BMW 325i M-Sports (2010/12) 前編 


首都圏の郊外を少し歩けば、行き交うクルマの中に必ず発見できるBMW3シリーズ。それも、その筈で、 3シリーズの月間登録台数は1000台をかるく超え、VWゴルフと輸入車No1の座を争っているという、輸入車の大ベストセラーとなっているくらいだ。その3シリーズの中でも現在のベストセラーは4気等2Lの320iだろうが、BMWといえばシルキーシックス、というユーザーからすれば、現行ラインナップで6気筒のベースグレードは325iとなる。E46時代には320iが6気筒、2.2Lだったが、現行のE90にFMCされた際に、従来は318i に相当するモデルに320iという名称を付けて、6気筒2.2Lは廃止されてしまった。しかし、325iは高いし、6気筒は欲しいという、E46時代の320iの購入層のためには中間のモデルが必要との判断か、同じ2.5Lエンジンをデチューンして323iと呼ぶモデルが追加された。結局、殆ど同じクルマをECUの制御プログラムのみ変更してパワーを下げて価格を安くする 、という商法は決して成功とはいえなかったようで、廃止時点では結構売れ残りが出てしまい、結局叩き売っていたようだ。この、デチューン商法は、米国でも3Lをデチューンして328iと呼ぶなどBMWの得意技のようで、 現行米国販売の3シリーズは全て3Lとなっている。
そんな状況で、今年の9月にMCされた2011モデルでは、何と325iが2.5Lではなく3Lのデチューンエンジンを搭載していた。そこで、今回は3Lになった325iに試乗してみた。

先ずは、2.5Lと3.0Lの新旧325iの比較と、現行でNA3Lを塔載する130iと528iについて、エンジン仕様を比較してみる。

    BMW 325i BMW 325i BMW 130i BMW 528i
      2011Model 2010Model    
 

車両型式

  LBA-PH25 ABA-VB25 ABA-UD30 DBA-USE20

エンジン・トランスミッション

エンジン型式

  N53B30A N52B25A N52B30A

エンジン種類

  I6 DOHC

総排気量(cm3)

2,996 2,496 2,996
 

最高出力(ps/rpm)

218/6,100 218/6,500 258/6,600

最大トルク(kg・m/rpm)

27.5/2,400-4,200 25.5/2,750-4,250 31.6/2,600-3,000

トランスミッション

6AT 6AT/6MT 8AT

備考

現行モデル

生産終了

現行モデル

現行モデル

上表の結果をみると、3Lとなった新325iが最高出力では同じ218psとなっているのは、3Lでも325iなのだからと強引に2.5Lに合わせたような気がする。それでも排気量の差は最大トルクに現れていて、3L版は2kg・m大きく、しかも発生回転数は350rpm低くなっている。130iと528iは何れもN52B30Aというエンジン型式で性能はどちらも全く同じ。それなのに 1シリーズは130iで5シリーズの場合は528iと呼ぶのは何故か?528iというからには3Lとしては多少デチューンしてあると思ったが、そんなことはなかった。これが、325iを328iと呼べなかった理由かもしれない。

なお、試乗車は人気のMスポーツパッケージ装着車だったことから、前半では3シリーズのベースモデルとMスポーツを写真で比較してみることにした。

先ずはエクステリアの比較をするが、フロントエンドはMスポーツの方が角ばっていて精悍な感じがするが、E46時代程にはノーマルとMスポーツの差はなくなった。E46の後期モデルでは、ノーマルモデルのバンパーがノメーっとしていて実にみっともなかった。その事が原因となり、多くのユーザーがMスポーツを購入していたのだが、それに比べれば現行車はノーマルモデルでも充分にスポーティだ。
 


写真1
フロントエンドはバンパーのエアインテイク形状が異なるが、以前程の大きな違いはなくなった。
強いて言えば、M-Sportsの方が角ばっていて精悍な感じがする程度だ。
 


写真2
リアからみたM-Sportsの特徴はリアバンパー下部がブラックアルトされていることだ。
エクステリアには”M”のロゴは一切無い。
 


写真3
この角度からだと大径ホイールとリアバンパー下端以外には大きな違いは無い。
 

ドアを開けると最初に見えるサイドスカットル上のプレートがMスポーツはクロームメッキに のロゴマークが見える(写真4-1)。このマークは。この部分以外にはステアリングホイールの下端に付いているだけだ。まあ、なんちゃってM3の場合は、リアのトランクリッドにも マークを貼るのが定番のようだが、流石にMだけで、 とは貼らないようだ。 ベースモデルの場合は控えめにBMWのエンブレムが一応付いている(写真4-2)。
室内の第一印象はサイドがアルカンターラで座面がブルーシャドークロスというMスポーツのシート表皮が醸し出す高級な雰囲気で、 特にアルカンターラが高級感の向上に役立っている。また、ドアのインナートリムもシート座面と共通のファブリックが使用されている。これに対してベースグレードは一般的なファブリックシートで、まあ決して悪くは無いのだが、Mスポーツ と比べると多少のチャチさは感じるから、好みによっては何が何でもベースグレードは嫌だというユーザーも居るだろう。

とろろで、試乗というのは昼間の明るいうちに済ませるのが一般的だが、そうなると暗くなって車内のイルミネーションを見ることが出来るのは購入した初日だったりする。初めてBMWを購入したユーザーが、初の夜間ドライブに出かけようとイグニッション をオンにして、車内の照明を点けた瞬間に輝くオレンジ色のイルミネーションは、実に都会的でお洒落な事を初めて知って感動する、という場面が想像できる。という訳で、今回は各種スイッチ付近の写真では、昼間の場合と、夕方になってイルミネーションが点灯された場合の両方を並べてみた。

写真 4-1
室内の最大の特徴はサイドの張り出しの大きいスポーツシートが装着されていることだ。
シルバーのサイドスカットルプレートには”M”のロゴがある。

写真 4-2
ベースグレードのシートはサイドの張り出しが穏やかなコンフォートタイプが装着されている。
サイドスカットルには控えめなBMWマークがある。


写真5-1
サイドおよび先端部がアルカンターラ、座面がブルーシャドークロスというファブリック表皮を使用している。先端部は前後調節出来るので、長身でも太ももをシッカリとサポートできる。
 

 


写真5-2
欧州車で一般的なファブリックの表皮。典型的日本人オヤジは、これをコンパクトカー用の安物だと思っている。

 


写真6
パワーウィンドウスイッチとパネルはベースグレードと共通していて、取り分けM-Sports専用ではない。
ドアのインナートリム材質はシート表皮と共通材質を使っているので、ベースグレードとは異なる。

 


写真7
ライトスイッチも全車共通で、M-Sports専用ではない。
 

 

次にフロントダッシュボートやセンタークラスラー、そしてコンソールなどを見回したが、ベースグレードとの大きな違いは見あたらない。しかし、よくよく見ると、シルバーのトリムが少し違うようだ。後ほどカタログで調べてみたら、ベースグレードは樹脂製にシルバー塗装(サテン・シルバー・マット)で、Mスポーツはアルミ製で縦横2方向にヘアラインを入れた、ファイン・カッティング・アルミと呼ばれるものが付いていた(写真12)。まあ、この違いは意識していても判別が難しい程だから、普段使う分には全く変わらないだろう。

オーディオやエアコンのコントロールパネルなどは全く同一だから、結局Mスポーツを選ぶ最大のメリットは、インテリアに関してはスポーツシートということになる。そのシートに座ってみると、ドイツ車=ガチガチに硬いという概念からすれば、以外にも柔らかく10〜20mm程沈み込む感じだが、そこから先はピシッと体を支えるし、僅かに沈んだ柔らかい部分が体の線に沿ってやんわり と支えるために、体の一部が浮き上がることなく体全体を面でサポートする。同じく体全体をサポートするレカロ系のシートとはまた違ったアプローチだが、これはこれで良く出来ている。以前からBMWはレカロ系とは違うアプローチのシートを使っているが、今回は更に一歩進んだようだ。
 

写真8
この写真ではM-Sportの特徴はステアリングホイール以外殆どない。
 


写真9
オーディオ&エアコンコントロールパネルも3シリーズ全車に共通している。
 

 


写真10
コンソール先端の蓋付きの灰皿。
 

 


写真11
ダッシュボード上のスタート/ストップスイッチ。

 

 


写真12
トリムは一見同じでも、M‐Sport用はアルミのヘアライン、ベースグレードはシルバー塗装の樹脂製となる。
 

 

この独特のシートに体を包み込まれて、ダッシュボード上にあるスタートボタンを押してエンジンを始動する。なお、スタートボタンの下には電子キーを差し込むスロットがあるが、国産車のように電子キーを所持するだけでもエンジンはスタートできるが、置き場所としてのスロットがあっても邪魔にはならないし、人によっては使いやすいと感じるだろう。

そして、いよいよ走り出すことになるが、この続きは後編にて。

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