時期が新しいだけのことはある。まあ、トヨタのことだから、近いうちに6AT化してくるだろう。



エクステリアを見れば何やらライバルのハイエースと見紛うばかりのスタイルをしている。まあ、この手のクルマは決められたサイズに強引に四角いボディを押し込む訳で、結果的に同じような形になるのは判らないでもないが・・・・・・。

リア―ゲートを開けると流石に荷室のスペースは広くて、これが本当に小型車(4ナンバー)サイズなのか、と不思議なくらいだ。


ドアを開けて、さてクルマに乗り込むには乗用車とはチョッと違う。先ずはAピラー上方にあるハンドブリップ(写真左@)を右手でしっかりと握って、ステップ(同A)に右足を掛けたら右腕を引きながら ステップに立って、そこから乗り込む。この動作はキャブオーバー式トラックなら当然で、大型トラックなどは見上げるような運転席に乗り込む 、というかよじ登る訳で、まあミニスカのお姉ちゃんでは運転席に登るのはチョイと無理かもしれない。

フロントには3人が乗車できるが、センターシートは狭く形状も平らで、あくまで緊急用と思った方が良い。そこでセンターシートのバックレストを手前に倒すとテーブルとなり、伝票の整理などちょっとした仕事もできるし軽食もとれる。昼間の公園などに停まっている商用車で昼食や休憩など、言ってみれば昼休み中のバンを良く見かけるが、それなりの設備(という程でもないが)が付いている訳だ。

  

シート表皮は質素で実用本位だが、これが良く言えば欧州車調であり、高級車のベロアなんかに比べれば遥かに好ましい。フロントシートから振り返って後方を見ると、そこには長大なスペースが見える。写真右下は2列目のシートをセットしてあるためそれ程にインパクトはないが、2列目のシートを畳むとそれこそ長大なスペースが現れる。その2列目シートは、写真のモデルの場合は事実上の緊急用であり通常は折りたたんでおくのだろう(写真左下)。ただし、キャラバンには2列目に立派なシートを備えたモデルもあり、ユーザーによってはファミリーカーとしてミニバン的に使っている場合も多いとか。更には普通免許で運転できる最大の定員である10人乗り仕様もあるが、これは幼稚園や病院などの送迎用であり、普通のオーナーが買う事は無いだろう。



ドアは外側のノブもチャチいが、インナートリムやアームレスト、そして内側のドアノブなどは全て樹脂丸出しで、逆にそのシンプルさが決して悪くない雰囲気を出している(写真左下)。でもチャチだが。そして、後部のドアとなれば、更に質素というか、要するに荷物室の扉だから只々実用に徹してしてる(写真右下)。



キャブオーバーエンジンの場合、当然ながらボンネットは無く、エンジンはフロントシートの下に搭載されている。これが2トンクラス以上のトラックの場合はキャブ(運転席)自体をチルトさせることでエンジンもシャーシも丸出しとなり、実にメンテがし易いのだが、キャラバンの場合にはチルト機構を持たない1トンクラスであることと、1ボックスのためにキャブをチルトすることも出来ない。 従って、エンジンを点検するには室内の中央と左のシート手前のマットを持ち上げてロック金具(写真右下)を外すとシートを上げることが出来、エンジンにアクセスできる(写真左下)。

 

車幅からいえば、最近ではコンパクトカーでも1,750mmクラスが多い中で、キャラバンの1,695mmという小型車サイズは、数値では随分狭く感じるが、実際の広さは十分であり、特にフロントでも3人掛けが可能なことからしても、室内幅は全幅1,800mmクラスにも引けをとらないくらいに広い。その理由は真っ四角のボディとドアの厚みが狭いこと等が考えられ、考えてみれば20年前の乗用車は1,695mmの全幅なら十分に広かったのだから、やっぱり最近のクルマは何やら進む道が間違っているのではいだろか?

なお、ボディ左側には乗用のSUVやミニバンなどに比べてより大きなアンダーミラーが付いているが、トラックとして見た時には寧ろ小さめだ。この意味でも、キャラバンは2トン積みクラスの本格的なトラックと乗用車ベースのミニバンの中間的存在であることが判る。

   

純正のオーディオは流石のAM/FMラジオのみで、業務に不要なCDなどは付いていない。ただし、形状からみても、ここにナビを付けることは容易だろう。エアコンは、これまた当然ながらマニュアル方式だが、この長大な室内では、前席を効かせるのがやっとだろう。まあ、多人数乗車のモデルにはそれなりの容量とエアアウトレットを持ったエアコンがオプションにあるのだろうとは思う。



何度も繰り返すように、乗用車とは感覚を異にするトラック的なポジションで、早速走り出すことにするが、このつづきは後編にて。

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