Lexus CT200h F Sport  (2011/2) 前編


レクサス初のCセグメント、しかもハッチバックという初めて尽くしのハイブリッド新型車、CT200hが先月発売になった。このCT200hは下表をみれば判るように、エンジンおよびモータを含むハイブリッドシステムはプリウス (写真1)と全く同一で、プラットフォームもホイールベースがCTは100mm短いが、基本的にはプリウスと共用しているようだ。ただし、リアサスペンションにつ いては流石にプリウスのトーションバーから ダブルウィシュボーンに変更されている。

    @ A B C
      LEXUS TOYOTA LEXUS TOYOTA
      CT200h  PRIUS 1.8L HS250h  SAI S
 

車両型式

  DAA-ZWA10 DAA-ZVW30 DAA-ANF10 DAA-AZK10

寸法重量乗車定員

全長(m)

4.320 4.460 4.700 4.605

全幅(m)

1.765 1.745 1.785 1.770

全高(m)

1.460 1.490 1.505 1.495

ホイールベース(m)

2.600 2.700

駆動方式

FF
 

最小回転半径(m)

  5.2 5.4 5.6

車両重量(kg)

  1,380 1,310 1,640 1,570

乗車定員(

  5

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  2ZR-FXE 2AZ-FXE

エンジン種類

   I4 DOHC  I4 DOHC

総排気量(cm3)

1,797 2,362
 

最高出力(ps/rpm)

99/5,200 150/6,000

最大トルク(kg・m/rpm)

14.5/4,000 19.1/4,400

トランスミッション

CVT CVT
 

モーター型式

  3JM 2JM
 

モーター最高出力(ps)

82 143
 

モーター最大トルク(kg・m)

21.1 27.5
 

燃料消費率(km/L)
(10・15/JC08モード走行)

30.4/34.0 32.6/38.0 19.8/23.0

サスペンション・タイヤ

サスペンション方式

ストラット

ダブルウィシュボーン トーションビーム ダブルウィシュボーン

タイヤ寸法

195/55R15 185/65R15 215/55R17 205/60R16

ブレーキ方式

前/後 Vディスク/ディスク

価格

車両価格(発売時)

355.0万円 205.0万円 395.0万円 338.0万円
 

備考

Version L:430万円
F SPORT:405万円

G"T Serecton"
327万円

"version L"
535万円

G 380万円

レクサスのラインナップでのハイブリッド車は、LSやGS、そしてRXなどに存在するが、これらはハイブリッド専用車ではない。そういう意味ではレクサスブランドのハイブリッド専用車は昨年発売されたHS250h (写真3)で、これはトヨタのSAI(写真2)とほぼ同一の兄弟車だ。従って今回のCT200hはレクサスブランドのハイブリッド専用車としえては2つ目となる。ただし、HSのようにトヨタブランドに双子の片割れがあるのと異なり、CTの場合はベースとなったプリウスとは内外装が全く違う別のクルマだから、レクサス専用の本格的ハイブリッド車としては初といってよいだろう。
 


写真1
今更言うまでも無いHVの代名詞プリウス。
 

 


写真2
プリウスよりもワンランク上のHVであるSAI。

 


写真3
SAIのレクサス版HS250h。
 

 


写真4
CT200h バージョンCはFスポーツより多少大人しいエクステリアだが、CTは基本的にスポーティ路線を狙っている。
 

 

CT200hのラインナップはベースグレードが355万円。ベースグレードに加えて16インチホイール、クルーズコントロールなどを装備した”version C”が375万円 (写真4)。エアロパーツや専用17インチホイール、専用シートなどを装備した”F SPORT”が405万円。そしてレザーシートなどの豪華装備満載の最上級モデルである”version L”が430万円、という4つのモデルがある。今回の試乗車はF SPORTで、これにオプションの本皮シート(28万円)を装着していたから車両価格は433万円という結構なお値段となっている。

まずはエクステリアから見てみると、CT200hはHS250hのようにクロームのグリルでハイブリッドを強調することなく、IS(写真5)に近いフロントデザインとなっている。 世間ではCTのエクステリアがBMW1シリーズのパクリだという意見もあるが、Cセグメントで4ドアでトランクの無いフロントエンジン車をデザインすれば、自ずからこの手のスタイルに なるわけで、マツダアクセラなども同じようなスタイルをしている。 そして、デザイン上の要であるサイドのプレスラインなどは写真6を見れば全く異なるのが判るだろう。なお、CTをサイドから見るとリアハッチのウィンドウがサイドまで大きく回りこんでいるのが 大きな特徴になっている(写真12)。そこで、車内から見てみれば、この部分の多くはダミーで、実際には小さな窓しか開いていなかった(写真14)。したがって、いわゆるCピラーは結構ゴッツイ構造となって おり、剛性では不利なハッチバックボディの欠点を、この太いCピラーで補っているようだ。
 


写真5
CTのフロントはISと同系のイメージで、グリルの高さ(厚み)が低い(薄い)分だけよりスポーティに見える。
CセグとDセグでは同じようで少し違うという、BMW1シリーズと3シリーズの関係と似ている。
 

写真6
短いボンネットと狭いリアドアに対して、大きいフロントドアと長いリアクオーターパネル。
BMW1シリーズにソックリという意見もあるが 、Cセグメントハッチバック同士だから基本的なプロポーションは似ているが、サイドのプレスラインなどは全く違う。


写真7
レクサス初のハッチバックは、極力安っぽさを排除しようという努力が見える。
 

 


写真8
リアラッゲージルームはハッキリ言って狭い。

 


写真9
Fスポーツには標準でLEDランプが装着されている。

 


写真10
リアゲートには”CT200h”のエンブレムがある。
 

 


写真11
フェンダー後方のFスポーツのエンブレム。

 


写真12
サイドに回り込んだリアウィンドウや、ウエストラインに段を付けたリアゲートなど、中々斬新なデザインとしている。
 

 


写真13
リアドア後方には”HYBRID”のエンブレムがある。

 


写真14
大きく回り込んだリアウィンドを室内から見ると、実は殆どがダミーで、開口部は極一部となる。 事実上は太〜いCピラーということになるから、ハッチバックとしては車体剛性は高そうだ。
 

 

今回の試乗車はオプションのレザーシートを装着している事もあって、ドアを開けて最初にインテリアを見た印象は、随分ドイツ車っぽいなあ、と感じることだ(写真15-1)。 Fスポーツのシートはスポーツシートが標準装備となっているが、表皮はファブリックが標準となる。今回は試乗車も展示車もオプションのレザーシート装着のために、標準のファブリック表皮のスポーツシートがどんな感じなのかは判らない。レザー表皮については、レクサス得意のセミアニリン本革で、座面には細かい通気穴が開いている(写真16)。なお、バージョンCのインテリアを見たが、展示車のシートは濃いブルー(オーシャンブルー 、写真15-2)で、このカラーは他にブラウン、アイボリー、そしてレッド(ただし、座面のみレッドでサイドはブラック)の計5色から選択できる。このブルーのシートのファブ リック表皮は一見するとアルカンターラのような、スエード調のものだった(写真1 6)。

ドアのインナートリムはファブリックシートのモデルでもアームレストはレザー仕上げ(合成皮革?)でステッチも入っている(写真20)。同じレクサスのISのドアはインナートリムが一体の樹脂成形で安っぽいのが気になったが、CTはその面では改良されていた。このように、CTは見える部分の質感は中々良いが、一見すると目立たない、例えばダッシュボード右端のスイッチ群のパネルなどは、意外にもプラスチッキーなシボだったりする(写真17)。
 

写真 15-1
Fスポーツの室内。ただし、写真のレザーシートはオプションで、標準はファブリックシートとなる。
なお、ISに比べると同じFスポートとはいえシートのホールド性は多少劣っている。写真15-3参照。

写真 15-2
バージョンCの室内。写真はオーシャンブルー。シートカラーは他にも4種類が用意されている。

写真 15-3
同じFスポーツでもISの場合はIS-Fと共通のバケットシートとなり、ホールド性がよくピシッと押さえつけられる。


写真16
Fスポーツにオプションのレザーシートが装着されていた試乗車。調整は電動でポジションメモリーも付いている。
バージョンCの標準シートは手動調整で、表皮はスエード調のファブリックが使用されている。
 


写真17
ダッシュボード右端のパネルにあるミーラーやライト関係のスイッチ類。パネル自体の質感は他の場所と違ってプラスチックっぽい。目立たない場所は手を抜くというのは、如何にもトヨタらしい。

 

写真18
ドアインナーパネルのアームレスト先端のパワーウィンドウスイッチ類。特に高級感があるわけでもない。


写真19
シートメモリーは3人分を記憶できる。ドアハンドルの取り付けられた金具の半艶消しシルバーは質感が高くて、室内の高級感を向上させている。
 

 


写真20
ドアインナーパネルのアームレストにはステッチの入ったレザー仕上げとなっている。写真17のパネルと違い、見えるところは金を掛けている。
 

 

試乗車の本革表皮のシートに座ってみると、座面は硬めでピシッとしていて体全体は良くサポートされる が、座面のレザーが多少滑るために前後方向のサポートはあまり良くない。左右のサポートについては、スポーツシートということで、両サイドの張り出しは大きめだが、同じFスポーツとはいえIS-Fと共通のシートを装着しているISのFスポーツ (写真15-3)に比べるとスポーツ度は低いというか、サポートは緩めだ。

ダッシュボートは、今までのレクサス各車がLSを除いては水平のトリムを使わずに、上下方向に一体感を持たさせていたが、CTはディスプレイをダッシュボード上面に配し、エアコン噴出し口の下にはシルバーのトリムで水平方向に分割するという、 LS以上に水平トリムによる上下分割を強調する、今までのレクサスには無いデザインとなった。だだし、良くも悪くもドイツ車的になったような気もするが (写真21)。 そして、センタークラスターは水平方向に寝ていてコンソールに繋がるという、ポルシェがカレラGTから初めて、最近のパナメーラやカイエンで使用している方式だが、勿論ポルシェほどには 質感は高く無い。

CTにはレクサスお馴染みのナビや空調、そしてオーディオなどをナビのディスプレイを使ってコンとロール出来る情報システムが完備しているが、このシステムへの入力にはマウスのようなリモートタッチという装置(写真24、25)を使い、運転中でも視線の移動なく安全に入力できる(はずだ)。従来、レクサスのセンタークラスター内にある操作部には、メタリック塗装やクロームの縁取りなどハイテク家電っぽいもの (写真21-2)が多かったが、今回のCTはそれらを廃して、言ってみればドイツ車的になった(写真21-1)から、ISやGSのようなトヨタ丸出しのインテリアが気に入らない欧州車ユーザーからみれば、受け入れやすくなったのだろうが、言い換えれば、辛うじてトヨタらしさ、レクサスらしさを 保っていた部分をあっさり捨てて、ドイツ車チックに進んでしまったことは、人によっては批判の対象になるかもしれない。ただし個人的には、CTの内装は決して悪くないと思っている。
 

写真21-1
ディスプレイとダッシュボード上面に配し、エアコン噴出し口の下にはシルバーのトリムで水平方向に分割するという、今までのレクサスには無いデザインとなった。良くも悪くもドイツ車的になったような気がするが。

写真21-2
従来のレクサスはセンタークラスターにメタリック塗装やクロームと縁取りを多用して、トヨタ臭さがあった。
写真でもクラウン的なものが感じられるだろう。


写真22
エアコンのコントロールは全てボタンで、ダイヤルによるアナログ感覚の部分は無い。
 

 


写真23
オーディオのコントロール部分は小さいパネルに、小さいスイッチ類が並ぶ。
 

 


写真24
パソコンのマウスというか、IBMのシンクパッドのようなコントローラーは左手人差し指で操作し、親指で側面のENTERボタンを押して入力する。
 

 


写真25
コントローラ(リモートタッチ)の先端にはワンタッチ入力用のメニューと現在地ボタンがある。
 

 

さて、室内も見回したところで、これからエンジンを始動して走り出すことにするが、この先は後編にて。  

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