Toyota Land Cruiser Prado TZ (2011/2) 前編 ⇒後編

 


SUVよりも本格的なオフロード車の雰囲気があるエクステリア。

前回試乗したトヨタ FJクルーザーとシャーシー、エンジンなど基本コンポーネントを共有するロングボディのモデルがランドクルーザー プラド(以下プラドと標記)で、最近流行の乗用車ベースのSUVとは異なり、クロスカントリー車をベースとしたヘビーデューティな、それでいて作業用の4WDよりは乗用車に近いというタイプで、クロスカントリー車の最高峰であるランドクルーザー(200)の弟分的な存在となっている。

それでは、プラドの簡単な歴史から触れてみよう。FJクルーザー試乗記の冒頭で説明したように、警察予備隊(現自衛隊)向けの入札用から始まったランドクルーザー (以下ランクル)は20系、40系(1960年)を経て70系(1984年)に発展していた。70系はヘビーデューディーな用途向けで、言ってみれば悪路用作業車両であり、乗用と言う面ではイマイチの面もあった。一方、政府や建設会社の幹部が山奥の工事現場などを視察する際に使用する、より高級なオフロード車として、ジープのバリエーションには4ドアのロングホイールベース仕様があり、日本国内ではジープをライセンス生産したいた三菱から30系(写真1)として販売されていた。この30系と同一市場向けにトヨタでは40系から発展した50系(1967〜1980年)というロングボディのワゴン(バン)仕様があった。

この50系は1980年に国際サイズの大型4WDステーションワゴンの60系(写真2)に発展した。60系は当時一部のマニアの憧れ的な存在だったが、サスペンションは4輪リーフリジットという作業車並で、よく言えばヘビーデューティーだか、悪く言えば無骨な設計だった。そして、1989年に発売されたのが80系(写真3)で、60系に対してサスペンションは全く新設計されて、4輪コイルリジットという当時のオフロード車では最も先進の方式になった。このコイルリジットのサスペンションは当時既にメルセデスベンツGクラスやレンジローバーで使用されていたし、ライバルのニッサンパトロール(日本ではサファリ)でもY60系(1987年)が採用していたから、トヨタとしては60系を 全面改良する必要に迫られていた事もあった。

この80系は折りしもバブルの絶頂期と重なり、世の中は4WD車ブームでもあり、高価で大きく重い4WD車が街中を闊歩していた時代だったから、その中でも大きさと豪華さでは群を抜いていて、しかも世界の僻地で活躍している80系は、マニアは勿論のこと、他人とは違うものを求める富裕層からも大いにもてはやされ、当時は納期が半年以上という状態だった。

このバブル期の4WD車ブームに火をつけたのは三菱のパジェロだった。三菱は米国ウィリス社との提携によりジープをライセンス生産していたが、ジープの基本は第2次世界大戦中だから流石に古さが目立ってきた。そこで、ジープ生産のノウハウを生かして近代化したのがパジェロで、初代は1982年に発売されて、官公庁向けなどに生産されていが、一部のマニアが目を付けて徐々に民間用としても売れていった。そして、更に近代化された2代目が発売されたのは1991年で、ちょうどバブルが弾ける少し前のピークの時期とも重なり、またパリダカの優勝などをアピールする販売戦略も成功し、当時は一大ブームを巻き起こした。パジェロはピーク時には月産1万台を越えて、遂には 単月とはいえ乗用車売り上げでナンバーワンに輝いた事もあった。それにしても、300万円以上もするクルマがベストセラーとは、今更ながらバブル景気の凄まじさを感じてしまう。
 


写真1
ジープの4ドアロングボディー仕様は、日本では三菱が30系として製造販売していた。
 

 


写真2 (1980年〜)
国際サイズの大型4WDステーションワゴンのランドクルーザー60系。

 


写真3 (1989年〜)
60系から大幅に改良されて、マニアの憧れとなった80系。
 

 


写真4 (1991年〜)
最盛期は月に1万台以上も売れた大ベストセラーの2代目パジェロ。写真のツートーンカラーは最上級のエクシードで、当時の一番人気とともに若者(オヤジも)の憧れだった。
 

 

パジェロが牽引するオフロード4WD車ブームの当時、トヨタの売れ筋はハイラックスサーフだった。 トヨタの1トン級小型ボンネットトラックであるハイラックのバリエーションである4WD仕様に一部のマニアが目をつけて、これを割安なオフロード車として使用する例があった。特にキャビンが2列で5人乗れるダブルキャブは、その気になればファミリーユースにさえ使う事が出来る。しかし、リアのラッゲージルームは吹きっ晒しのトラックそのものだから使い辛い面があった。そこで、リアの荷台にハードトップを被せれば、ワゴン的に使えるということから、アフターパーツでFRP製のハードトップが販売されて、これを装着するマニアも見かけた。それならばと、トヨタがラインナップとしてダブルキャブをハードトップ化したワゴンが初代 (写真5)サーフだった。そして1989年のFMCで、ハイラックベースとはいっても立派なワゴンボディとなって一躍人気となったのがハイラックスサーフ(写真6)だった。当時は同じく小型ボンネットトラックのダットサントラック(ダットラ)をベースとしたテラノもサーフと人気を二分していた。また、この2車は米国でも人気で、サーフは4ランナー、テラノはパスファインダーとして販売されてい て、これまた大人気だった。
 


写真5  (1983年〜)
ピックアップトラックのハイラックスの荷台にルーフを後付けしてワゴン化したような、初代(N60系)ハイラックスサーフ。
 

 


写真6 (1989年〜)
真っ当なワゴンボディとなった2代目(N130系)ハイラックスサーフ。

 

サーフで結構ブームに乗っていたトヨタとしては、パジェロの絶大なる人気に指を銜えて見ているだけではなく、何とか対抗車種を出す必要がある。サーフはピックアップベースで本来低いボディを高い位置に架装したスタイルが若者に好まれる反面、パジェロのような本格的オフロード車風のスタイルに魅力を感じるユーザーも多 がった。ところが、パジェロと言うのはブッチャケ、そのルーツはピックアップトラックのフォルテであり、何のことは無いサーフと同類だったのだ。それを三菱がノックダウンしているジープのイメージと、それらしきボディを纏っていただけの事だったのだ。そのため、当時のブームでパジェロを買うのはマニアではない一般の、言ってみれば本当にクルマのことを良く判っていない層が買っていたのだった。パジェロのフロントはダブルウィッシュボーンで、これは本気で悪路を走るにはストロークが足りずに、直ぐにスタックしてしまう。要するにパジェロは悪く言えば、見かけだけのなんちゃってオフローダーだったのだ。勿論、最近のSUVなどとは比べ物ならないくらいにヘビーディーティーだし、悪路走破性だって悪くは無いのだが、ランクルのへービーさから言えば、物足りなさがあった。

さて、そこでトヨタが考えたのは、ヘビーディーティーならパジェロより遥かに強力な70系ロング(写真7)があるが、これは4輪リーフスプリングの悪路専用チューニングだから、パジェロを流行で買うようなユーザーには使いこなせない。そこで70のロングバンを元に、足回りをコイルリジットとしたワゴンバージョンをデッチ上げたのがプラド(写真8)だった。コイルリジットといえば80系を連想するが、板ばねのスペースにコイルのリンクを詰め込むんだためにストロークが短く、走破性は70バンに全く及ばなかったが、まあ硬いことは言わないで良いか、という事だったのだろう。そんな程度のものだったから、結局パジェロの牙城に迫る事は出来ずに、単なるマイナー車となっていた。

ところで、ランクルというのは何故かトヨタにしては本格的なクルマでマニアックな面もあることを不思議に思わないだろうか?実はランクルは、荒川車体(その後アラコとなり、2004年に豊田紡織と合併・吸収された)により開発・製造が行なわれていたもので、いってみればOEM車種だった。これはトヨタ2000GTがヤマハからのOEMだったのと同じ事だ。そう、歴代のマニアックで本格的なトヨタ車は実は他車からのOEMだったのだ。
 


写真7 (1984年〜)
40系から進化した70系は、本来の不正地作業に徹した正当派のオフローダーで4輪リーフ(板ばね)リジットというハードなサスを採用していた。
 

 


写真8 (1990年〜)
70系ロングをベースに乗用ワゴン化した初代プラド。悪路走破性はイマイチだし、パワーも無いしと、あまり評判は良くなかった。

 

プラドはその後1996年に2代目の90系へとFMCされた。この90系からはサーフとシャーシーやドライブトレインを共有する兄弟車となった。そして、2002年からは3代目の120系となり、現行の4代目150系には2009年にFMCされた。なお、90系プラドにランクル200用のV8 4.6Lの1UR-FEエンジンを搭載したモデルがレクサスGX460として北米で販売されている。要するにプラドは日本でも米国でもランクル200(レクサスLX)の廉価版的な位置付けとなっている のだった。
 


写真9 (1996年〜)
2代目(90系)プラド。サーフとシャーシー、ドライブトレインを共有する。
 

 


写真10 (2002年〜)
3代目(120系)プラド。

 

プラドのバリエーションはベースグレードのTX(2.7L 330万円 、4.0L 370万円) と、TXのサードシートを取っ払った5人乗り(2.7L 315万円)、本革シートを標準装着したTX Lパッケージ(2.7L 374万円)、そして4.0Lで装備を充実させた上級モデルのTZ(410万円)、更に本革シートや木目”調”パネルなどを装備した最上級モデルのTZ−G(475万円)となる。

先ずはプラドの廉価版である2.7TXおよび上級の4.0TZ。プラドとエンジン、フレームを共有するFJクルーザー、そして上級クラスのランドクルーザー200、更にはライバルである三菱パジェロとのスペックを一覧表で比較してみる。
 
    @ Toyota Toyota ③ Toyota ③ Toyota ④ Mitsubishi
      Land cruiser
Prado 2.7TX
Land cruiser
Prado TZ
FJ Cruiser Land cruiser
200 AX
Pajero Long
Exceed Diesel
 

車両型式

  CBA-GRJ150W ABA-92AN48A CBA-GSJ15W CBA-URJ202W LDA-V98W

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.760 4.635 4.950 4.900

全幅(m)

1.885 1.905 1.970 1.875

全高(m)

1.850 1.840 1.880 1.870

ホイールベース(m)

2.790 2.690 2.850 2.780

駆動方式

4WD
 

最小回転半径(m)

  5.8 6.2 5.9 5.7

車両重量(kg)

  2,160 2,160 1,940 2,490 2,260

乗車定員(

  5 7 5 7

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  2TR-FE 1GR-1FE 1UR-FE 4M41

エンジン種類

  I4 DOHC V6 DOHC V8 DOHC I4 DOHC Turbo
Diesel

総排気量(cm3)

2,693 3,955 4,608 3,200
 

最高出力(ps/rpm)

163/5,200 276/5,600 318/5,600 190/3,500

最大トルク(kg・m/rpm)

25.1/3,800 38.9/4,400 46.9/3,400 45.0/2,000

トランスミッション

4AT 5AT 6AT 5AT
 

燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行)

8.8 8.2 8.4 7.1 10.6
 

パワーウェイトレシオ(kg/ps)

13.3 7.8 7.0 7.8 11.9

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ダブルウィシュボーン

トレーリングリンク
リジット
マルチリンク

タイヤ寸法

  265/65R17 265/60R18 265/70R17 285/60R18 265/65R17

価格

車両価格

315.0万円 410.0万円 314.0万円 470.0万円 411.6万円

備考

2.7TX
 L Package:
374万円

TZ-G:
475万円

 

GX:435万円〜
ZX:690万円

3.0GR;305万円〜
3.2SuperExceed
Diesel:477万円

表で比べてみると、FJクルーザーに対してプラドは全長は長く全幅は狭い。カテゴリーが1ランク上のランドクルーザー200は流石に一回り大きいし、エンジンも強力だ。 プラドはライバルのパジェロロングと比べると、スペック 上の寸法や価格帯もガチンコ勝負となっている。パジェロのセールスポイントは何と言っても新型のディーゼルエンジンで、日本国内で発売されている乗用ディーゼルとしては、メルセデスE350、エクストレイルに続き3例目となる。

プラドのスタイルは2代目から現行4代目まで、基本的にキープコンセプトだが、70のフロントデザインのようにこれこそランクル、というアイデンティティは無い。その点では、名車の誉れ高い40系のイメージを現代に再現し たFJクルーザーの個性には敵わない。逆に言えば、プラドの雰囲気は同じトヨタのライトクロカンであるヴァンガード辺りとの共通点を感じてしまう。
 


写真11
この角度から見ると、同じトヨタのライトクロカンである ヴァンガードを連想するうようなスタイルだ。
 

 


写真12
サードシートを使用するとラッゲージスペースはミニマムだが、畳めは充分なスペースがある。なお、サードシートは床下に完全収納される。
 

 


写真13
フロントデザインも基本的に先代からのキープコンセプトとなっている。
 

 


写真14
FJクルーザーと異なり、オフローダーの証である背面スペアタイヤはない。

 

今回の試乗車は上から2番目の4.0TZ(410万円)で、内装はスエード調織物というトヨタチックなものだった。これが最上位のTZ-G(475万円)となると、レザー表皮のシートや木目”調”のパネルなど、高級車としての定番装備となる。今回は試乗したTZを中心に、TZ−Gの写真も比較のために並べておく。詳細は以下の写真を参照願うとして、一言で言えば、どちらも旧世代のトヨタ丸出しというか、演歌調インテリアが気になる。まあ、この辺はユーザーの好みの問題だが、個人的にはFJクルーザーのシンプルな内装に魅力を感じてしまう。しかも、FJクルーザーは安い!
 

写真 15-1
TZの標準シートはスエード調織物で、ハッキリ言ってマークX的だ。
 

写真 15-2
TZ−Gの場合はレザーシートが標準となる。しかし、何となく質感が低く、似非高級車的雰囲気に満ち溢れている。


写真16
サードシートは結構マトモな形状をしているので、子供なら充分に実用になる。折り畳むと床下に完全に収納される。
 

 


写真17
高いボディのために、立派なステップがあり、しかもゴムの滑り止めがあるので充分に実用になる。

 


写真18-1
TZ−Gに標準装備のレザーシート。展示車のサイドサポート部分はへたっていたが・・・・。
 

 


写真18-2
TZに標準のスエード調織物のシート表皮。

 


写真19-1
TZ−Gの内装はトヨタの高級車的だが、質の高い高級感には乏しい。

 


写真19-2
TZの内装はシンプルだが、プラドにはこの方が似合っている。

 


写真20-1
TZ-Gのフェイク丸出しの木目調パネル。何故かトヨタにしては出来が悪い。
 

 


写真20-2
プラスチック丸出しの質感だが、実用性重視のクルマとしてはキャラクターに合っている。

 

試乗車であるTZのドアを開けて気が付くのは、乗用車べースのSUVと違いフロアの位置が高いことで、そのためには立派なステップ(写真17)が付いているから、これに足をのせて車内に乗り込み、シートに座ってみる。スエード調織物というマークXを髣髴させるような、トヨタ丸出しのシートは見かけどおりにサポートは悪く、体の一部だけで支える形になるから、長距離ドライブではタップリと疲れが出るだろう。最近はトヨタも世界基準に近い欧州タイプのシートに移りつつあるが、プラドの場合はそこまで進歩はしていないようだ。
プラドは全グレードでオーティオレスが標準となり、ラインオプションのナビは何と85.9万円。それぁ、まあ、ナビと共にスーパーライブサウンドやG-BOOK mX Proという通信機能やバックガイドモニターなどが付いているとはいえ、ナビが軽自動車一台分のオプション価格というのは、 高いことで有名なアルピナのオプションだってもう少し安いくらいだ。多分、多くはディーラーオプションで市販品を後付けするのだろう、と思うが。
 

写真21-1
一時代前の高級車的なTZ-Gのダッシュボード付近。安っぽい木目”調”パネルが演歌調を盛り上げる。

写真21-2
マークX的な国産ハイオーナーカーの雰囲気み満ち溢れたTZのダッシュボート。それでも、TZ−Gよりまマシか。


写真22
全車に共通のフルオートエアコン。
 

 


写真23
標準はオーディオレスでナビはオプション(85.9万円!)。
 

 


写真23
ルーフ先端中央のオーバーヘッドコンソールは全グレードに標準装備。
 

 


写真24
フロントシートの中間のアームレストは、ふたを開けると小物入れとなっている。
 

 


写真25
TZ−Gはシートヒーターの調整スイッチがついている。
 

 


写真26
TZ以下では、電源プラグ以外のスペースはメクラ蓋となっている。
 

 

さて、室内も見回したところで、これからエンジンを始動して走り出すことにするが、この先は後編にて。  

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