BMW X1 sDrive18i M Sport (2013/11)後編
  

シートに座ると、確かに3シリーズ等のサルーンに比べれば視点は高い位置にあるが、X5やX3のように如何にもSUVという高さではなく、ちょっと高い程度だからサルーンユーザーにも違和感なく運転できるだろう。エンジンの始動はプッシュボタンを使用するが、電子キーはスタートボタンの下にあるスロットに挿入するという、これも一世代前のBMW方式となっているが、余計なスロットを付けるだけコストアップのような気もする。なお、3シリーズの場合は最近のBMWに共通のアイドリングストップの解除ボタンと一体となったものになっている(写真21)。

最近のBMWのATセレクターは1シリーズから7シリーズまで全て電子式となったが、このX1には以前のメカ式のセレクターが付いているため、レバー頭部にあるロック解除ボタンを押して、手前にガチャガチャと引いてDを選択する。最初に電子式セレクター装着車に乗った時には違和感を感じたが、いまやBMWでは当たり前になってしまうと、X1のメカ式が妙に古臭く感じる(写真22)。  

パーキングブレーキは当然ながらコンソール後方のレバー式で、これを解除してユックリと走りだす。何時ものように隣接する駐車場から片側2車線の国道の本線に入って1/2スロットルくらいでユックリと加速して、前方の信号待ちのクルマたちの後尾につけて停車する。ここから流れが動き出して、例によってこの流れ全体の加速は遅いから、こういう流れでは18iのパワーでも全く問題ないのは言うまでも無い。前が開けば直ぐにフルスロットルを踏みたくなるようなマニアというのは実は世の中の一部であり、今まで一度もフルスロットルを踏んだことがないとか、フルスロットルというのは危険行為だとすら思っているようなドライバーも結構いるらしい。まあ、その一端には60q/hの流れでも多少の危険を感じるような走行安定性のプアーな、ア○アやウイ*シュのようなクルマに乗っているのが原因かもしれないが、勿論本人は気づいていないし、今後も気づかないだろう。

写真21
X1のエンジンスタートはプッシュボタンによるが、その下に電子キーを挿入するスロットがあるという一世代前の設計となっている。

3シリーズは最近のBMWに共通のスタートスイッチとアイドリングストップの解除スイッチが一体となったタイプを使用している。


写真22
X1のATセレクターはメカタイプで、今では1シリーズから5シリーズまでに採用されている電子式に比べると、これまた一世代前の方式となっている。なお、ミッションも最近の7速ではなく、一つ前の6速を使用している。

最近のBMWではメーターの一部にカラー液晶ディプスプレイを使用していて、同じメーターでもソフトにより下部の補助メーターが違う動作をしたりするが、X1のメーターは当然ながら旧世代のタイプで全てがアナログメーターだ。とはいえ、特に問題はないし、メカ式は寧ろコスト高のようにも感じる(写真23)。

前車がいなくなったので、そのフルスロットルを踏んでみると、想像通りに大した勢いはないものの、エンジン自体は滑らかに6,000rpmくらいまで上昇してからシフトアップされて、回転計の針もストンと落ちたのだが、この一連の動作は最近のBMW車の中ではちょっと遅いような気もする。このパワー感とミッションのレスポンスは何処かで覚えがあると思ったらば、先代の320iなどと同じだった。実は前編で述べたようにsDrive 18iのミッションは旧型の6ATであり、N46B20Bという旧世代のエンジンとともにひと時代前の代物だから、イマイチパワー不足と言われたE90系の320iと同じフィーリングと性能なのは当然だ。そして、これこそがsDrive 20i(404万円から)に対して37万円安い(367万円から)理由だった訳だ。


写真23
X1のメーターも古いタイプで、最近は3シリーズのように液晶ディスプレイを使用したタイプになっている。

写真24-1
X1のN46B20B 直4 2.0L 自然吸気エンジンは150ps/ 6,400rpm 20.4kgf-m/3,600rpmを発生し、これは旧3シリーズ(E90)と同一エンジンだが、最終モデルの170psではなく、そのまた一つ前の150psを流用している。

写真24-2
現行320i はN20B20B 直4 2.0L ターボエンジンにより184ps/ 5,000rpm 27.5kgf-m/1,250-4,500rpmを発生する。なお、X1 20iではこのエンジンを使用している。

3年前にsDrive 18iに試乗した時には、サルーンよりも背の高いSUVであるX1にしては結構まともな操舵性で感心したものがったが、この3年間で事情は大きく変わり、1シリーズはF20に、そして3シリーズはF30となって両車とも操舵性も大いに向上している。そういう現実の中で、これらに比べて一世代古い設計のX1では軽量で身軽なsDrive 18iとはいえ、やはりイマイチの感は否定できない。すなわち、コーナーリング特性は弱アンダーで素性の良さは相変わらずだが、新世代の1 & 3シリーズのような切れが感じられない。試乗車はM Sportだったために乗り心地は硬めで、その硬さも特に不快感があるような事はないが、それでも、これまた最新モデルに比べればやはり突き上げ感を感じる場面もあったのは、これまた設計時点の古さだろうか。なお、今回の試乗車はM Sportのためにタイヤは標準の225/50R17に代えてFr:225/45R18 Rr:255/40R18という扁平なタイヤを履いているから、この面での乗り心地の悪化もあるが、最近のタイヤはこんなサイズでも決して乗り心地が粗いということも無いくらいに進化しているから、やっぱり原因としてはX1自体の足回りの設計の古さもありそうだ。

前回の試乗時にはブレーキがBMWの標準の軽すぎるカックン気味の特性が多少影を潜めていたと感じたのだが、その後のBMWは増々自然な効き味に変わって来ているために、逆に今回の試乗車のブレーキに結構軽すぎの傾向を感じてしまった。まあ、個体差もあるだろうが、これまた3年の月日、というか新世代の大いなる向上から取り残されてしまった感が大いにある。

試乗が終わってからホイールの中のブレーキを覗いてみれば、容量的には最新の3シリーズと変わらないのだろうが、見た目にはやはり一つ前の形をしている。だがしかし、実はX1のブレーキキャリパーにはブレーキパッドが丸見えにならないようにカバーが付いていたりと、最新のものよりもコストがかかっている。要するに最近のブレーキキャリパーは性能には関係ない部分はコストダウンを実施しているようで、皮肉にも旧タイプを流用しているX1の方がコストが掛かっているという事になる。


写真23
X1はM Sportのために、Fr:225/45R18 Rr:255/40R18という太いタイヤが付いている。
320dはModurnのために前後とも225/50R17を標準装着している。


写真23
X1はブレーキもひと時代前の3シリーズと同じだが、容量的には現行3シリーズと変ることもなさそうにみえる。
更には、現行3シリーズのキャリパーがどうもコストダウンを実施してようで、寧ろX1の方が金が掛かっているくらいだ。

ということで、X1自体が旧3シリーズベースの車だから内装や機構などは旧世代のものであり、更に今回の18iはエンジンも旧世代という具合に、チョッと前の3シリーズツーリングの背を少し高くしてSUV仕立てとしたものを、その分低価格で提供しているという訳で、320iツーリングよりも110万円も安いのは確かに買い得でもあるし、というように中々悩むところでもある。結局、いつものようにユーザーの考え方次第で、どちらが良いとはいえないが、ハッキリ言って予算があるならば110万円の投資も決して悪くはないし、満足感でも110万円分くらいはありそうだと思うが、まあ、これも各自の感性に関わることなので、単に個人的にはこう思うという程度だが。

地獄の沙汰も金次第、と言っては言い過ぎかもしれないが、世の中高いものにはそれなりの理由がある場合が多い。尤も、それを逆手に取って、本来安くあるべきものを高い価格を付けている例もあるから、高ければ良いという訳でもなく、そういうインチキに引っかからないためにも、ユーザー自身が見る目を養う必要があるのは、人生全てに言えることだ。さーて、あなたの見る目は大丈夫ですかな?

えっ、見る目ならば自信があるって? そういうあなたは眼科クリニックの院長先生! 確かに見る目は‥‥って、ちょっと違うでしょう??

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