SUBARU BRZ R AT (2012/5) 前編
 

BRZについては、既に上級グレードであるS(MT)に試乗しているが、それではATは如何なのだろうかというのを知りたいところだ。特に、86のATの試乗記では発信時の飛び出しや過大なトルコンスリップなど、何とも腑に落ちない部分があったので、それではBRZのATはどうなのか、ということと、今まで試乗した86は何れも中間グレードのGであったためにタイヤが16インチであり、これだと17インチを装着しているBRZ Sとの乗り心地やハンドリングの違いも同列で比較できないこともあり、今回はBRZ R ATに試乗してみた。

クルマを見て最初に感じたのは、同等グレードである86Gと比べて何となく安っぽさが足りない(?)ような気がした。そして、ホイールに近づいて確認したら、あれっ? これって17インチじゃねぇか?? 実はこの試乗車は幾つかのオプションを装備していたのだった。その状態を下表の赤文字で表すと、17インチパフォーマンスパッケージを装着していて、意外にもタイヤ&ホイール、そしてブレーキもSと同じ17インチであり、しかもトルセンLSDまでついていたから、これは走りに関する装備としてはBRZ Sと同じだった。全く、余計なことをしやがって!なんて言っても始まらないので、今回はATの具合を試すことを第一目標にした。

  

なお、試乗車にはスポーツインテリアパッケージも装備されていたために、内装も少し良くなっていた。この為車両価格は約268万円となり、Sの287万円との差はたったの19万円となってしまった。これならば、何もRを買ってオプションなどをつけなくて、最初からSを買えば良いと思うのだが・・・・。

そういう事を踏まえながらも、RとSの違いを見てみよう。
フロントエンドのバンパーの両端にはSの場合、マルチリフレクター式フォグランプが標準装備れているが、Rには無い。 しかし、86の場合はGTでないと装備されないディスチャージランプがBRZではRでも標準装備される(写真1)。また、86ではリアから見た時のGとGTの識別ポイントだった排気管の違いは、BRZではSでも86GTと共通の大径マフラーカッターが装着されていて、この部分での識別はできない(写真3)。なお、写真のSに付いているリアウィングはSでもオプションとなる(写真2)。

写真1
BRZ Sに標準のフォグライト(マルチリフレクター式)はRには付かない。しかしディスチャージヘッドランプはRにも標準で装着されている。

 


写真2-1
BRZの場合は中間グレードのRでもクロームメッキされたマフラーカッターが標準装備されている。しかも試乗車は17インチホイールをオプション装備しているから、Sとの違いは殆ど無い。


写真2-2
上級グレードのSと言っても写真のリアスポイラーはオプションであり、86の場合は大きな識別点であった排気管はRにも装備されているから、ますます違いが判らない。


写真3
BRZは中間グレードのRでも上級のSと同じマフラーカッターが装備されているが、
86の場合はBRZ Rに相当する86 Gでは、安っぽいマフラーが顔を出している。

オプションのスポーツインテリアパッケージを装着している試乗車のインテリアは、ステアリングホイールやパーキングブレーキレバー等に赤いステッチの入ったレザーを使用していたりと、一見すると上級のSと大きく変わらない(写真5)。しかし、Rのシート表皮はステッチの無い地味なファブリックで、これはトヨタ86 Gクレードと同じであり、Sの場合はファブリックとはいえセンターがチェック模様でサイドには赤いステッチが入る(写真6)。

写真5
オプションのスポーツインテリアパッケージを装着していた試乗車は赤いステッチやアルミパダルなど、一見するとRグレードに見えない。


写真6
Rのシート表皮は地味なファブリックだが、Sになると同じファブリックでも座面はチェック模様だったり、サイドには赤いステッチが入ったりとう差別化がなされてる。

インパネでのRとSの相違点はオーディオ(ナビ)スペースから水平に伸びるインテリアトリムの仕上げが、Sはシルバー塗装であるのに対してRはプラスチック丸出しのブラックで、この部分は86Gと同じ部品のようだ(写真8)。ドアのインナートリムは前述のようにオプションを装備している試乗車はRとはいってもSに近く、アームレストなどもレザーに赤いステッチが入っているが、何故かパワーウィンドウスイッチ側面はSとは違い、黒い樹脂製となっている(写真9)。

エアコンについては、86GとGTの関係と全く同様で、Rはマニュアルエアコンであるのに対して、Sはオートエアコン、しかも左右別々に温度設定ができる2ゾーンタイプが標準装着されている(写真10)。ところで、このパネルを拡大してみると例の”Tメッシュ”が施されているが、このTはToyotaのTをモチーフにしていた筈で、それが何故かスバルブランドであるBRZでも使われている(写真11)。BRZのために別の金型を起こしたり、別の部品として管理するだけの生産台数が無いのだろう。

写真7
インパネは86と共通だが、インテリアトリムの色と質感を変えることで違う印象を持たせている。
写真8
BRZ Sのインテリアトリムはシルバー塗装となっているが、Rは安っぽい黒で、これは86Gと同じ。

写真9
ドアインナートリムの質感は赤いステッチも入っていて悪くない。ただし、これはグレードがSだからで、
ベーシックなRならば見た目も違うだろう。
オプションを付けても、Rのパワーウィンドウスイッチ側部のニーパッドだけはステッチが付いていない。
 

写真10
Sには2ゾーンのオートエアコンが標準装備されている。
これに対してRではマニュアルエアコンとなる。


写真11
エアコンパネルにもTメッシュパターンが使われているが、これって”トヨタのT”をモチーフにしている筈だが。

 


写真12
インパネのシボ目はプラスチック丸出しというほど悪くは無いが、レザーと見紛う出来ではない。
まあ、Cセグメントの標準的質感だ。この部分を指で押してみると”一応”弾性樹脂を使っていた。

 

トヨタ版の86とスバル版のBRZは、基本は同一だが上手い具合に差別化していたり、グレード別の装備やオプションも両メーカーのコンセプトを反映しているのだろうが、中間グレードあるBRZ Sと86 Rに関しては、価格が少し高いだけあってBRZ Rの方が少し安っぽさが緩和されている。まあ、今までの部分は、カタログを必死に見れば判ることなので、早速走ってみることにする。

シートに座れば、これはもう通算で4台目の試乗だから特に新たに感じることも無いが、適度にタイトな室内と乗用車に比べて低い着座姿勢、しかし本格的なスポーツカー程には低くないが、お陰で結構前方視界は良い。シートも86Gと同一品のようで、国産車としては極めて出来が良いし、体をしっかりとホールドしているのも前回と同じ。

ということで、この続きは後編にて。

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