BMW 325i M-Sports 特別編  ⇒試乗記へ戻る
BMW M-Sports vs LEXUS F-Sport

特別編へようこそ。何時ものように、このコーナーは言いたい放題の毒舌が好みの読者以外はお勧めいたしません。

既に試乗記で述べたようにレクサスのFスポーツはBMW Mスポーツと同じコンセプト、ぶっちゃけパクリという訳だが、メルセデスだってナンチャってAMGのAMGスポーツ、アウディはナンチャってRSのSラインなど、皆さん同じような商売をしている訳だから、別に批判するには及ばない。
そこで、この特別編では大御所Mスポーツとデビューしたての新人Fスポーツを比較してみる。比較対象はレクサスが既に試乗記を発表済のIS250で、対するBMWは320iを取り上げてみる。なぜ、325iの特別編なのに320iかといえば、IS250 Fスポーツが450万円に対して、3シリーズのMスポーツは325iが586.5万円、320iが488万円であり、価格的にIS250と320iが同等というのが理由となる。それでも320iが38万円程高いが、値引きなし、ワンプライスのレクサスと値引きのあるBMWということを考えれば、実質の価格では同等と見ても良いだろう。

さて、では何を比べるかといえば、エクステリア&インテリアを写真比較するわけで、走っての比較は今回行わない。何故かといえば、IS250も320iも、走りについては既に試乗記で何度も 取り上げているから、今更比較するのもワンパターンでつまらないであろう、という考えと、いくらBMWのエンジンが優秀といったって、排気量の差はどうにもならないし、BMWエンジンがスムースだといっても4気筒だから、V6のIS250に対して圧倒的なフィーリングの良さを発揮するということも有り得ない。というわけで、本気で2車を検討するユーザーはジックリと比較試乗してもらいたい。どちらも、本気モードで交渉すれば、恐らく高速道路を含む長時間の試乗や、2〜3日程度貸し出すモニター制度なんかも適用されるだろう。

それでは、早速比較をしよう。先ずはエクステリアから。
 


 


 

 

こうして比べてみると、3シリーズは結構真っ当なセダンの形をしているが、ISの場合は良く言えばスポーティだが、悪く言えば実用性を殺してまでスタイル重視の傾向があるようだ。

まあ、クルマのスタイルなんていうのは個人の好みだから、どちらが良いとは言えないが、ISもFスポーツの場合は決して悪くはないと思う。 しかし、キドニーグリルへの憧れがある場合には話は別で、この辺が新興ブランドであるレクサスの弱いところだ。
 


 

 

クルマのインテリアで一番目立つのは何といってもフロントシートの形状と表皮の材質だが、 Mスポーツはサイドにアルカンターラ、座面はブルーシャドークロスというファブリックの表皮を使用していて、これが実に独特の雰囲気を醸し出している。アルカンターラというのは日本の東レが開発した裏革風の人口皮革だが、人工という割りには結構高価で、下手な本皮よりも高価な素材だと も言われている。対するFスポーツはレクサス特異のセミアニリン本皮表皮を使っていて、座面には細かい通気穴を開けている。レスサスの本皮シートは国産車としては良く出来ているが、BMWのハイライン等に使われているブ厚い本皮に比べると、好みの問題もあるが、どうもイマイチに感じる 。まあ、これも好みの問題ではあるが。
 


 

ダッシュボードの眺めは、3シリーズが中段に水平なトリムを配することで、上部のディスプレイとメータークラスターという常時視線が向かう部分と、下部のセンタークラスターを2分している。これに対して、ISはダッシュボードに水平なトリムを持たないデザインで、センタークラスターが上部から一体になっている。と、言葉で説明すると何やら判り辛いので写真 を参照してもらおう。えっ?判り辛いのは、オマエの文章力が無いからだ、って?言ってくれますなぁ。
 


 

オーディオとエアコンの操作パネルは、オーソドックスで地味な3シリーズに対して、ISは光り物を配して華やかさを強調している。この手のデザインは、よく言えば近代的だが、一歩間違うと下品になってしまう。
 


 

ナビを主体としてディスプレイを使っての各種セッディングについては、3シリーズはBMWお得意のiDriveのコマンドダイヤルによる方法であるのに対して、ISはディスプレイの両脇に並んだボタンスイッチを使う。iDriveについては色々不満も聞くが、慣れれば結構使いやすい。最近はレクサスのライバルであるインフィニティ(国内では日産ブランド)も、やはりダイヤル方式を使用しているが、レクサスは未だに時代遅れの方法をとっている。それとも、BMWの真似なんて絶対にやらない、という強い意志が・・・・・ある訳がないが。
 


 

ドアのインナートリムは。3シリーズMスポーツの場合にはシート座面の表皮と同じクロスを貼ってあり、結構高級感がある。それに対して、IS Fスポーツはドア全体が樹脂の一体成形で、ハッキリ言って安っぽい。この部分に関しては明らかにISの負け。
 


 

BMWのメーターは今更言うまでも無い程にスポーツサルーンのスタンダード的なデザインとなっている。レクサスISも昨年秋のMCでフルスケールが従来の180km/hから260km/hとなり、視覚的にも違和感がなくなった。と、こんな事をいうと、180km/hでリミッターがかかるのに260km/hなんて無意味だ、という輩が出没するだろうが、そういう連中は無視!まあ、そういう奴らのクルマだって80km/h制限なのに140km/hまでの目盛があるじゃあないか、なんて言いたくなるよね。あれっ、今は高速だと100km/h制限になったんだっけ?
 


 

3シリーズのATセレクターは、MTのようなシフトノブと根元にはレザーのブーツ、そしてパターンは直線という最近では定番の方式を使用している。というか、このタイプはBMWが本家といってもいい。それに対してレクサスISはジグザグゲートという言ってみれば一時代前の方式を使用している。ジグザグ式を始めて見たのは今から35年ほど前にメルセデスW123に乗った時で、当時は物凄く感動したのを覚えている。そうは言っても、トヨタがジグザクゲートを採用したのはホンの数年前からだが。
 


 

ステアリングホイールはどちらもマニュアルシフトのパドル(黄色い↓)付きで似たような形式だが、リムに巻かれたレザーは3シリーズMスポーツの方が厚くてしなやか、そして通気穴も大きめだ。対してIS Fスポーツのレザーはどうもイマイチだが、シート表皮と同様で昔から大量の牛を食っている民族は、皮の使い方も上手いし素材も豊富だから、これは 稲作民族にとしては簡単には勝てそうも無い。
 


 

3シリーズのペダルはMスポーツといえども黒いゴムを被せた地味なものが付いている。この点ではアルミのスポーツペダルが標準で付いてくるIS Fスポーツに軍配が上がる。しかし、機能的には3シリーズのアクセルペダルがオルガン式であるのに対して、IS Fスポーツは吊り下げ式で、写真を見ると以前より随分短くなっている。要するに例のフロアマットに引っかかって暴走した事故の対策だろうか。まあ、これだけ短ければマットに引っかかる事はないだろうが、もしもMT(米国仕様には6MTがある)だったら、ヒール&トウは間違いなく出来ない。
 

以上、3シリーズMスポーツとIS Fスポーツを比較してみたが、やはり最終的に判断するのは金を出すユーザーということになる。と、言ってしまっては身も蓋もないので、以下に個人的な意見をまとめてみる。そう、あくまでも個人の意見ですから誤解なきように。

最初にディーラーと営業マンに関して
クルマを買うときにはディーラーを通じて購入し、その窓口は担当の営業マンであることは当然だが、まずはこの点を考えてみる。
レクサスやBMWに限らずクルマを選ぶ時には、クルマ自体の出来もあるが、実はディーラーや担当セールスマンの能力や相性というのも大きな要素になっている。実際に長年メルセデスに乗り続けているオーナーは長年付き合いのあるヤ○セのセールス マンから買うわけで、偶にはBMWにも乗りたい、なんていう気持ちもあるが、心情的にメルセデス以外は買うわけにいかない、という強い気綱を持つ例を良く耳にする。 しかし、これとは全く逆に、本当はメルセデスが大好きなのだが、偶々訪れたヤ○セの対応に対して大いに怒り、結局BMWを乗り継いでいる、という場合もある。どこのディーラーだって優秀な営業マンと共にトンデモ営業マンも居るわけで、それでも大都市圏のメルセデスやBMWのディーラーはそれ程酷くはないとは思うが・・・・。

レクサスのディーラーを何度か訪れてみると、実は輸入車ディーラーにはない良い部分があるのに気が付く。それは、どのディーラーでも対応が同じであることで、これはある程度のマニュアル化をされているのだろう。 そして担当セールスマンが不在な場合は、主に担当者の上司が出てきて対応することで、担当者がいないから判らないとか、担当者が不在だと全く相手にされないとか、輸入車ディーラーで偶に遭遇する状況が無いことだ。そして、何件かのレクサスディーラーを訪れてみたが、少なくともトンデモ営業マンに遭遇することは無かった。
更には、レクサスディーラーの豪華な建物も営業上は大いなる強みだし、キャビンアテンダント(誰だ、スッチーなんて言っているオヤジは)のような制服の綺麗なお姉さんが受付で対応してくれるのも嬉しい。

輸入車は壊れやすいか
外車は壊れるというのは過去の話しだし、壊れても平気なマニア向けというのも過去の話。なにしろ、街中を見回せば、ちょっとしたプチセレブのオバちゃんが運転する3シリーズなんてウジャウジャ見かけるのは誰も否定しないだろう。そして、これらのオバちゃんが、年がら年中故障 したり、マニアで無いと使いこなせないようなクルマに乗っているというのも有り得ない話だ。 そう、3シリーズは良く出来たファミリーカー。ただし、結構高級なファミリーカーだし、リニアな性能は運転し易さとアクティブセーフティの為と思えば、これもまた、ちょっと贅沢ということなる。

レクサスはボッタクリか?
外車はボッタクリだ、という話題は今更この場で論じる気はしないが、ボッタクリといえばレクサスも世間ではそのように言われている。確かに否定は出来ない面もあるが、前述のディーラーの建屋や営業マンの教育と人数、案内のお姉さん 、そして無料のメンテナンスプログラムなど、レクサスの付加価値というのもあるから、一般向けのクルマと同一価格では運営が出来なくなってしまう。言うならば、これらの付加価値にエクストラコストを払うことを理解しているユーザー向け、というのが本来の方針だったのだが、クルマとホテルは違ったようで、思うほどには成功していないようだ。 そして、この特定のユーザーがターゲットということが、レクサス発足当時に強調されたことで、一部の”庶民”から反感を買ったというのも、戦略としてはミスだったような気がする。 庶民を相手にしない、というのは既に何十年も前から、ヤ○セがやっていた事で、そのヤ○セも結局は商社の傘下になり、事実上別の会社で別の方針の元に営業している状況だから、富裕層向けのクルマ販売というのは難しいのだろうし、時代にそぐわないのかもしれない。

そんなことを踏まえても、IS250の辛いのは325iよりも100万円安い買い得車というよりも、アルテッツアよりも100万円高いボッタクリ車というように解釈されてしまうことだ。そして、動力性能では劣るとは言え、本物のBMW(320i)が同価格で買えてしまうということで、これが3シリーズ等のドイツ車ユーザーを獲得できないネックになっていると思う。 それなら、価格勝負に出るのはどうだろうか。4気筒2L塔載のIS200をベースグレードで300万円、Fスポーツで350万円だったら、売れるのではなかろうか? いや、それよりもレクサスは独自のメリット、たとえばトヨタの独壇場であるハイブリッド専用のレクサス車でも出した方が正解かもしれない。

と、これを書いている時に、レクサスのハイブリッド専用新型車、しかも初のCセグメント車で 、これまたレクサス初のハッチバックであるCT200hが発売された。プリウスと共通のコンポーネントを利用して、ボディを3ドアハッチバックとしたもので、価格はベースグレードで355万円とBMW120i(364万円)やアウディA3スポーツバック 1.8TFSI(359万円)とガチンコ勝負となる。ただし、BMWには116i(299万円)、アウディにはA3ス ポーツバック 1.4TFSI(309万円)という、300万円前後のモデルがあることを忘れてはならない。

レスサスやインフィニティは欧米ではベンツ・ビーエムより評価が上?
巷でよく言われているのが、レクサスISやインフィニティG(スカイライン)は欧米では3シリーズ以上に評価されている云々という件で、まあ完全否定はしないものの、この手の話しには大きな間違いがある。まず、国産高級車が評価されているのは欧米ではなく米国だということ。そして、その米国でも決して良い勝負をしている訳ではないこと。具体的に言えば、2010年1月〜11月までの米国での売り上げは
 BMW3シリーズ 90,843台
 レクサスIS 30,347台
 インフィニティG 51,070台
となり、ISは3シリーズに対して1/3しか売れていない。その面では3シリーズの60%くらいは売れているインフィニティG(スカイライン)の検討が光っているが、それでも売り上げでは差を付けられていることは認識し ておくべきだと思う。なお、他のドイツ車は
 MB Cクラス 53,861台
 アウディA4 31,159台
であり、偶然にもCクラスとインフィニティG、A4とISがそれぞれ良い勝負をしている。

要するに、日本車も米国ではそれなりに評価はされているが、未だ3シリーズの牙城には歯がたたない事と、それは日本車のみならず、MBやアウディでも言えることで、やはり3シリーズは偉大なる傑作車であることは否定できない。

今回は3シリーズとレクサスIS、特にFスポーツと詳しく比較してみたが、ISというクルマは結局は3シリーズの偽物路線だから、どう頑張っても本物を越えることは出来ない 、ということもまた事実だ。ところで、次期ISはストレッチしたFT-86シャーシーが使用されるようだ。 豊田社長の意向により、次期ISは現行モデルよりもルックスも性能もよりスポーティーとなるそうで、エンジンは4気筒2.5L自然吸気と3.6Lフラット6が使用されるという噂だ。スバルの色彩が色濃く出たフラット6塔載の次期ISなら、大いなる期待が出来るかもしれない。次期ISのデビューは2013年頃といわれているので、それまでジックリ待つのも手かもしれない。