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BMW F40 118i (2019/11) 前編 その1

  

BMW 1 シリーズは BMW 初のCセグメント車として 2004年に初代 E87 が発売され、最初に直4 2.0Lの 120i が、翌年にはデチューンした 2.0L を搭載する 118i と直4 1.6L の 116i が追加発売され、同年末には直6 3.0L を搭載する 130i が追加された。

中でも5シリーズでさえ十分な性能を得られる直6 3.0L エンジンをCセグメントハッチバックに搭載した 130i は、BMW が放ったホットハッチとしてマニアから大いに注目された。
⇒ BMW 130i 試乗記 (2005年12月)

しかし E87 の最大の欠点は見掛けがチャチい事で、フロントにはキドニーグリルが付いているとはいえ VW ゴルフと良い勝負の小型ハッチバックではプレミアム感は皆無であり、世間ではプアーマンズ BMW と馬鹿にされていた (写真1) 。勿論こういう事を言うのは BMW とは縁遠い階層であり、まあN大を馬鹿にするのは高卒か専門卒というのと同じ事だ。

2代目1シリーズは2011年に発売された F20 で、エクステリアは同じくハッチバックとはいえ初代に比べれば安っぽいスタイルは大分改善された (写真2) 。1シリーズはCセグハッチとしては例外的に駆動方式に RWD 方式を採用していたから、コーナーリング性能では他社を圧倒していたが、取り分けこの F20 の旋回性は抜群だった。これは発売直後に試乗した時の事を今でもハッキリ覚えている。
⇒ BMW 120i Style & Sport 試乗記 (2011年10月)
⇒ BMW 116i Sport 試乗記 (2011年11月)

なお F20 は 2015年にフェイスリフトが行われ後期型となり、この時フロントが大きく変更された。このモデルが昨年まで販売されていたもので、今回 F40 と各部を比較するものだ。


写真1
初代 1 Series(E87型 2004年-2011年)


写真2
2代目 1 Series 前期(F20型 2011年-2014年)

初代 F87 にはボディーのバリエーションとしてクーペ (E82) とカブリオレ (E88、写真3) がラインナップされていたが、まあ正直言って決してスマートとは言えなかった。そしてハッチバックが 2代目となった後もクーぺとカブリオレは旧モデルを継続生産している。それで 2代目ベースのクーぺ (F22) とカブリオレぺ (F23) はF20の後期モデル発売に合わせて2シリーズと呼ばれるようになった。という事はF20前期モデルベースのクーペ等は存在しない。F22 は E82 の寸詰まりのイマイチスタイルとは変わり、結構見られるようになり、F22 ベースのMモデルである M2 (写真4) も追加された。

なお F20 は 2015年にフェイスリフトが行われ後期型となり、この時フロントが大きく変更された。このモデルが昨年まで販売されていたもので、今回 F40 と各部を比較するものだ。


写真3
初代 1 Series カブリオレ(E82型 2007年-2014年)


写真4
2代目 1 Series ベースは2 Seriesとなった(F22型 2013年-)

しかしその後 2014年に 2シリーズにはこれらとは全く異なるグランツアラー (F45) とアクティブツアラー (F46) というセミトールワゴンとも言うべきモデルが追加されている。これらは BMW としては初の FWD 方式を採用したものだ。あれっ、F45 と F46 で今回の新型は F40 という事は、どう考えても2シリーズツアラーのベースは新型1シリーズであり、しかし事情により発売時期が逆になった、と考えれば納得がゆくし、新型なのにGでは無い理由も判明する。

 ⇒ BMW 218i Active Toure 試乗記 (2014年12月)
 ⇒ BMW 218i Gran Tourer 試乗記 (2015年6月)


写真5
2 Series Active Tourer(F45型 2014年-)


写真6
2 Series Gran Tourer(F46型 2014年-)

そして今回の新型1シリーズ(F40)は、サイズ的には F20 と比べて全幅が35o広くなったのが目立つが、それ以外では全高が25o高くたった程度で他は大きな違いは無い。因みに2シリーズアクディブツアラーと比べると殆ど同サイズであり、前述のように開発ナンバーからも兄弟関係である事が判る。そしてエンジンはといえば先代からの使いまわしだった。

なお現時点での F40 のエンジンラインナップは今回の 118i 以外には直4 2.0L ターボ 306ps のM135i のみであり、今後はバリエーションも増えていくだろう。

では今回の試乗車はと言えば 118i M Sport で、前述のように M135i と迷ったのだが、630万円也の M135i よりも M Sport でも 413万円也の ”庶民向” け 118i に決定した。本当はより庶民向けのベースモデル (334万円) に興味があったのだが、輸入車ではベースグレードが展示や試乗に使われることはまず無いのが実情だ。やはり少しでも豪華なモデルでその気にさせて、「大して違いませんよ」とか言ってベースモデルを売る‥‥という事は無いっ! いや多分ないだろう。う〜ん、偶にはあるかも。

そして前半ではいつものように先代モデルとの新旧比較となるが、この F20 118i M Sport 後期モデルの走りについては以下の試乗記を参照願いたい。
 ⇒ BMW 118i (F20) 試乗記 (2017年9月)

また新型のより詳細な写真は
 ⇒ 2019年11月27日 日記 「BMW New 1 Series (F40)」

このため本試乗記前編ではいつものように新旧の 118i M Sport の比較を行う。先ずはエクステリアから。

一見したところでは当然ながらキープコンセプトだが、明らかに高級感が増していて BMW 車と言っても恥ずかしく無いくらいの出来ではある。という事は、以前の1シリーズ、取り分け初代 (E87) などは差別化のために確信犯で安っぽくしたのではないか、何て疑いたくなるが、いえいえ、これは技術の進歩ですよ。

それで新型のグリルは最近の BMW のトレンドに従ってより大きく立派になり、写真の M135i では立桟が点線となり、その奥には黒い格子上の網が付いている、と言っても何だか判らないだろうから、この部分の拡大写真を張り付けておく。なお 118i では M Sport でも縦桟は従来通りで直線となっている (トップ写真参照) 。


写真7
例によってエクステリアは当然ながらのキープコンセプトとなっている。


写真8
この角度で見ても新型の方が高級感があるように思える。

新型の全幅は 1,800o で先代よりも 35o も広くなった。これは同じく新型の3シリーズ (G20) よりも 25o 狭いだけであり、先代3シリーズ (F30) と同じだから、車格の割には随分と幅広になった。それでも 1,800o というファミリーマンションの立体駐車場に入れられるギリギリの寸法にはなっている。と言っても 1,800o という全幅は40年前ならばメルセデスEクラスと同等であり、建売住宅に付属するカーポートは5ナンバーサイズの全幅1,700o以下を想定していて、これはバブル時代まで踏襲されたいた筈で、これらの住宅に親1シリーズを入れれば、ドアの隙間からやっと降りる羽目になるだろう。

リアの大きな違いはリアコンビネーションランプがより低くより長くなった。更に全幅・全高とも大きくなったことでより立派に見える。


写真9
全幅は先代よりも35o広くなった。


写真10
違いはリアコンビネーションランプがより低くより長くなった事だ。

サイドビューでは新型 F40 が全長4,335o ホイールベース 2,670o、F20 は全長4,340o ホイールベース 2,690o と全長はほぼ同じでホイールベースは新型が −20o と僅かに短くなったが、これも事実上同じ。しかし今回最大の変更点である駆動方式の変更、すなわち BMW の証である RWD から並のクルマと同じ FWD となっている事を考えると当然ながら縦置きエンジン、しかもトップモデルではこれまた BMW にのみ存在する直列6気筒エンジンを搭載するために、身分不相応に長いボンネットを持つのが特徴だった。しかし新型はスペース的に有利なエンジン横置き FWD だから当然ながらボンネットは短い。という事は全長が変わらないがキャビンのスペースは当然長くなっている筈だ。なお全高も数値上では新型が 20o 高いが、写真で見た限りでは特に目だつものではない。

リアゲートを開けての比較ではボンネットが短くなった分だけ室内が長くなった新型が当然ながら広いラゲージエリアを持っている‥‥筈だが、そうでも無い (写真12) 。

写真11
全長4,335 X 全高1,465o ホイールベースは2,670o で、全長は-25o、ホイールベースは-20oと何れも短くなった 。

 



写真12
ボンネットが短くなった分だけ室内が長くなった筈だが見た目ではそれ程でもない。

この続きはその2にて‥‥。

⇒その2へ