MAZDA ATENZA WAGON XD 前編
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マツダスカイアクティブテクノロジーは走る喜びを叶えるためにエンジン、トランスミッション、ボディ、シャーシーの全てを革新するというプロジェクトで、 既にエンジンやミッションでは採用されているが、全てに於いてこのテクノロジーを採用した期待の新型アテンザが発売された。そして、その中でも注目は ディーゼルエンジンを搭載したワゴンXDで、このクラスのワゴンの少ない国産車のラインナップを埋めて、また折しも少し前に発売されたBMW 3シリーズツーリング、それもディーゼルエンジンを搭載した320dに対してスペック的にも近いこともあり、このサイトの主流を占める3シリーズのオーナーや検討中の読者からすれば大いなる感心があるであろう事は容易に想像できる。

先ずはアテンザとBMWのディーゼルワゴンについてスペックを比較してみる。なお、参考として国産ワゴンの数少ない生き残り?というか、日本では珍しくワゴンを主体とするレガシィツーリングワゴンを加えてみた。

  

アテンザワゴンは3シリーズツーリングと比べて全長で+175mm、全幅で+40mmと一回り大きい。レガシィのアウターサイズは全長とホイールベースはほぼ等しいが全幅がアテンザよりも60mmも狭いのは、日本国内の事も大いに考慮しているからだろうか。

今回の試乗車はXDのベースグレード(290万円)にディーラーオプションのナビが付いていたから実質車両価格は300万円を超えているだろう。アテンザの寸法はBMW5シリーズに近いくらいだから、実車を見ると実に堂々としているし、これだけの車幅があればスタイルだって良くて当たり前、という訳だが1,840mmという全幅は一般的なファミリーマンションの立体駐車場では契約を断られることが多いそうだ。

サイドビューはウエストラインが後方に向かってキックアップしていて、ルーフは逆にBピラー辺りから下降している。そのために、サイドのグラスエリアは後方に行くほど狭められている。また、リアゲートも大きく寝ているから、高さ方向のラッゲージスペースは決して広くない。フロントは大きく迫り出した5角形のグリルがアグレッシブな印象を強調しているが、このスタイルは中々良いと思う。

XD(MTを除く)のヘッドランプは標準がハロゲンでディスチャージランプはオプションとなる。またスモールはBMWのようなリング状に光るタイプを使用している。リアのラッゲージスペースは流石に広く、特に奥行きが長いのは驚くほどで、伊達に3シリーズよりも175mmも長いわけではなさそうだ。

ここで最近のマツダの伝家の宝刀でもあるSKYACTIVについてまとめてみよう。アテンザはフルスカイアクティブであり、その内訳は

・SKYACTIV-D 2.2:圧縮比14.0のクリーンディーゼル
・SKYACTIV-G 2.5/2.0:高圧縮比13.0のガソリンエンジン
・SKYACTIV-DRIVE
・SKYACTIV-MT
・SKYACTIV-BODY
・SKYACTIV-CHASSIS

上記のうち今回のハイライトであるディーゼルエンジンに採用されているSKYACTIV-D 2.2について、少し詳しく触れてみる。なお、使用した図表については参考資料2より転載した。

ディーゼルエンジンは通常ガソリンエンジンに比べて圧縮比が高いために、圧縮上死点(ピストンが最上部の時)での圧力と温度が極めて高く、そこに燃料が噴射されると適切な混合となる前に着火して局所的な燃焼が発生しNOxやススが発生する。これを避けるために圧力と温度が下がるように上死点を過ぎてから燃焼させている。これに対して低圧縮比とすると圧縮上死点での圧力と温度が比較的低いために噴射された燃料が空気とまざり合うための十分な時間を経た後に着火出来るためにNOxやススが減少する。また、圧縮上死点での着火により膨張比が高く、結果的に高効率となる。

   

更に低圧縮比化により通常のディーゼルエンジンのように高い燃焼圧力に耐える構造が必要なく、機械抵抗もガソリンエンジン並に低くなっていることで、燃費性能アップしている。

   

また、低圧縮比化は極冷感時に安定した始動と燃焼が得られないことを解決するために下記の技術も投入されている。
■コモンレール式マルチホールピエゾインジェクター
   ピエゾインジェクターにより濃い混合比を持続させる。
■可変バルブリフト機構
   吸気行程中に排気ガスを取り込み、吸気温度を上昇させて冷間時の燃焼を安定させる。

参考資料1:マツダ オフィシャルサイト https://www.atenza.mazda.co.jp
参考資料2:自動車技術 Vol.65 2011.03 次世代パワートレインの紹介

今回は少し趣向を変えて多少技術的な解説としてみたが、末尾に参考文献の学会誌を標記したら何やらアカデミックな雰囲気でB_Otaku らしく無い、なんて言われそうだが、こういうのも偶には良いだろう。

アテンザ XDのエンジンはCX-5と共通だが、ボンネットを開けてみると成程、ブルーのエンジンカバーを除いて他は同一のようだ。なお、CX-5以外にもスカイアクティブエンジンに使われていたブルーのエンジンカバーは、今後廃止されるということだから、CX-5もアテンザと同じ外観になるのだろう。このエンジンの凄いところは、アイドリング状態でボンネットを開けてみても振動が極めて少なく、これはディーゼルとしては驚異的だった。例えば室内からは殆ど振動を感じさせないメルセデスでさえ、ボンネットを開ければブルブルと振動していて、これをマウントなどで吸収させることで室内に伝えないようにしているのだが、マツダのディーゼルは振動を元から断っている。

  

本題に戻って、ドアを開けてインテリアを見てみるとマツダは欧州市場をターゲットとしているので、インテリアも欧州車的だ。なお、上級のL Packageでは本皮シートなどの高級装備となるので、見た感じも違うだろう。なお、インテリアカラーはベースグレードではブラックのみで、L Packageではオフホワイトも選択できる。

ファブリックシートの表皮も欧州車的なもので、これだけ見たらば欧州車(の低グレード車)のようだ。そしてシートはCX-5と共通化されているようだが、SUVのCX-5は着座姿勢が高いので当然ながらシートのベースは形状が異る。

ドアのインナートリムはベースグレードでも肘掛けにソフトパッドとなっている人工皮革を使用していて、おまけにステッチも入っているし、ドアノブやアー ムレスト先端にはメッキ部品を使うなど気を使っている。なお、肘が当たる部分もクロスの下はソフトなウレタンで弾性樹脂よりも更に柔らかく、このクラスとしては珍しく金が掛かっている。なお、ドアノブやパワーウィンドウスイッチのパネルなどの部品もCX-5と共通化されているが、SUVの為にレイアウトは異っている。

インパネのデザイン自体はオーソドックスで、ナビ装着を考慮してオーディオのスペースを最上部に配置し、その下にエアコンのアウトレットを設けているなど、最近のトレンドに従っている。なお、インパネの上半分は弾性樹脂を使ったパッドになっているなど、一応300万円級なりの出来にはなっている。

エアコンの操作パネルはよく見ればCX-5と共通だが、ディスプレイの色がCX-5のアンバーに対してアテンザは白と異なっているが、これもMCでアテンザと共通の白になることも考えられる。インパネ中央の水平トリムやエアコン表示部のパネルなどは黒い光沢のあるパネルを使っているが、ピアノブラックという程には質感は高くない。なお、上級のL Packageの場合は水平トリムはボルドーパネルという光沢のあるダークブラウンとなるが、エアコンパネルは同じブラックのままだ。

      

というように、内外装は300万円のクルマとしては、マアマアというところだろうか。そして一番の興味であるディーゼルエンジンの走行性だが、これはCX-5の経験から良い結果が出るであろうことは想像がつくから、興味は寧ろアテンザの乗り心地や操舵性などとなる。

続きは後編にて。

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