CROWN 2.5ATHLETE vs FUGA 250GT (2008/4/29) 前編


日本を代表する高級サルーンであるクラウンとフーガ。1台毎に見ると全く共通点を感じないが、こうして並べて見ると、何やら共通した物を感じるのは気のせいだろうか。
 

国産の高級サルーンといって、すぐさま脳裏に浮かぶクルマといったら、さて。センチュリーやプレジデントは高級車には違いないが、これらはオーナードライバーが買うことはないし、実際の用途といえば大企業のトップや政治家(それも大臣や与党の幹部クラス)など、日本を動かしているトップ層がショーファードリブンで後席に乗るためのクルマだから、先ずは除外 しよう。 次に、レクサスLS(チョット前ならセルシオ)やシーマも大多数がショーファードリブンだし、何よりバブル期に出てきた新しいクラスだから、伝統という面ではイマイチ。そこで、戦後の混乱期からやっと立ち直った1950年代後半から1960年代に かけて初代が発売されたという伝統を持つブランドといえばクラウンとセドリック(&グロリア)となる。ただし、セドリック/グロリアは現行モデルからはフーガと名前と変えてしまったので、今回の国産フォーマルカー対決はクラウンvsフーガとなる。タイミング的にもクラウンは今年の2月にFMCされ、フーガも昨年の12月にMCを実行したばかりで、時期的にも良いということから、今回の企画となった。
これらのモデルにもバリエーションがあるのは当然だが、今回はベーシックな2.5Lモデルで、しかもクラウンはメジャーなロイヤルに対して幾分スポーティーに振ったアスリートを選択し てみた。フーガについては、MCを機にコンフォートモデルのXVが廃止されて、スポーティーモデルのGTのみとなった。したがって、今回の対決はクラウン2.5アスリート(ナビパッケージ、432万円)とフーガ250GT(ナビ標準装備、396万円)を比較してみる。元来、クラウンとフーガは殆ど同価格だった筈なのに、今では36万円もの差がついている?と思って調べてみたら2.5アスリートでもナビがないベースモデル(374万円) もあった。クラウンの場合はナビパッケージの有る無しで随分と価格差があると思ったらナビパッケージはナビ以外にもオーディオのレベルも違うし、アクティブステアリング統合制御も追加されるなど、単にナビを付けただけではないようで、割安にあげたいのならベースグレードに ディーラーオプションでナビを後付けすればよいだろう。

では、早速比較をしてみよう。夫々別にみると、クラウンとフーガは全く違うように感じるが、トップの写真を見てみれば、何となく雰囲気が似ていたりする。どちらも立派なラジエターグリルを持っているという面では 高級サルーンの本家メルセデス風でもあるし、釣り眼のヘッドライトという面ではBMW風だったりする。街で見かけるフーガは、背高ノッポに見えるがデーター上でもクラウンより40mm全高が高い。 印象としてはオーソドックスでキープコンセプトなクラウンと先進的なフーガというところだが、先代と見分けが付かない程に変化が少ないクラウンも、よくよく見てみれば、控えめではあるがメルセデスSのようなフェンダーのタイヤ ハウスに沿った張り出しだとか、微妙に変わったテールランプデザインなどが現代の流行を追っていたりもする。クラウンは国内専用車(一部はアジア圏でも売られるが)であるのに対して、フーガは何を隠そう、 北米でレクサスのライバルであるインフィニティの売れ筋モデルであるMだから、日本人に受けるデザインを、なんていう気は更々無く、良く言えば国際感覚のクルマでもある。ただし、米国ではM35(V6、3.5L)とM45(V8、4.5L)のみで、今回取り上げる2.5はインフィニティには設定が無い。

このクラスのクルマは”ゴルフ特急便”として使われることも多いから、ゴルフバッグ4個の積載能力は必須なのだそうだ。成る程、取引先の大企業の下っ端をクラウンやフーガの後席の乗せてのゴルフ接待は、日頃は役員が乗っているのと同じクルマの後席に乗れるのだから、招待される側としては 悪い気はしない。 これで、今後の取引で便宜を図ってくれる事間違いなしだから、めでたし目出度し。という訳で、両車のトランクスペースを比べれば、どちらも意外に幅はないが、奥行きは十分だから、当然ゴルフバック4個はクリアするだろう。そういえば、レクサスディーラーには本物のゴルフバックが4つ置いてあって、何に使うのかを尋ねたら、実際にトランクに入れて見せるのだとか。
 

CROWN 2.5ATHLETE


写真1-1
 

  FUGA 250GT


写真1-2
 


写真2-1

 


真2-2

 

両車の比較をする前に、輸入車を含めたEセグメントについて考えてみよう。
先ずはメルセデスEクラス。今でこそ、国産車に比べてどうしたこうした、という話が出るが、20年前だったら比較なんて恐れ多くて、という程の差があったものだ。今ではチョッと落ち目ではあるが、それでもEセグメントの世界王者には変わらない。そしてBMW5シリーズ。メルセデスのライバルということになっているが、本当にそう認識されるようになったのは極最近のこと。 1代前のE39は実売価格でもステータスでも、Eクラスより格下というのは世間一般の常識だった。それが現行E60の出来の良さと、現行メルセスデスEクラス(W211)の致命的なブレーキ不具合(MCでシステム自体を変更した)で、気が付いたら100年以上もかけて作り上げたメルセデスの不滅の地位を、追い上げられるまでになっていた。
 
    CROWN FUGA Mercedes Benz BMW
2.5ATHLETE 250GT E250 525i
寸法重量乗車定員
全長(m)   4.870 4.930 4.850 4.855
全幅(m)   1.795 1.805 1.820 1.845
全高(m) 1.470 1.510 1.485 1.470
ホイールベース(m)   2.850 2.900 2.855 2.890
最小回転半径(m) 5.2 5.6 5.3 5.7
車両重量(kg)   1,600 1,670 1,660 1,620
乗車定員(   5 5 5 5
エンジン・トランスミッション
エンジン種類   V6 DOHC V6 DOHC V6 DOHC 直6 DOHC
総排気量(cm3)   2,499 2,495 2,496 2,496
最高出力(ps/rpm)   215/6,400 223/6,800 204/6,100 218/6,500
最大トルク(kg・m/rpm) 26.5/3,800 26.8/4,800 25.0/5,500 25.5/4,250
トランスミッション   6AT 5AT 7AT 6AT
駆動方式 FR FR FR FR
サスペンション・タイヤ
サスペンション方式 ダブルウィシュボーン ダブルウィシュボーン 4リンク ストラット
  マルチリンク マルチリンク マルチリンク インテグラルアーム
タイヤ寸法 225/45R18 245/45R18 205/60R16 225/50R17
  225/45R18 245/45R18 205/60R16 225/50R17
価格    
  車両価格   3,740,000  3,960,000 6,400,000  6,370,000
備考   ナビはオプション      

細かい比較は読者各位に任せるとして、寸法的には輸入車組が少し幅広だが、今や大きくは変わらない。重量はほぼ横並びだし、エンジンパワー、トルクも数値上では似たようなものだ。昔のクラウン、セド・グロといえば、狭いトレッドとショボいタイヤというのが定番だったが、今ではホイールは国産2車の方が大きい(18インチ) くらいだ。これは以前なら考えれなかった事だが、そういう点では国産車も進化したものだ。
ただし価格としては相変わらず大きな開きがあるから、実際にクラウンやフーガの2.5LとE250や525iを比較検討して購入することは無いだろう。

そこで、今回は心置きなく国産2車同士のみを比較し、欧州車のことは極力考えないことにする。ところで今回、なぜクラウンにアスリートを選んだかといえば、このサイトの読者の傾向を考えて、多少でも欧州車的であろうアスリートとした訳だ。

それでは例によってワンパターンの始まり、運転席のドアを開けたところから。
どちらも国産高級車の代表だから、それなりの豪華さだが、昔から言われているように、チョット見の豪華さではクラウンの上手さが光る。ただし、クラウンはアスリートということで試乗車の内装色は標準のダークブラウン(注文生産でグレーも選べるが)で、誰もが想像するクラウン的なものとはちょっと違う。フーガもニッサンとしては頑張っているのだろうし、この辺は好みの問題でもあるが、一般にインテリアの仕上げが良いトヨタ車のなかでも極めつけのクラウンと比較するのは、 フーガにとっては少し辛いものもある。
シートの形状は両車とも座面と背もたれのサイドは多少張り出しのあるスポーティな形状になっている。しかも、その形状も似ている(写真3)。シート表皮はクラウンが欧州車のように荒い織目のファブリックで、サイドが無地で座面と背面には同色でも織り方で模様を創っているような、メルセデスでもお馴染みのタイプを使用している(写真 5−1)。フーガのシートはサイドがニッサン得意の、決して質感の良くない人工レザーで、座面と背面は凹凸に織った布なのだが、これが何やら評判最悪だった先代レガシィの表皮に似ているのも気になる(写真5−2)。見かけだけでなく実際の座り心地もクラウンの方に分があるようだ。トヨタは以前から車種によって(マークU IR-Vなど)は欧州車的なシート表皮を使用していたが、このクラウンもアスリートということで、 毛足のある安物モケットなどの典型的な国産高級車的なシートは採用しなかったのだろう。
ドアの内張りというのも日頃、目に入る機会が多い部分だから、その質感は結構気になる。写真では判り辛い面もあるが、こういうものは個人のセンスと感性で好みも分かれるので、特にコメントはしない。ただし、個人的にはアスリートの方が高級感があるように感じる(写真6)。

リアスペースについては、当然ながらどちらも十分なスペースがある(写真4)。2.5Lとはいえ、大企業等では役員車としてショーファードリブンでの使用も当然考えられてるし、中小企業の社長車の場合は、前出のように取引先の担当者を乗せての接待にも使うから、この程度のスペースと居住性は絶対に必要となる。だから、社長さんにとっては、価格はクラウンやフーガの2.5と同等でも、例えばBMW320iなどを買うのはもっての外 というわけだ。
 

CROWN 2.5ATHLETE


写真3-1
※1

 

FUGA 250GT


写真3-2
 

 


写真4-1
※1:写真はレザーシート仕様

 


写真4-2

 


写真5-1
荒めに織ったファブリックのサイドと織り方で模様を就けた座面という欧州車的なクラウンアスリートのシート表皮。

 


写真5-2
サイドの合成皮革は安っぽいし、座面も滑り易く座り心地もイマイチのフーガーのシート表皮。

 


写真6-1
良く見れば大した素材は使っていないのだが、見た目のバランスの良いアスリートのドアパネル。

 


写真6-2
頑張って、手をかけている割には、高級感の足りないフ^がのドアパネル。

 


写真7-1
木製(風)やアルミなどが多いダッシュボード下端のトリムに、クラウンはソフトパッドを使い、ステッチ(糸の縫い目)も見える。

 


写真7-2
黒い漆塗り風に仕上げたピアノ調のトリム。写真中央部に見える、4つの白くて四角いものは単なるアクセントで、無いほうが良いような気がする。

 

ダッシュボードの眺めはといえば、この2車は大いに違う雰囲気を持っている。先ずナビのディスプレイの位置が、クラウンはダッシュボード上面より少し下で、上にエアコンの噴出し口がある(写真 8-1)。対してフーガはダッシュボード上面一杯にディスプレイを配置している(写真8-2)。運転中の視認性では当然フーガの方が良いが、ディスプレイ自体の大きさはクラウンの方が大きい。この配置やディスプレイの寸法などは強いて言えば、クラウンがメルセデス風で、フーガはBMW的といえる。フーガは更にディスプレイの下にダイヤルやらスイッチを所狭しと配置した水平(多少の角度はあるが)なパネルが配置されていて、ある面では斬新なデザインと配置ではある。これに対してクラウンはオーソドックスでボタン類が少ない。
どちらもスポーティーグレードということもあり、内装が黒っぽいのと共に、ウッドパネルもクラウンはグレーポプラ風、フーガはピアノ調と呼ばれる黒い漆塗り のようなパネルが付いている。なお、フーガの場合はオーソドックスなブラウンの木目(本物)も選択できるし、内装自体もアイボリー系の設定がある。フーガは今回のMCから全てのグレードでGTのみとなり、コンフォート系のXVが無くなってしまった為に、内装は黒を基調としたスポーツ系とアイボリーを基調としたXVに代わるものを用意している。 クラウンの”木目風”パネルは確かに本物も真っ青のできだが、もうそろそろ本木目を使用しても良いのではないか。もしかして、トヨタの調達先には安くて高品質のウッドパネル屋がいないのだろうか?
 

CROWN 2.5ATHLETE


写真8-1
 

FUGA 250GT


写真8-2
 


写真9-1

 


写真9-2
 

 
以下は後編へと続く。  

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