BMW(F31) 320d Touring (2012/10) 前編

  

今年の初めに先ずは328iから発売されたBMWの新型3シリーズF30は、その後4月にはベースグレードでり本命の320iが追加発売された。そして今回は2013モデルとしてワゴンボディのツーリング(F31)、およびセダンも含めて新たに4気筒2Lターボディーゼルエンジンを搭載した320dも発売された。そこで早速試乗したのはディーゼルエンジンの320d、しかも今回追加されたツーリングを選んでみた。

本題に入る前に3シリーズツーリングについてまとめてみると、日本では3シリーズにツーリングが設定されたのは先々代のE46からだった。E46の一つ前のE36の場合は、日本の5ナンバーサイズでしかも全長は5ナンバー枠よりも 200mmくらい短いというコンパクトなことから、これをワゴンとしてもほとんど意味が無いと思われていたからだが、欧州ではワゴンの設定もあったようだし、実際に日本に並行輸入されてE36のワゴンを見たことがあるが、その時思ったのは、こんなに小さなワゴンなんて意味ねぇ〜、という気持ちだった。それに対してE46は多少拡大されたボディにより、何とかワゴンとしてまとまったという感じで、これなら充分にワゴンとしての商品価値があるだろうと感じたものだった(写真1)。

E46からFMCされたE90は先代に対してボディはより大きくなったことから、ツーリング(E91)もよりワゴンらしくなって、益々魅力的になってきた(写真2)。日本国内や米国では欧州ほどにはワゴンの需要がないため、輸出モデルが米国主体である日本のプレミアムブランド、すなわちレクサスとインフィニチィにはワゴンの設定はなく、高品質のワゴンを買おうと思えば結局BMW、メルセデスそしてアウディという御三家を選ばざるを得ないというのが実情となっている。


写真1
国内販売では初の3シリーズワゴンとなったE46ツーリング。


写真2
先代E90のワゴンモデルはE91ツーリングで、先代より大きくなったボディにより、更にワゴンらしさが増した。

さて、今回の新型ツーリングの開発コードはセダンのF30に対してF31となる。それではエクステリアから見てみよう。新型もBMWのワゴンに共通な手法であるBピラー以降を変更してワゴン化していてるから、斜め前から見たらばセダンと大きな違いは見当たらない。今度は斜め後方から見ると、Bピラー以降のスタイルは先代からのキープコンセプトを貫いている。元々BMWのワゴン、取り分け3シリーズツーリングというのは荷物を積載するというよりも、スタイリッシュなスペシャルボディという面を強調しているから、どう見ても積載効率の良さそうなデザインではない。それでも、写真1のE46ではルーフラインはほぼ水平に後端に向かっているのが、モデルチェンジとともにクーペ的に下降するようになり、今回のモデルではルーフラインはBピラーから下に向かっており、ラッゲージルームの容積なんか気にしていないが如くのデザインとなっている。

フロントは当然セダンとほぼ同じであり、ルーフに見えるルーフレールが正面から見て唯一ツーリングであることの明らかな識別となっている。ところで、写真5を見て気がつくのは320iのキドニーグリルが4気筒の3シリーズでの伝統というか仕来りである縦桟のブラックアウトが行われているのに対して、320dは何故かクロームメッキされていて、これは先代までなら6気筒を表す記号であった筈だ。そして真後ろから見比べると、意外にもワゴンのウエストラインから下のデザインは、基本的にサルーンと変わらない事を発見した。まあ強いて言えばバンパーの細かいラインなどに多少の違いがあるが、それでもこれ程までに共通点があるとは思わなかった(写真6)。今度は真横から比較すると、スペックを見れば両車はホイールベースが同じなのは当然としても、なんと全長までが同じだった。そしてBピラー以前が同じということはフロントオーバーハングも同じであり、結局リアオーバーハングも同じ事になり、何のことはないセダンのトランクをルーフまで持ち上げてワゴンにした、といったら言いすぎだだが、それほどまでに共通点が多い(写真7)。


写真3
BMWではお馴染みのBピラー以降を変更してワゴン化するという方法だから、逆にBピラー以前はセダンとほとんど同とになっている。


写真4
リアスタイルもBMWワゴンらしく実用性よりもスタイリッシュであることを優先している。


写真5
この位置から見ると基本的には同じ形状をしている。唯一ツーリングのルーフに見えるルーフレールがセダンとの違いになる。 なお、上の320dはキドニーグリルがメッキさている。


写真6
リアーを比べると意外にもウエストラインより下はほぼ共通のデザインとなっているのが判る。 /p>

写真7
セダンと比べてホイールベースと全長は同じでフロントも共通だから、結局リアのオーバーハングも同じ。普通はワゴンの場合リアオーバーハングを伸ばしたりするが、そういうことは一切無い。

リアのラッゲージルームは例によってスタイリッシュなボディの代償でワゴンとしては決して広くは無いが、面積が必要な時にはリアシートを前に倒せばライトバン的なスペースが出現する(写真10)。ただし、後席を倒しただけではトノカバーが邪魔になるから、これを外す必要がある。実際に取り外してみたが、2つのユニットを夫々レバーでロックを解除して上に上げれば簡単に外れたが、元に戻す時には慣れないと上手くいかずに結構苦労した(写真11)。テールゲートの開閉は電動式となっていて、閉める時はゲート下端のスイッチ(写真9)を押すとテールゲートはスーッと降りてゆき、閉まる直前で一旦止まってから静かに閉まりきる、と思いきや、そのままドンっと閉まったが、考えれみれば5シリーズツーリングでさえドンっと閉まるのだだら、3シリーズなら当然かもしれない。


写真8
例によってワゴンとしては決して広くないラッゲージスペースだ。


写真9
テールゲートには電動式のクローズ機構が付いている。


写真10
リアシートを前に倒すと、当然ながら十分なスペースが出現するが、このままではトノカバーが邪魔になる。


写真11
トノカバーはレバー一つで外せるが、取り付けは慣れないと苦労する。

ドアを開けると、そこに見えるのはセダンと同じ室内で、リアのルーフがほぼ水平に(セダンに比べて)後方へ伸びている以外は識別が難しいくらいで、特にフロントインテリアの写真だけだったら判別できないだろう(写真12)。勿論、シートやドアのインナーパネルも同じだった。

更にインパネやセンタークラスター上のエアコンやオーディオの操作パネル、そしたインパネ右端のライトスイッチ類も、結局フロントインテリアはそのまんま3シリーズセダンと共通ということになる。

写真12
室内はセダンと変わらず。特にフロントは識別が出来ない。


写真13
シートもセダンと同じ。


写真14
そして、ドアのインナートリムもセダンと全く同じに見える。

写真15
インパネも一見した限りではセダンとの違いは判らない。


写真16
オーディオもエアコンも操作パネルはセダンと同じ。


写真17
インパネ右端のライトスイッチも、勿論セダンと同じ。

結局、予想通りといえばそうなのだが、Bピラーより前の部分はエクステリア、インテリアともセダンとほぼ共通だった。従って、ドライバーズシートに座った感覚もこれまた同じで、ルームミラーに映るテールゲードを見なければ、このクルマがワゴンであることに気が付かないくらいだった。

そして、いよいよ走りだすのだが、セダンとの違いも確認したいがそれ以上に興味が有るのは勿論だが、何よりも日本国内に導入されたディーゼルエンジンの出来が知りたいものだ。

この続きは後編にて。

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