BMW G05 X5 xDrive 35d 試乗記特別編
  [X5 xDrive 35d vs Porsche Cayenne S 後編 その1]




特別編へようこそ。
前編でも御注意申し上げたように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

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それではいよいよ車内に乗り込む事にする。両車共に巨体であり、ゴッついドアグリップを引いてドアを開ける時もドア自体の重さを感じるくらいだ。まあ車重が2トン超だから、ドアの軽量化何てする必要も無いだろう。

全高は X5 が 74o 高いが、乗り込む時には特のその差は感じない。勿論両車共にサルーンに比べて明らかにシート座面は高いが、さりとて以前のオフロード車のようにトラックのようによじ登るような高さでは無い。といっても、これは最近の SUV 全てに言える事で、特にこの2車が如何と言う事は無い。

シートに座ってポジションを整えると、流石に全幅 2mクラスという車幅はデカイが、SUV の為にサルーンに比べて高い視線からの視界は良く、車幅のハンディーを補っている。これが大型トラックともなれば、本気でよじ登らないと車内に乗れないくらいの高さだが、だからこそ全幅 2.5m 、全長 12m なんていう巨体を運転出来る訳だ。尤も一般人とはかけ離れた運転技術も必要だが。と言う事は同じく巨体にも関わらず運転席が低い大型観光バスは、といえば、これはもう尋常じゃ無い運転技術を必要とする。そう言えば中型バスから転職したドライバーが下り坂でコントロールを失ったという大事故があったのを思い出した。

本題に戻って、シートは何れもたっぷりとしたサイズなのは車幅から考えても当然だし、価格を考えれば表皮、座り心地共に質が高くて当たり前と言えば当たり前だ。エンジンは X5 では BMW に共通のセンタークラスター右隣りの押しボタンスイッチ、カイエンはこれまたポルシェお馴染みの金属キーを連想させるダッシュボード右端のレバーを右に捻る事で始動される。

X5 はディーゼルエンジンという事もありアイドリングでは不利になるかと思いきや、何とその静かな事に驚かされる。対するカイエンは V6 ガソリンエンジンであり、ディーゼルの X5 より条件が良い筈だが、X5 のディーゼルが余りにも静かで振動も無いので、この点では寧ろ負けているくらいだ。

ATのセレクターはどちらもフロアーコンソール上の同じような位置にあり、X5 は BMW の定番である電子式で、対するカイエンは現行モデルからは BMW と同様の電子式となり、レバーの形状こそ多少異なるが事実上同じような操作で共通点は多い。

セレクターをDに入れて、さてパーングブレーキはというと、セレクター手前の電気スイッチを押す事で解除されるのも両車に共通だ。

そこでゆっくりとアクセルと踏んで発進するのだが、そのペダルはポルシェではお馴染みのスポーツペダルだが BMW はMモデルでさえ長年ショボいウレタンパッドを使っていた。しかし最近は M スポーツなどではポルシェ並みのペダルとなり、この X5 でも同様のタイプが装着されている。

最近のポルシェはスポーツカー ( 911、ボクスター/ケイマン) の場合では DCT タイプの PDK と呼ばれる変速機を使用しているが、SUV に関してはトルクコンバーター方式のオーソドックスなタイプを使用している。そして X5 もトルコン方式であり、どちらも 8速という多段ミッションを使用だから発進は両車共極スムースで微速での速度調整も容易だ。

走り出した第1印象は X5 の場合、ディーゼルエンジンの低域トルクの太さをハッキリと感じる。何しろ 2,000rpm から 2,500rpm で 620N-mをという大トルクを発生するから、少し踏み込むとこの領域に入り、絶大なトルク感が得られる。ではカイエンSはといえば、ガソリンエンジンという事から絶対的なトルクは 560N-m と X5 より10%程低いが、その回転数は1,800〜5,500rpmと極めて広い。

これにより当然ながらフル加速で引っ張った時の伸びはカイエンSでは圧倒的だが、X5 では良いところで頭打ちとなりシフトアップが起こってしまう。とは言え、一般道でそんな加速をしても、直ぐに前車に追いついてしまうから、本当に差が出るのは高速道路で強烈な加速を楽しみたい、何ていう時しか無いし、それすらあっという間にヤバい速度になりそうだ。

しかしトルクや回転数が云々といっても、実際にはトランスミッションやデフでの減速比によって話は変わって来る訳で、そらならとここで両車のギア比を比較してみる。

まず気が付くのはディーゼルの X5 35d とガソリンのカイエンSが、同一ギア位置で同一回転数の場合、何と殆ど同じ速度が出る事で、要するにトータルでのギア比が殆ど同じ事だった。と言う事は、2,500rpm までは X5 の方が10%程トルクが大きいから、数値上では多少トクル感がある事になる。まあ実際には明らかな差は感じないのだが。

しかしそれ以上に驚いた事は、カイエンSと先代 X5 50i の AT のギア比が全く同じである事だ。と言う事は、若しかして同じメーカーの同じモノ、まあケーシングは違うかも知れないが、要するに共通部品が使われている可能性が大きい。

考えて見れば、これ程に大トルクを扱えてしかも8速ATを作れるのは世界的に見てもドイツの ZF と日本のアイシンくらいなものであり (メルセデスは自社製) 、カイエンが BMW と共通の ZF 製 AT を採用している事は充分に考えられる。という事は、新型 X5 に 50i が設定されれば、カイエンSと殆ど同じ特性になるかもしれない。

次に走行モードについて触れておこう。最近の中級以上のクルマには走行モード切り替えスイッチが付いている。今回の両車も X5 は最新の BMW に共通のコンソール上 AT セレクター右のスイッチを使用する。カイエンではこれまた最近のポルシェに共通のステアリングコラム右下位置にある回転式スイッチを使用する。そしてスポーツモードでは、というと確かによりシフトアップ回転数も上がるしアクセルレスポンスも向上するが、元々一般道では充分過ぎるトルクとレスポンスの両車であり、敢えてスポーツモードを選ぶ場面は無さそうだ。

あっ、高速道路の煽り運転で逮捕されたガラケイカップルが借りて返さなかった X5 の試乗車も、これと同タイプだったから、煽り運転には最適かもしれない。しかしあのニュースを見た時に新型の X5 であんな運転するヤツがいる何て不思議だったが、試乗車の無断延長だったら有り得る訳だ。

大分長くなったので以下その2につづく。

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