マツダ ロードスター 2.0RS RHT 6MT 前編
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1989年に発売されて以来、世界中にオープンスポーツカーのブームを巻き起こした初代(ユーノス)ロードスター(NA)から数えて3代目のマツダロードスター(NC)が発売されたのは既に3年前の2006年だった。クルマ好きとしては当然試乗するべき車種では あるが、あまりにもメジャーであるためにジックリと評価したいという気持ちから延び延びとなってしまった。実は今回、いわゆるチョイ乗りではあるが折りたたみ式ハードトップのRTH、しかも 6MTに乗る機会があったことから、簡単に紹介してみることにした。
今やスポーツカーの代名詞のマツダロースターを簡易試乗記とは・・・・なんてお怒りの読者もおいでだろうが、まあここは抑えてもらって、近い将来に本格的に試乗する機会があれば、その時はもっと徹底的に紹介してみるという事で・・・・・・。

さて今回の試乗車は、2.0RS RHT(6MT)で価格は286万円。これに今では半分当たり前の装備となったナビを付ければ軽〜く300万円の大台を超えてしまう。世間のクルマが皆値上げ傾向にあるから仕方がないとはいえ、今やチョッと良いクルマを買うには300万円は必要となってしまったようだ。
試乗車は柿色に近いイエローで中々スポーツカーらしい色だが、いざ自分で買うとなるとちょっと引くものがある。歴代のロードスターはどちらかと言えばユーモラスな顔付きだったが、この3代目は昨年 末のMCでフロントグリルが変更されて、歴代ロードスターとしては最も精悍な顔付きとなった。ロードスターと呼ばれる車種はオープン走行が原則で、雨が降ったときに一時的に幌を架ける、いわばクローズド走行は傘をさした状態というのが本来だった。その伝統を考えれば、現行マツダロードスターもオープンの姿が 本来であり、この時が一番決まってカッコ良い。そして、他車でも同様だが、取り分け折りたたみ式のハードトップ(以下RHTと表記)を備えたクルマ は屋根を架けた状態では決して美しくない(写真右下)。これはソフトトップ車でも同様だから文句をいう筋合いではないが。



この手のRHTは嵩張るハードトップを分割収納する為にトランクルームのスペースが大きく犠牲になっている場合が多く、車種によってはオープン状態では事実上トランク スペースが無きに等しい場合もある。マツダロードスターは写真のように屋根を畳んでも実用になる最小限のペースは確保されている。まあ、レクサスIS250Cのように4シーターのコンバーチブルならば、トランクスペースが事実上無くとも小物類は後席スペースに置けるから、実用上は何とかなるが。



乗り込むとサルーンとは全く違う低い着座位置に、このクルマはスポーツカーなんだと再認識すると同時に、オーナーとなれば乗り込むたびに非現実世界へと逃避できる・・・・・という程に大げさでもないが、少なくとも普通のオトウサンから見れば セダンとは違う世界にワープできる だろう。試乗車のシートは標準のファブリックだったが、表皮はカローラやマークXに代表される毛足の短い化繊モケットではなく欧州車的なものだ。 そういえば、現在のマツダ車にはセコいモケット風は無かったように思う。5ナンバーサイズをわずか20mmオーバーした全幅から判るように室内は良く言えばタイト、悪く言えば狭い。まあ、この手のクルマの場合は狭さがスポーティに繋がると思えば、大きな問題では無いし 、元々マツダ製のライトウェートスポーツにステイタスと求めるのが間違でもある。

次に正面のメーターに目を移せば、2つの大径メーターはゼロ 始点が6時の位置(真下)にあり、これまた走り屋が喜びそうな演出がなされている。更に3つの小径メーターは水温、燃料は当然としても真正面には地球環境を考慮して瞬間燃費計・・・・なんていう偽善はせずに、素直に油温計が配置されているから、 更にスポーツマインド満点となっている。 5つのメーターの外径にはシルバーのリング、盤面は黒字に白文字で、これもまた雰囲気満点となっている。一般的な国産車のように青や赤に輝く自光式メーターとは対象的なロードスターのメーターは、 良き時代のスポーツカーを現代に再現したこのクルマのコンセプトを良く表している。

と、まあ能書きはこのくらいにして、走ってナンボのスポーツカーだから早速走り出すことにする。なお、今回の試乗は時間の関係から全てオープン走行で、クローズドでは走っていない点を考慮しなければならないが、 オープンこそがロードスターの本来の姿ということで許してもらおう。

エンジンは簡単に始動して、アイドリングは乗用車的ともいえる静かなものだった。クラッチを踏むと、ペダル踏力の軽さに驚く。このクラッチは繋がりも穏やかだから軽い踏力と相まって初心者でも問題なく乗りこなせるだろう。 公道に出て中間スロットルでの加速をすると、おっ、これはイケる!と、感じる。本当に良いクルマは10mも走れば直感的に良さが感じられるものだが、このロードスターもお世辞抜きで乗った瞬間に良さが判るクルマで、これは久々の 掘り出し物だ。 それでは何がそんなに良いかといえば、フィーリングというのかシートに座っての姿勢や視界、各操作部分のレスポンスや加速感、それに排気音などが上手くマッチして、如何にもスポーツカーを操っているという満足感をドライバーに抱かせる演出 が実に良い。
初代ロードスターが1.6ℓだったこともあり、ロードスター=遅いという概念があったが、今や2ℓの現行車は1,150kgという軽量なボディに助けられて2ℓ 170psでも、スポーツカーとして充分な動力性能を持っていた。 ちょっと慣れたので例によって信号待ちからの加速でフルスロットルを踏んでみたが、この時の加速は結構強力で同時に排気音も如何にもスポーツカーという音が聞こえてきた。ただし、何回かの加速を試みると、どうも伸びが無いのではないかという気がしてきた。 そこでレッドゾーンまで引っ張った時の速度(計算上)を調べたら、ロードスター(7,200rpm)の場合は1速で53.4km/hで、これはフェアレディZ(7,500rpm)の68.5km/hやボクスター(7,200rpm)の70.6km/hと比べて確かに低い。 1速でレッドゾーンまで一生懸命引っ張ってもボクスターが約71km/hに達するのに対して、ロードスターは約53km/hだから、確かに加速は結構良いのに伸びが無いと感じ て当然だ。しかし、軽い車重とローギアードなミッションにより街中では充分に活発に走れるし、日本の異常に低い制限速度を考えればロードスターの動力性能は丁度良いかもしれない。



ミッションは軽くスムースで吸い込まれるように入ってゆくから素早いシフト操作が可能で、ポルシェのゲトラグ製6速に勝るとも劣らない。ただし、カチっカチっというフィーリング (意外と動作が重くて素早い操作ができない)が好きなドラーバーだとチョッと違うが、本来素早いシフトにはロードスターのような特性が向いていると思うが、まあ好き好きでもある。 それにしてもMTのフィーリングという面ではマツダとホンダはずば抜けているのに対して、BMWはM3でもイマイチ(何故か135iは良い)だし、ニッサンも何やら引っかかりがあるフィーリングで感心しない。

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