Toyota Mark X 250G Relax Edition (2011/6) 前編
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4月20日から日記で数回に渡りマークXとメルセデスEクラスおよびBMW5シリーズを比べるという暴挙をやってみたが、それでは走りはどうなのかといえばマークXへの試乗は現行モデルのX130系には発売直後に試乗して簡易試乗記で速報版としてアップしてあるが、これは言ってみればチョイ乗りであって、深く突っ込んだ評価などは出来ていない。
そこで今回は、現行マークXの売れ筋モデルであり、日記で比較に使用したモデルでもある250G リラックスセレクションに前回よりは長時間の試乗をしてみた。
その前に、マークXの前進であるマークUについて、少し触れてみよう。初代マークUであるT60系はその名もコロナマークUであり、当時の小型車であるコロナの上級版としてクラウンとの隙間を埋めるべく1968年9月に発売された。なお、2ドアハードトップもラインナップされていて、これはT70系という型式が与えられていた。それだけではなく、ワゴンやピックアップまで用意されるというワイドバリエーションを誇っていた。この手のハイオーナーカーとしては、1968年4月にニッサンがブルーバードの上級モデルであるローレルを発売していたが、それよりも5ヶ月ばかり
遅れて、言って見ればトヨタ得意の後出しジャンケンだった。
ローレルは操舵系にラックアンドピニオンを使用したり、リアサスペンションにはBMWのようなセミトレーリングアームを採用したりと、当時としては技術的に先端を行った車だったが、販売面では何の変哲もない
(リアサスは板バネ)マークUに水を空けられてしまった。そう、この頃から、技術のニッサンと販売のトヨタという状況が始まっていて、その後徐々に両社の差は広がっていった事になる。T60系のエンジンは4気筒SOHC、1.6Lの7Rと1.9Lの8Rがあり、1年後には1.9Lの8RをベースにDOHC化した140psの8R−Gを搭載したGSSが発売された。マークUGSSというのは、当時のマニアの間では結構憧れのクルマで、全日本ラリーでも活躍していた。
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写真1 (1968年9月〜)
初代マークUはコロナマークUと命名されていて、T60系という型式からもコロナ系であることが判る。
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写真2 (1968年9月〜)
初代マークUには2ドアハードトップもラインナップされていて、こちらの型式はT70系と呼ばれていた。 |
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マークUはその後も4年ごとにモデルチェンジを繰り返し、型式も2代目からはコロナのTではなくXとなった。3代目のX30/40系(1976年〜)ではオート店で販売する姉妹車のチェイサーが加えられ、4代目X60系(1980年〜)からはビスタ店で販売する兄弟車としてクレスタも発売され
て、これらはマークU3兄弟と呼ばれ、一時期は3兄弟を合わせて月に2万台以上の販売台数を誇る、トヨタのドル箱となっていった。
マークUの頂点といえばバブル時代真っ最中の1988〜1992年に発売されていた6代目のX80系だろう。1990年には年間販売台数でカローラを抜いて一位に輝いたほどの売れ行きで、大衆車のカローラよりもハイオーナーカーのマークUの方が売れるという、誰もが一生懸命働けば中流の暮らしが出来る時代だった。それが今では・・・・、まあ、今回はこの話は止めておこう。
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写真3 (1988年8月〜)マークU
バブル絶頂期のマークUであるX80系はベストセラーとなった。
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写真4(1988年8月〜)クレスタ
マークU3兄弟の中でも他の2車はサッシレスのピラードハードトップであったが、クレスタはプレスドアによるセダンボディという点が異なっていた。
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今回の試乗車は最も売れ筋の250G リラックスセレクション(269万円)にオプションの純正ナビ(33.5万円)を装備していたから、総額は300万円を越してしまうが、それでも買い得感は充分だ。実は一番ベーシックなグレードである250G Fパッケージ(238万円)に試乗したかったのだが、残念ながらFパッケージは試乗どころか展示車さえも見当たらず、2009年の現行モデル発売以来、実車を見たことが無いのだった。ただし、Fパッケージとリラックスエディションの大きな違いは、
・アルミホイールがスチールホイール+樹脂フルキャップとなる(ただし、タイヤサイズは同じ)
・ディスチャージランプがハロゲンランプとなる
・ステアリングホイールが本革巻きからウレタンになり、ステアリングスイッチが無くなる
・インテリジェントキーによる開錠と始動が無い
・運転席のシートが電動から手動になり、ランバーサポートも省略されている
等で、実際の走りに関する項目は一つも無いから、走りは試乗車と同等で便利機能のみが省略されている、と思えばいいだろう。
勿論、内装なども基本的には同じ(筈だ)。
エクステリアは先代からの正常進化だが、それではマークXのアイデンティティは何かといえば、さ〜て?一見欧州車のようなスタイルはDセグメントとしては大きめで、その特徴も何となくBMW5シリーズを彷彿させる。ベースグレードが240万円弱で、クルマに興味の無い普通の日本人から見れば少なくとも2.5倍はする5シリーズと何処が違うんだ?なんて思うくらいに、価格からは信じられないくらいに立派なのもマークXの特徴だ。とはいえ、これほど出来が良くて価格も安いマークXも、走行安定性などの基本性能の出来は悪いし、車格もマークXより2クラスくらいも下だし、それでいて価格的にはマークXとそれ程変わらないウィッシュに比べれば、マークXの販売台数はウィッシュの半分程度というのもまた、日本のユーザーの凄いところだ。
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写真5
フロントのXマークはペケではなくエックス!
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写真6
欧州車を思わせるリアデザインだが、欧州では販売していない。
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写真7
オーソドックスなFRセダンらしいサイドデザインだが、こうしてみるとレクサスISなどとも同様にウエストラインの位置は
高くサイドウィンドウは低めとなっている。
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マークXのライバルといえば真っ先に思い浮かぶのはスカイラインだが、価格的には20万円程の割高となる。尤も、スカイライン250GTは米国ではインフィニティG25としてレクサスIS250(国内でもベースグレードで約400万円)のライバルとなっているから、これはナビの分を考慮しても70万円ほどスカイラインが割安となっている。そのスカイラインよりも20万円安いマークX250Gは、前述のように最廉価グレードのFパッケージならば238万円という脅威の低価格。えっ、しつこい、って。いや、
そうは言っても、言いたくなってしまう。
ところで、他に何か国産の同クラスセダンはないか、と探してみたらば、サイズ的にも価格的にも同等なのが、あった、あった。それがレガシィB4だったのだが、エンジンが4気筒というところで、正しい高級車の道を外れている。とはいえ、現在の欧州車は小排気量&ターボ化の波に乗って、今やDセグメントの6気筒セダンなんて絶滅寸前で、とりわけ2.5Lクラスは殆ど残っていない。BMWの場合は325iは直6だが、実は3Lのデチューンエンジンであり、メルセデスの場合はC250といっても4気筒ターボで、しかも排気量は1.8Lとなる。
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@
Toyota |
② Nissan |
③Subaru |
CBMW |
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MarkX 250G
Relax Edition |
Skyline 250GT
A Package |
Legacy B4 |
523i |
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車両型式式 |
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DBA-GRX130 |
DBA-V36 |
DBA-BM9 |
DBA-FP25 |
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寸法・重量・乗車定員 |
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全長(m) |
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4.730 |
4.780 |
4.730 |
4.910 |
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全幅(m) |
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1.795 |
1.770 |
1.780 |
1.860 |
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全高(m) |
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1.432 |
1.450 |
1.505 |
1.475 |
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ホイールベース(m) |
2.850 |
← |
2.750 |
2.970 |
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駆動方式 |
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FR |
← |
← |
← |
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最小回転半径(m) |
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5.2 |
5.4 |
5.5 |
← |
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車両重量(kg) |
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1,520 |
1,580 |
1,480 |
1,770 |
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乗車定員(名) |
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5 |
← |
← |
← |
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エンジン・トランスミッション |
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エンジン型式 |
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4GR-FSE |
VQ25HR |
EJ25 |
N52B25A |
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エンジン種類 |
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V6 DOHC |
← |
F4 SOHC |
I6 DOHC |
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総排気量(cm3) |
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2,499 |
2,495 |
2,457 |
2,496 |
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最高出力(ps/rpm) |
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203/6,400 |
225/6,400 |
170/5,600 |
204/6,300 |
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最大トルク(kg・m/rpm) |
24.8/4,800 |
26.3/4,800 |
23.4/4,000 |
25.5/3,000 |
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トランスミッション |
6AT |
7AT |
CVT |
8AT |
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燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行) |
12.4 |
12.2 |
14.0 |
11.4 |
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パワーウェイトレシオ(kg/ps) |
7.5 |
7.0 |
8.7 |
8.7 |
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サスペンション・タイヤ |
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サスペンション方式 |
前 |
ダブルウィシュボーン |
← |
ストラット |
ダブルウィシュボーン |
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後 |
マルチリンク |
← |
ダブルウィシュボーン |
インテグラル・アーム |
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タイヤ寸法 |
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215/60R16 |
225/55R17 |
215/50R17 |
225/55R17 |
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価格 |
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車両価格 |
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269.0万円 |
289.8万円 |
263.6万円 |
610.0万円 |
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備考 |
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Fパッケージ:
238万円 |
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さて、比較表の右端の欄をご覧いただければ判るようにBMW523iを並べてみたのは、ズブの素人さんならばマークXと何処が違うんだ、と言いそうだし、今まで冗談で5シリーズと大して変わらないんじゃあないか、なんて言ったりして遊んでいたが、こうしてスペックを
比較すれば明らかにサイズは大きく、これはやっぱり無理があった。
それでは、いよいよマークXを見てみよう.
シートは形状的には今や欧州の同クラス車と比べても大きな違いは無いというほどになってきて、特にバックレストのサイドサポートの形状なんて見ただけでは3シリーズやCクラスにだって引けをとらない、という程度まで進歩した、といっても言い過ぎではないくらいだ。そして、マークU時代には、これぞトヨタと言いたくなるような、短い毛足のベロアの表皮が何とも国産車丸出しだったが、最近では一見欧州車のようなファブリックになりつつある。
いくら見かけが欧州車に近づいても、シートというのは座ってみてナンボだから、早速乗り込んでシートに座ってみると、う〜ん、以前よりは確実に進歩はしているが、長時間の移動にはどうだろうか?まあ、それを言ったらば、3シリーズだって
Cクラスだって、ベースグレードに付いている標準シートはそれ程良くはないが、それでも未だマークXに負けることは無さそうだ。そして、電動式のランバーサポートは最適ポジションに設定する、というよりは、何とか不快感の無い位置を探すといった方が適切のような代物で、最初からベストな設定ならばこんな装置は要らない、なんて言いたくなる。でも、まあ、シートに座った瞬間に国産車を買う気が失せる、という以前の駄目さからは完全に脱却しているのは嬉しいことではある。
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写真
8
室内はDセグメントセダンとしては充分な広さがあるが、最近のFF車のように広大ではない。
フロントシートの見かけは3シリーズ等の欧州車と大きく変わらない。ただし、実際の座り心地は・・・・。 |
写真9
最廉価グレードのFセレクションを除いて、ランバーサポートも付いたパワーシートが標準装備されている。
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写真10
以前のマークU時代のように田舎のキャバレーシートから脱却して、結構欧州風に近づいたシート表皮。 |
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インパネからコンソールに至るデザインは、ベースモデルが2百万円台中頃のクルマとしては驚異的な高級感を出している。ダッシュボードを指で押してみれば、柔らかい感触から弾性樹脂を使ったパッドになっているし、表面の質感もプラスチックっぽさの欠片も無く、同じ250万円の世間一般のクルマ
(特にミニバン系)とは大いに違うのだが、実際にその気になって比較をしない限りは、案外気が付かないものだ。
次にドアのインナートリムに目を移すと、おっ、がっちりしたドアグリップはレザー貼りでステッチも入っている?250万円で??しかし、よ〜く見ればこれは金型で作ってある成型品で、言って見ればフェイクなのだが、実に出来が良くて騙されてしまう
(写真16)。
そしてセンタークラスターはといえば、ここは左右端面やエアコンのコントロールパネルなどにクロームメッキの光物が多用されていて、これはチョイと
感心しない。更には、車内の随所に使われている木目調パネルも、クラウンのように本物よりも高級感があるのと異なり、イマイチ安っぽいのが残念だったが、これも値段を考えれば文句も言えないし、商売としてクラウンが不要にならないように
差別化することは当然でもある。
というわけで、やっぱりマークXの買い得感は充分にある。ただし、純正ナビを付けてしまうと意外と高い買い物になってしまうから、(どうせ滅多に使わないユーザーが多いのだから)ナビなんて付けない、もしくは社外品の低価格タイプを後付するのが得策だ。社外品といっても、ディーラーオプションとして設定しているものは結構上手くセンタークラスーに組み込めるから、如何にも後付けという状況にはならない。
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写真11
ハイオーナーセダンとしての高級感は持っているが、やはりトヨタ臭さはムンムンと感じるインパネからコンソールのデザイン。 |
写真12
試乗車にはラインオプションの純正ナビ(33.5万円)が装着されていた。
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写真14
グリーンに輝くイルミネーションも価格を考えれば充分な高級感を満喫できる。とはいえ、BMW3シリーズなどのハッとする美しさとお洒落感は無い. |
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写真13
エアコンの操作パネルは独特のデザインで、妙にクローム鍍金を使っているし、同様にセンタークラスターも光物が多いのは残念だが、これは好みの問題でもある。
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写真15
ドアトリムも価格を考えれば充分に立派だが、ウッドパネルは残念ながら、ちょっと嘘っぽい。 |
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写真16
ドアハンドルは一見レザーにステッチが入っているように見えるが、金型で作った成型品。
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と、一通り車内を見渡したところで、いよいよエンジンを始動して走り出すことにするが、この先は後編にて。
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