マツダ ロードスター 2.0RS RHT 6MT 後編
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今回は時間の関係からワインディングロードでハンドリングを試すというわけにはいかなかったが、普通に乗っただけでもステアリングは重さ、レスポンスともに適度で、その軽快なノーズの動きは普通のオトウサンでも 充分にスポーティーな走りが可能となる。 ボンネットを開けてみれば、なるほどエンジンはフロントストラットタワーの中心(写真右上の白↑)よりも後ろにマウントされている。いわゆるフロントミッドシップというヤツだが、エンジン位置が後ろにマウントされてフロント重量を軽減させている ことで有名なBMW320iと比べても、 ロードスターのエンジンは更に後方にマウントされている。

クラッチと同様にブレーキ踏力も極めて軽くて、言ってみればカックンの傾向がある。MT車乗りが大好きなH&T(ヒールアンドトウ)をやるには、この軽いブレーキ踏力がネックとなり、 特にそれ程強くない減速をする待乗りでは、アクセルを踏む踵の力が爪先のブレーキペダルに影響しないように訓練が必要となる。何言ってるんだよ、H&Tは本来サーキットでコーナー手前の急減速に使うものだから、幾ら踏力が軽いといってもフルブレーキングならそれなりの力で踏んでいるのだから、問題は無い筈だ、と言う意見 は確かに正論だ。 しかし、今時3ペダルのMTなんかを買うのは、その雰囲気を味わうためだから、交差点で右左折の際に中程度の減速をしながら、ウォンと一発吹かす楽しみだってある筈だ。何より一般道で本気で限界の減速なんかするような運転をしたら、周りから結構なひんしゅくを買うことは間違いないだろう (それに場合によっては危険だ)。     

今回の試乗車は最もスポーツに振ったモデルであるRSだったから、乗り心地はそれなりに硬い。とはいっても決して不快ではないし、オープンボディの割には明らかな剛性不足を感じたり、スカットルシェイクによりルームミラーに写る景色が振れたりすることはなかった。 そして、何より感心したのはオープン走行時に両サイドのウィンドウを下げて、全くのフルオープン状態にしても風の巻き込みが極めて少ない事だった。例えばボクスターの場合はサイドウィンドウを上げていれば風の巻き込みは殆ど無くて、高速道路ですら問題なくオープン走行が可能だが、サイドウィンドウを下ろした途端に風が巻いてくるから、この点では ベースグレードでも600万円を超えるポルシェボクスターよりも間違いなく優れている。
ハードトップの開け閉めは手元のスイッチで行うが開閉に要する時間は僅か12秒で、実際に開閉してみても確かに速い。これなら信号待ちのチョッとした時間で開け閉めが充分に可能で、 体感的な開閉速度は今まで速いと思っていたボクスターよりも更に速い。このルーフは電動ではあるが、ロックはルーフ先端(ウィンドシールド上部)の中央にある手動のレバーで行う。 このレバーは位置も機構もボクスターとソックリだが、質感はボクスターと比べると大いにチャチい。
  

国産ではフェアレディZが新型にFMCされたが未だオープンは発売されていないから、現在新車で買える2シーターのオープンはダイハツコペンと ホンダS2000(これも何時まで発売が継続されるか微妙だが)、そしてレクサスSCくらいではないか。 SCはV8エンジンを積んだ高級パーソナルカーで、言ってみればプアーマンズSLというところで、スポーティなロードスターではない し、一応+2(殆ど実用にならない程狭い)の4人乗りだ。これが輸入車となれば 流石に結構充実していて、下の表のBMW Z4とボクスター以外にも同クラスのメルセデスSLKがあるし、アウディならばTTロードスター、そしてアルファロメオスパイダーなど豊富に揃っている。
 
    DAIHATSU MAZDA HONDA BMW PORSCHE

COPEN ROADSTAR
2.0 RS RHT
S2000
2.2
Z4
sDRIVE 23i
BOXSTAR

寸法重量乗車定員

全長(m)

3.395 4.020 4.135 4.250 4.340

全幅(m)

1.475 1.720 1.750 1.790 1.800

全高(m)

1.245 1.255 1.285 1.290 1.290

ホイールベース(m)

  2.230 2.330 2.400 2.495 2.415

最小回転半径(m)

4.6 4.7 5.4 5.4 5.2

車両重量(kg)

830 1,150 1,250 1,500 1,370

乗車定員(

  2

エンジン・トランスミッション

エンジン種類

  4 DOHC
TURBO
4 DOHC 4 DOHC 直6 DOHC 水6 DOHC

総排気量(cm3)

659 1,998 2,156 2,496 2,892

最高出力(ps/rpm)

64/6,000 170/7,000 242/7,800 204/6,300 255/6,400

最大トルク(kg・m/rpm)

11.2/3,200 19.3/5,000 22.5/7,500 25.5/3,000 29.6/6,000

トランスミッション

5MT 6MT 6MT 6AT 6MT

駆動方式

  FWD(FF) RWD(FR) MidEng(MR)
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

18.0 13.0 11.0 9.4 9.4

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット ダブル
ウィッシュボーン
ストラット ストラット
  トーションビーム マルチリンク ダブル
ウィッシュボーン
セントラル
アーム
ストラット

タイヤ寸法

前/後 165/50R15 205/45R17 F:215/45R17
R:245/40R17
225/45R17 F:205/55R17
R:235/50R17

ブレーキ

前/後 V-Disc/Drum V-Disc/Disc V-Disc/Disc V-Disc/V-Disc V-Disc/V-Disc

価格

     
 

車両価格

  159.5万円 286.0万円 386.4万円 523.0万円 608.0万円
 

備考

  2.0S(5MT)
233万円
   

さて、これらを比べてみればマツダロードスターというのは実に絶妙な位置にあることがわかる。軽快感や低価格という点ではダイハツコペンの方がより勝っているかもしれないが、やはりスポーツカーとしての最低限の動力性能を考えればターボとはいえ660ccのエンジンやFFによる駆動、そしてリアサスはトーションビームでドラムブレーキ装着など、スポーツカーというよりも廉価版の実用車の構成だから、この点でもマツダロードスターの優位は歴然としている。
そして世界広しといえども2ℓ級の手軽なロードスターというのは希少で、登場した頃はロードスターよりも少し大きい程度だったBMW Z3も新型Z4ではSLKやボクスターと同等のクラスとなってしまった。 S2000の場合はロードスターと同じ2ℓとはいっても、性能的にはクラスが2つくらいは上だから直接比較される事も無いだろう。そして、Z4やボクスターはといえば、それぞれにステータスも良さも持ってはいるが、価格的にも手軽ではない。

ところが、ロードスターの後にポルシェボクスターに乗ってみれば、確かに動力性能もハンドリングも、そして内装の出来も良いのは間違いないのだけれど、ロードスターにあった何かが失われているように感じて、無条件にボクスターが上だとは言えないところがある。 この感覚は何処かで覚えがあると思ったら、ちょうどボクスター(またはケイマン)の後にカレラ(S)に乗った時に感じた感覚だった。カレラは確かに性能は良いが、軽快な爽快感という面ではボクスターが勝っているのだが、これと同じ事がマツダロードスターとボクスターの間でも言える。 軽快でスポーティーという点ではロードスターは群を抜いているから、ある面では1000万円を軽く超えるカレラですら敵わなかったりする。やっぱりスポーツカーというのは軽量・コンパクトが大切だと身を持って感じた今回の試乗だった。
さて、ここまで読んでくれた読者は、チョッと褒めすぎじゃあないの、と思われるかもしれないが、実際に期待を大きく上回っていたことは確かだった。ただし、今回はチョイ乗りだから、本格的に長時間乗ったらばボロが出ることも十分に考えられるし、スポーツカーの癖にリセールが驚くほど悪いとの話も聞く。 マツダロードスターについては、近い将来に本格的な試乗をしたいと思っている。と、3年前から言っているので何時になったら実現するのかは約束できないが、今回の結果が思いの他良かったことから、ちょっとその気になっている。そして、できればソフトトップのベースモデルに興味がある。 何故なら、より軽量だし、クローズド時もハードトップよりも軽いソフトトップにより重心が下がるだろうから、軽快感ではより勝るのではないかとも 予想できるし、更に価格的にも買い易いこともある。ライトウェイトスポーツは小型・軽量で低価格が何よりだから 、5MTのベースモデル2.0S(233万円)が最も相応しいと思う。

定年後に夫婦2人が移動する足として、現役時代とは違う何かを求めてクルマを買い換える場合に、マツダロードスターは大いに薦められる。勿論ボクスターやZ4、それともSLKなどなら満足度は更に上がるだろうが、価格的にそこまで出せない、いや出さない、出したくないなど人それぞれの考え方もあるだろう。そういう意味ではやはりマツダロードスターはベストチョイスのような 気がする。勿論コペンが良いというのも有りでしょうけど。

あっ、社長のようなセレブな方はボクスターなんて廉価版ではプライドが許さないでしょうから、当然911カブリオレでしょうね。それもターボなら2,171万円ですから、オプション込みでは2,200万円は軽く超えるでしょう。えっ、それじゃあ一番安いフェラーリ(F430 MT)の2329万円に負けるじゃないか!・・・・ですか?
恐れ入りました。

注記:この試乗記は2009年7月現在の内容です。