BMW G05 X5 xDrive 35d 試乗記特別編
  [X5 xDrive 35d vs Porsche Cayenne S 後編 その2]




特別編へようこそ。
前編でも御注意申し上げたように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

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ここでエンジンルームの中を覗いてみよう。

X5 は直6 3.0L エンジンの縦置きという事で、幅は多少狭いが長さは結構ある。そして BMW らしくエンジンの中心はサスタワーの中心に近く、他社のようにフロントにオーバーハングするようか事は無く、前後の荷重配分を十分に考慮しているのは言うまでも無い。ではカイエンはといえば、こちらは同じ 3.0L とはいえV6 であり、エンジンの幅は可也広い。搭載位置も BMW に負けずに後方に寄って配置されている。

両車とも最近のクルマらしくカバーが掛っていて細かい構造が見えないが、取り分けカイエンは補記類も含めて殆どカバーの下となっている。また X5 にはサスタワーとボディを結ぶタワーバーが菱形に繋がっていて剛性確保を行っているが、カイエンの場合はそれが無いとはいえ、別の方法で剛性確保をしているであろうから、まあこの辺はメーカーの設計方針の違いと言う事になる。何てったってポルシェと言えば、少し前までは金庫の中で運転しているようだ、と例えられるくらいに鬼のような剛性を持つのが 911 の特徴だったくらいで、最近はあれほどでもないのがオールドファンにとってはチョイと惜しまれる。

次にドライバーが運転中に最も目にする室内機器であるメーターについて比較する。X5 のメーターは全面が1枚のカラー液晶パネルで、そのハードは3シリーズ(G20) 、Z4 (G29) など最新の BMW 車に共通のものとなっている。そしてカイエンはといえば、ジャーン、と言いたくなるような見事なアナログ式5連メーターで、これは 911 を始めとするポルシェの上級モデルのアイデンティティであり、好みもあるが個人期にはポルシェの5連メーターというのは実に魅力があると思っている。しかーし、何と最新の 911 (992) では液晶化と共にこのような迫力が無くなってしまったのは実に残念だ。

動力性能に続いて旋回性能についてだが、正直言ってこの巨体を振り回しハンドリングをテストできるような場所は見当たらないし、自分自身もそんなに若くは無い。という事で一般道のコーナーで少し頑張ってみる程度しか出来ないが、その程度では両車共全く破綻を見せずに多少のアンダーステアと共に回って行く。勿論 BMW のサルーンやポルシェのスポーツカーに比べればアンダーは強いし、高い重心による安定性だって差は出るが、世間一般のその辺を走っているクルマからすれば遥かにレベルは高い。

そう言えばガラケイの煽り男が高速道路で急ハンドルで威嚇するのを、テレビで解説をしていた交通事故の専門家とやらが、あれだけの速度であんな急ハンドルを切れるのは相当なテクニックの持ち主だ、とか言っていたが、おいおい、X5 ならあの程度は誰でも出来るだろう。あんたマトモなクルマに乗った事無いのか?な〜んて言いたくなる。

ところで乗り心地についてだが、両車とも車重が2トンもある重量級だからその重厚感は充分に感じられ、基本的には欧州車独特の硬さはあるが、勿論不快感は全く無いし何よりシートの質も高いから快適感は充分だ。まあ一千万円超のクルマで不快だったら怒るよ、という気もするが。

なおタイヤは X5 がM Sport という事もありフロント275/45R20 、リア305/40R20 でカイエンSはフロント255/55ZR 19XL 、リア275/50ZR 19XL というサイズだから、BMW はスポーツタイヤまっしぐらだが、カイエンは多少のオフロードも視野に入れているという具合にポリシーが大分違うようだ。

またブレーキについてはこの巨体に対して十分なストッピングパワーを与えるべく、両車共大容量のモノを装着している。BMW は長年に渡ってブレーキがショボいという指摘があったが、ここ最近では改善されて X5 では M Sport という事もあるがMロゴのついたブルーのキャリパーでフロントにはアルミ対向6ピストンの立派なヤツが付いている。しかしリアは塗装とロゴはあっても、実はショボい片押しキャリパーだったりするが、まあ少なくともフロントは立派に改善されている。

対するカイエンはポルシェのブレーキは宇宙一と言われたくらいで、まあそれは911だが、カイエンだって前後にアルミ対向ピストンキャリパーを使用し、フロント6ピストン、リアは4ピストンと言う文句無しの立派なものが付いている。

まあ見掛けは兎も角、両車ともに適度な踏力でよく効くから実用上の問題は全く無い。ただしカイエンが宇宙一という程ではないのは、先ず重心が高いから制動時の荷重移動が大きい事と、フロントエンジンだからポルシェと言えどリアエンジンの911とは大いに条件が違うのは致し方無い。

今回は X5 35d (M Sport 1,030万円) とカイエンS (1,355万円) という事で価格的にも比較に無理があったが、考えようによってはディーゼルにより一般道ならばカイエンSと同等以上の太いトルクを堪能できるという点では結構な買い得感を感じる。しかし価格を考慮すれば本当はカイエンのスタンダードモデル(1,030万円) で比べるべきだったのだが、実は一般的にポルシェの SUV 、すなわちカイエンとマカンの場合はスタンダードモデルはどうしても VW の面影を残しているという面で、BMW の同価格帯モデルにボロ負けだった。今回の新型カイエンは試乗していないので判らないが、それなら何故試乗し無かったか、といえばポルシェディーラーもその辺は承知していて、スタンダードモデルの試乗車が無かったり、あってもあまり試乗させたがらないとか‥‥の傾向がある。

これが 911 やボクスター/ケイマンでは、スタンダードでも充分その良さを感じられるのだが、VWが絡んだ SUV はこの辺が結構ヤバい。そういえば、数年前の話ではボクスター/ケイマンがVWとの共同開発になる、何て言う噂もあったが、結局従来通り 911 と共通点の多いものになるようだ。

やっぱりポルシェはポルシェで、いくら資本系列が同じだからと言っても、VWやアウディイとの共通化何てユーザーからすれば迷惑もいいところだ。

とはいえ最近のポルシェは昔のポルシェとは違い特別なクルマ感が無くなっていて、古くからのオーナーには物足りない部分も多いだろう。まあこれも時代の変化かもしれないし、近い将来自動車は電気駆動+自動運転の方向に進んで行くのだろう。下手をすればスポーツカー何て今で言えば乗馬みたいな存在になるかもしれない。尤も自分はそんな時代まで生きる事も無いので、如何でも良いが。