BMW X1 sDrive18i M Sport (2013/11) 前編

  

BMWの廉価モデルといえば言うまでもなく1シリーズだが、あのハッチバックは「ビーエムっぽくねぇ。」なんてアクア乗りのオッサンに言われたり、「やだぁ、カッコ悪る〜」なんてワゴンR乗りの姐ちゃんに言われたりすると、1シリーズの良さは下流階級には判るメェ、なんて思っていた信念がぐらついたりする。とはいえ、現行3シリーズはベースモデルの320iでさえ459万円という価格で、116i(308万円〜)よりも約150万円も高い。そこで思い浮かぶのがX1であり、これならベースモデルであるsDrive18i が367万円だから320iとの差額は約90万円となる。しかし、18iのエンジンは旧世代のNAであり、それなら現行320iと同じ2LターボモデルであるsDrive 20iはといえば、これは404万円よりとなり、それならば55万円追加すれば320iが買える、何てことになってしまい、そこはドイツ人独特の理詰めで結果的には商売の上手さに継るところだ。

そういう訳で、既に3年前に試乗していて、当時は結構高評価となった1.8iをもう一度引っ張り出して、今現在の基準で評価してみることにした。3年前といえば、1シリーズは今よりもカッコ悪いE87時代であり、性能だって現行1シリーズ(F20)の1.6Lターボに比べれば、NAの1.6Lだった116iでは結構な我慢が必要だったが、今ではターボの過給圧制御が違うだけでフルスロットルを踏まない限りは120iと同じ性能になった116iなど、動力性能でも格段の進歩があるし、320iは同じ2Lでもターボで過給されるようになったなど、事情は大きく変わっている。その辺のところは下記の一覧表で理解できるだろう。

今更言うまでも無いとは思うが、X1は車名から想像する1シリーズのバリエーションではなくて、旧3シリーズベースであり、それを証明するかのようにホイールベースは旧3シリーズと同一 で、トレッドも事実上等しい寸法となっている。全高については3シリーズツーリングよりも概ね100o程高いのはX1という車名から判るようにSUV系のためだが、それでもX3(全高1,675o)やX5(全高1,760o)程ではない。

sDrive 18iのエンジンは言ってみれば旧型320iの転用だが、それも最終モデルの170ps版ではなく、その前の150ps版となっている。当時を思い出す と、E90の最終モデルで150ps→170psとなったことで数値以上に体感上の動力性能が上がって、今までのイマイチパワー感が殆ど感じられなくなたのだった。そうはいっても、旧320iツーリングよりも110万円も安いX1 1.8iは、買い得には違いないし、現行320iと同じエンジンのX1 2.0iでも320iツーリングよりも75万円程安い事になる。

今回の試乗車はsDrive 18i M Sportでベースモデルの367万円よりも44万円も高い411万円で、これは現行の320iのベースモデルが459万円ということを考えれば、Mスポの装備をしても未だ約40万円も安い訳で、価格的メリットはやはり大きい。ということで、以下は主としてsDrive 18i M Sportと3シリーズツーリング(主として320d Modern、520万円!)の比較を行う。

先ずは両車を斜め前から見てみると、何となく3シリーズツーリングの方がスマートにも感じるが、決定的なのはサイドビュー(写真5)で、3シリーズツーリングよりもホイールべースが50o短く、更に全長は150o短いのはリアオーバーハングが短いということで、何となく寸詰まり感があり、逆に言えば3シリーズツーリングが低くて長く、中々スマートだと感じてしまう。尤もX1は一見ステーションワゴン(以下SW)風だが実はSUVな訳で、そう思えばSUVとしては背も低いし全長だって長い方だ、と考えればx1も悪くない‥‥かな?

ところで、前述のように旧3シリーズ(E91)をベースとしていることでホイールベースもE91と同じであり、それならと両車のサイドビューを較べてみると、全長で50o長いだけのE91だがX1よりもスマートで如何にもSWというスタイルに見えるのは何故だろうか。元々、3シリーズツーリングというのはSWとしてはリアオーバーハングが短くて、例えば高級欧州ワゴンの代名詞であるメルセデスEクラスワゴンと比べれば、3シリーズツーリングは「こんなのはワゴンじゃない!」なんて言われていたのだが、それでもこうしてみると、特に現行モデルに至ってはホイールベースも長くなったり、もう昔のように小さなボディを無理やりSWにしたセコいDセグワゴンでは無い、と言い切ってもよさそうだ。

ワゴンボディの利点といえばセダンよりも荷物を積めるということであり、それでは両車のリアラッゲージスペースはといえば、全長で150oも長い3シリーズの圧勝‥‥かと思いきや、それ程違わない(写真6)。これは3シリーズがX1よりも後席のレッグルームを広くとっていることが原因のようだ。


写真1
どちらも如何にもBMWというエクスタリアだが、こうして比べると結構雰囲気が違う。


写真2
フロントもお馴染みのグリルを中心としてBMWらしいデザインだが、SUVであるX1の高さが目につく。


写真3
リアを比べると、ゲートの形状やテールランプ等共通点はフロント以上に多い。


写真4
この位置から見るとX1のリアクォーターウィンドウの小ささいことが判る。

写真5
側面から比べると現行3シリーズツーリングよりもホイールべースが50o短く、更に全長は150o短いのはリアオーバーハングが短いということが判リ易い。

旧3シリーズツーリングとX1はホイールベースが同一ではあるが、X1は全長が50o短く、その殆どがやはりリアオーバーハングの差となっている。


写真6
リアラゲージスペースは全長の長い3シリーズが当然ながら広いが、150oも違うようには思えない。

さて、ドアを開けて見える車内の様子は、試乗車の場合はM Sportのためにシート表皮のサイドにアルカンターラを使っているために、これが車内全体に独特の高級感をもたらしている(写真7-1)が、これがベースモデルだと極普通の欧州車的ファブリックとなり、それでも十分にBMW的な雰囲気は味わえるから、欧州車的なモノを求めて国産車から乗り換えたユーザーには、やっぱりBMWだ!と満足感を与える訳で、取り分け国産丸出しの車種からの乗り換えならば、高い差額を払っても本当に良い物が買えた、という気分にさせてくれる。これについては前編の後半でもう少し詳細に述べてみる。

そうは言っても、細かい部分を比較すれば、3シリーズは全グレードで電動シートを標準装備しているが、X1はトップモデルの28i(499万円より)以外は手動だとか、ドアのインナートリムは3シリーズは作りも凝っているし材質も高級で、X1の場合ではドアグリップなどが安っぽいのなど、明らかな差が見つかる。コストダウンのために普段は目に触れにくいドアインナートリムの手を抜くという方法は国産車でも多用していて、ドライバーの動作を上手く利用して誤魔化しているわけだし、オーナーとしても特に気にしなけば走行中に目が行く所ではなく、逆に運転中にドアのアームレストに目が行くような運転は危険でもある訳だ。

写真7-1
試乗車の室内はM Sportのためにアルカンターラのシート表皮が高級感を醸し出している。

写真7-2
写真はデザインラインがモダーンのために結構お洒落な内装となっているが、ベースグレード同士なら一見したところではX1とそれ程違わない。 


写真8
X1の試乗車はM Sportだからサイドがアルカンターラでセンターのファブリックも結構凝った模様になっている。320dはデザインラインがモダーンのためにサイドがレザーで色や模様もお洒落になっている。ただし、ベースグレード同士を比べれば、そんなに変わらないし、320dのM Sportのシート表皮もX1と似たようなものとなる。


写真9
X1のシート調整は手動で、3シリーズの場合は全グレードで電動となる。なお、X1でも28iでは電動調整となる。


写真10
ドアのインナートリムは3シリーズの方が作りも凝っているし材質も高級で、X1の場合ではドアグリップなどが明らかに安っぽいのは車格の差ということだ。

X1のインパネは水平のトリムのセンスなど1世代前のBMWという感じなのは旧3シリーズベースの車だから仕方ないのだが、最近のBMWでは1シリーズでも標準装備で当たり前となったディスプレイや iDrive が付くのはX1の場合、ラインオプションのiDrive ナビゲーション・パッケージ(25万円)を装備した場合で、それ以外ではディスプレイのスペースにはフタ付きの小物入れが付いている。 そしてセンタークラスターのオーディオとエアコンパネルはX1では旧3シリーズと共通のエアコンと今時としては時代遅れの感もあるCD付きFMラジオとでもいう奴で、せめてコントロール位はディスプレイでやりたいものだが、この辺の古い設計がX1の低価格を支えている訳でもあり、それが嫌ならば3シリーズを買ったら、なんて言われている気すら感じる。

写真11-1
一世代前のセンスで纏めたインパネには1シリーズでも標準装備となっているiDrive用のディスプレイが無く、そのスペースはフタ付きの小物入れとなっている。

写真12-2
最新のBMWらしくダッシュパネル天井部より突き出すような高い位置に置かれたディスプレイや、センタークラスターの操作パネル類も極力高さを低く、取り付け位置は高く、と運転時の視認性を第一にしている。


写真13
X1のエアコンは旧3シリーズと共通で、オーディオはCD付ラジオが標準装備されているが、言ってみればひと時代前のシロモノだ。

インテリアについては、3シリーズと差がついてしまった感もあるX1だが、それでも今回はM Sportというベースモデルよりも44万円も高いモデルなわけで、それよりもベースモデルこそ意義があるという事も考えて、以下ではX1のベースモデルのみでインテリアを見てみよう。なお、写真はMC前のモデルのために今現在販売されているモデルとは多少違うかもしれないが、大筋では変化は無い筈だ。それぁや、まあ、安いとはいえX1 18iのベースモデルでも367万円だから、マツダCX-5のベースグレード( 20C:208万円)より159万円も高く、最上級モデルのCX-5 XD Lパッケージ(319万円)と比べても約50万円高い訳で、差があって当然だが。んっ? CX-5でも300万円以上するのもあるんだ! しっかし、誰が買うんかねぇ。

とまあ、話を戻して、ベースグレードだけ見れば、ちょっと前の3シリーズ風で、これはこれで国産車にはない、如何にもBMWとう雰囲気もあるから、ステアリングホイールの中央に置かれたBMWマークを見ながらの運転では、BMWオーナーになった喜びを感じられるだろう。

写真14
ちょっと前の3シリーズのような雰囲気だが、これだけ見ていれば悪くないし、結構BMWっぽさもある。


写真15
シート表皮もBMW(の低グレード車)らしい雰囲気で、国産車には無いものがある。


写真16
ドアのインナーパネルも質素だが、普段は目には入らないし、一見しただけではそんなに安っぽいこともない。

このように3シリーズと比べるなどということをせずにベースモデルのみで見てみれば、結構BMWしているし、これが367万円なら絶対に買いだ!と、思うか、はたまた、やっぱし安いだけのことはある、といって3シリーズを選ぶか、それともBMWなんか買うのは馬鹿だ、と言って国産車(例えばアクア!)を買うか、まあ、いつも言っているようにユーザーの考え次第であり、他人がとやかく言うことではない。とはいえ、クルマは走ってナンボだから、旧320iのエンジンを載せているX1 18iの走りのほうが気になってくる。

そして、その気になる走りについては後編にて。

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