320dにも320iと同様にコンソール上には走行モードの切り替えがあり、とりあえずデフォルトのCOMFORTのままで走ってみる。国道の流れに乗って60km/h程度で流している時の回転数は1,500rpm程度で320iよりも少し高めだ。前車が左折のウィンカーを出して減速したので右に車線変更すると前はガラ空きだった。この時の速度は20km/hくらいまで落ちていたのでここでフルスロットルを踏むと少し遅れてシフトダウンが起こり、回転計の針は1,500rpmとなり、そこから加速を始めるとディーゼルエンジンによるガソリン3L車以上の加速は背中がバックレストに食い込むくらいの加速をするが、エンジンの回転数が4,000rpmくらいの時にシフトアップが起こる。これがガソリンだったならば、そのまま5,000rpm以上まで簡単に吹け上がるのだが‥‥‥。この時のエンジン音はディーゼルらしい音だが決してうるさくはなく、むしろ出来の悪いガソリンエンジンよりも余程静かなくらいだったが、まあ最近のディーゼルだから驚く程ではない。更には6気筒時代とは比較にならないまでも4気筒としては充分にいい音のする320iのように官能的でもない。
ここで、この新型ディーゼルとガソリンエンジンのスペックを少し比較してみる。下の表は前編で使用した一覧表からエンジン部分を抜き出したものだ。
ガソリンもディーゼルも4気筒2Lではあるが、排気量を見ると従来のガソリンエンジンが1,997cm3であるのに対してディーゼルは1,995cm3と僅かに異なっているは、ホアやストロークが異なっているかであろう。ということは、両者はエンジンブロックやコンロッドからして全く別物と思ってよさそうだ。ディーゼルエンジンというのは高圧縮比であり、エンジンに要求される強度もガソリンエンジンよりも遥かに厳しく、普通はよりゴッツい構造となるから重量も大分重くなるのだが、320dの車両重量は320iと比べても僅かに10kg重いだけであり、これは大した技術だ。
そして320dの最大トルクは328iの350Nmよりも大きな380Nmを発生している。ただし、トルクというのはどのくらい広い回転域で発生するかにより乗った時の印象が大いに異る。ということで、両車のトルクカーブを下に比較してみた。
この図から判ることは、328iの場合は約1,200rpmという低い回転数から最大トルクである350Nmを発生しているが、320dで1,200rpmは約200Nmでしかない。しかし、1,600rpm位で328iの350Nmを追い越して、1,750rpmからは380NmというガソリンNAなら4L級のトルクを発生する。しかし、それも2,750rpmまでであり、その後はなだらかに下降している。
そこで、回転計に表示されているレッドゾーンまで回した時のトルクを見ると、328iの場合はレッドゾーンの7,000rpmで230Nmまで下がっているが、パワーは160kw(約213ps)くらい出ている。これに比べて320dの場合は4,000rpmをピークとするパワーはその後一気に下降して、4,300rpm位で特性曲線は終わっている。要するにこれ以上は保証していないのか。
ということは、320dのレッドゾーンが始まる5,400rpmどころか、ゼブラゾーンの始まりである5,000rpmまで回したとしても、殆ど意味がないことになる。要するに320dがガソリンエンジンに優っているのは1,500〜4,000rpmという狭い範囲であり、このゾーン内で使う限りは大いなるメリットがあるという事実を認識しておく必要がありそうだ。
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