Toyota Crown Majesta (2010/9) 中編


マジェスタのインテリアもフロントについてはロイヤルとの大きな違いは見当たらないが、リアの前後スペースは大きく異なり、ホイールベースが195mmも長いマジェスタ(写真10)は足元の余裕がロイヤル(写真11)とは全く異なる。 なお、マジェスタの上級グレードであるGタイプ(740万円)はレザーシートが標準となり、最上級グレードのGタイプFパッケージでは、後席が2名乗車となりセンターに豪華なコンソールが装着されている(写真12)。
考えてみれば、マジェスタの長さ方向への拡大は殆どが後席の居住性向上の為であり、その面ではオーナードライバーに対してのメリットは全くない。特にGタイプFパッケージはショーファードリブンと考えて良いだろう。
 

写真 10
ロイヤルに比べてホイールベースが195mm長いマジェスタの後席足元スペースは流石に広い。


写真11
マジェスタに比べるとロイヤルの後席はイマイチ狭い。
上の写真10と比較するとよく判る。

 


写真12
GタイプFパッケージは後席が2名乗車でセンターコンソールが付く。

 

ロイヤルのシート表皮は標準がファブリックで、3.0リッターモデルのみにオプションにてレザーシートが選べる。アスリートの場合は、3.5Gパッケージに標準でレザーシートが、その他グレードにはオプションでレザーシートが選べる。ただし、廉価版パッケージは除く。 と、書いてはみたが、判り辛いので表に整理してみた。
 
  クラウン系のシート表皮組わせ        
    エンジン 駆動 グレード 車輌価格 シート表皮
モケット 平織 レザー
   マジェスタ

4600 V8

2WD

Gタイプ

740万円    
   

 

 

Gタイプ Fパッケージ

790万円    
   

 

 

Cタイプ

695万円  
   

 

 

Aタイプ

610万円    
   

 

 

Aタイプ Lパッケージ

685万円    
   

4300 V8

4WD

i-Four

690万円  
   ロイヤル

3000 V6

2WD

ロイヤルサルーン

458万円  
   

 

 

ロイヤルサルーンG

520万円  
   

 

 

ロイヤルサルーンG
オットマンパッケージ

527万円    
   

 

4WD

ロイヤルサルーン i-Four

481万円  
   

 

 

ロイヤルサルーン i-Four
Uパッケージ

543万円  
   

2500 V6

2WD

ロイヤルサルーン

415万円    
   

 

 

ロイヤルサルーン
スペシャルパッケージ

345万円    
   

 

 

ロイヤルサルーン
スペシャルナビパッケージ

395万円    
   

 

4WD

ロイヤルサルーン i-Four

444万円    
   

 

 

ロイヤルサルーン i-Four
スペシャルパッケージ

374万円    
   

 

 

ロイヤルサルーン i-Four
スペシャルナビパッケージ

424万円    
   アスリート

3500 V6

2WD

アスリート

487万円  
   

 

 

アスリート Gパッケージ

559万円    
   

2500 V6

2WD

アスリート

425万円  
   

 

 

アスリート
スペシャルパッケージ

355万円    
   

 

 

アスリート
スペシャルナビパッケージ

405万円    
   

 

4WD

アスリート i-Four

447万円  
   

 

 

アスリート i-Four
スペシャルパッケージ

378万円    
   

 

 

アスリート i-Four
スペシャルナビパッケージ

428万円    

ファブリックシートの場合は、マジェスタ(写真13-1)とロイヤル(写真13-2)は殆ど同じモケットタイプの表皮が使われている。これは言ってみれば、 いわゆる国産車丸出しの材質だが、それでもゼロクラウンになる以前(S170系)の ベロアシート(場末のキャバレーシート、写真13-5)よりはマシではあるが・・・・。
そして、アスリート系のファブリックシート(写真13-3)は欧州調の織目の粗い平織りで、これがレクサスGS(写真13-4)となると同じような平織りでも、ワンランク高級になる。 そして、メルセデスEクラスはといえば、アスリート系のファブリックと似たような質感だ(写真13-5)。いや、アスリートがEクラスに似ているというべきか。 ただし、この手のシート表皮を見て、マルで大衆車のようだという日本人は未だ結構多い。まあ、そういう人のためにロイヤルがあるわけだが、実際にネットなどでそのようは発言をしている奴に限って、クラウンどころ か・・・・いや、止めておこう。

クラウンの歴史は、常に進歩しすぎて失敗し後退する、という繰り返しで、正に「3歩進んで2歩下がる」という状況だった。これはクラウンのユーザー層が新しいモノを求めないというか、悪くいえば田舎モノ、オジンということ が原因なのは言うまでもない。だから、そういうのが嫌いならばメルセデスやBMWを買えばいい、と言うわけにいかない。そこでアスリートというモデルが登場したのだと思っている。
そして、アスリートの場合はレクサスGSとユーザー層が被ることもあるだろう。何故なら、本当はレクサスに乗りたいが仕事の関係でトヨタ店との付き合いがあるとか、レクサス という高級車をイメージするクルマに乗っていると儲かっているようで親会社に睨まれるのを気にする下請け会社の社長など、本当はクラウンなんかに乗りたくないが立場上仕方が無くアスリートを選んだ例を知っている。確かに下請けと はいえ一国一城の主である社長がクラウンに乗ることは日本の社会が認めているが、レクサスとなるとちょっと。勿論、ベンツなんてトンでもない話だ!


写真13-1
いかにもクラウン的なマジェスタのファブリックシート(モケット)。

 


写真13-2
マジェスタとほぼ同じロイヤルのファブリックシート(モケット)。

 


写真13-3
ロイヤルと異なり欧州車的なアスリートのファブリックシート(平織り)。

 


写真13-4
アスリートに近いが、よりコストを掛けたと思われるレクサスGSのファブリックシート(平織り)。

 


写真13-5
ゼロクラウンになる以前は”田舎のキャバレー”風のベロアシートが当然だった。

 


写真13-6
欧州のプレミアムカーのファブリックシートは当然ながら平織りを使用している。

 

レザーシートの表皮については、マジェスタ(写真14-1)とアスリート(写真 14-2)は概ね同一で、一言でいえば田舎の応接間のソファー的で、表面がツルツルと光っていて滑りやすく、既に細かい皺が付いていて経年変化でヒビが入りそうな伝統的なクラウンのレザーシートで、この質感はヒュンダイ車を思い出す。トヨタは初代セルシオを開発するに当って、一番苦労したのがレザーシートだったという話を聞いた事がある。そして、その時にモノにしたノウハウはといえばレクサスに生きているようだが、クラウンについてはレクサスとの差別化だろうか、未だに昔の駄目シートを使っている。しかし、見方を変えれば、レクサス自慢のセミアニリンシートなんかを使ったら、こんな薄くてチャチ な革でコストダウンした、なんて文句をいうオーナーが出るのは間違いない。確かに、自宅の応接間のソファーと同じ質感を求めるクラウンオーナーも結構いてもおかしくない。
なお、電動シートの調整用スイッチはマジェスタもロイヤルも(そしてアスリートも)全て共通となっている(写真15-1〜2)。


写真14-1
決して良いとは言えない質感のレザー表皮。
 

 


写真14-2
ステッチが多少違うが、レザーの材質自体はマジェスタと変わらないアスリートのレザー表皮。

 


写真15-1
マジェスタの電動シートはオーソドックスな方式で初めてでも違和感は無い。写真の左端はランバーサポート用。

 


写真15-2
ロイヤルのシート調整部分はマジェスタと全く同じ。

 

フロントインテリアは基本的にマジェスタもロイヤル/アスリートも同様で、特に大物の金型が必要なダッシュボードの天板パネルは明らかに共有しているようだ。そして、それより下のウッドトリムの位置からは、別の金型を起こしたのだろうか、多少形状が違っている。ナビのディスプレイ周辺も共有しているが、その直下にあるエアコンコントロールパネルは全く異なり、専用のものを使用している。と、いっても機能的には大きく変わることも無さそうなので、単なる差別化と思われる。

なお、どちらもオーディの操作部はカバーが付いていて、普段は見えないようになっている(写真18)。同様に灰皿もカバーを開けないと出てこないが、これは他社でも当たり前になっているので特に言う事は無い。そして、灰皿付近の仕上げはマジェスタの艶消しクロームが中々高級な質感を出していて、ポルシェパナメーラを彷彿させ、ロイヤルの黒色仕上げより高級感では勝っている。
ステアリングホイールもほぼ同一品に見えるが、良く見ればマジェスタは10時10分の位置に”こぶ”が付いている(写真20)。
ドアのインナートリムについては、マジェスタのファブリックインリアはクラウンロイヤルとほぼ同一となっている(写真21-1、3)。マジェスタ Gタイプの場合は標準がレザーインテリアのために、ドアイン ナートリムもレザーが使われていて高級感を増しているが、既述のようにマジェスタのレザーは決して質感が良いとは言えないのが辛い (写真21-2)。

なお、GタイプFパッケージは後席がセパレートシートの4人乗りために、リアにもセンターコンソールが装着されていて、そこにはエアコンの操作パネルが付いている(写真22)。そして、リアシートのヘッドレストにはスピーカーまで組み込まれていた(写真23)。
 

写真16-1
好き嫌いは別にしても内装の良いといわれるトヨタ車の、そのまたフラッグシップセダンだから、当然ながら高級感は極めて高い。

写真16-2
基本的にはマジェスタと共通だが、良く見れば多少の差別化が行われている。
ウッドトリム(実はフェイクの木目”調”)の高級感もマジェスタに一歩譲る。


写真17-1
ナビの下に一体となったエアコン・コントロールパネルがあるマジェスタ。

 


写真17-2
ナビ部分はマジェスタと共通だが、エアコン・コントロールパネルはデザインを代えて差別化している。

 


写真18
オーディオはカバーで隠れている。

 


写真19
灰皿も当然ながら普段はカバーで隠れている。
この部分の半艶消しシルバーの質感はGOOD!
 

 


写真20
ステアリングホイールは一見同じように見えるが、よく見ればマジェスタは10字10分位置に”こぶ(↑)”がある。

 


写真21-1
ファブリックインテリアのドアインナートリムは、シートの座面表皮と同様の生地が使用されている。

 


写真21-2
マジェスタの上級グレード(Gタイプ)はドアインナートリムにもレザーが使われ、肘掛にはステッチが入っている。

 


写真21-3
マジェスタとほぼ同様のインナートリムで共通部品も多い。マジェスタのファブリックインテリアは、このロイヤルと殆ど同じ。

 


写真22
Gタイプ Fパッケージには後席センターコンソールにエアコン・コントロールパネルが付く。 

 


写真23
同様にFパッケージのリアシートヘッドレストにはスピーカーが組み込まれている。
 

 

ということで、今回はインテリアについて、マジェスタとクラウンロイヤル(一部アスリート)との詳細な比較を行ってみた。なにやら走り出す前に疲れてしまったが、一言で言えばマジェスタ の基本はロイヤルと共通ながらも、随所で高級感を増すための差別化が行われていたが、こうして比較するのではなく、何も考えずにロイヤルに乗るならば、それはそれで充分に豪華だし、マジェスタならばより満足感に浸れる、という程でも無いような気がする。まあ、これは各個人の感性の問題だから、これ以上のコメントはしないが。

というところで、乗り味については後編にて。

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