VOLVO XC60 T6 SE AWD (2009/9) 前編 ⇒後編

      






ベースとなるV70の長さを縮めて背を高くしたのがXC60。ただし、SUVとしては低めだ。

トヨタカムリのプラットフォームを使って背の高いオフロードカーのようなボディを乗せたレクサスRXと廉価版の ハイランダー(日本名はクルーガー)の成功から世界的なブームになったSUVという分野のクルマは、最近のプレミアムブランドに も必ずラインナップされているようだ。 このブームの中でボルボにはXC90というSUVが存在するが、これはBMWでいえばX5に相当するクラスだった。そして今回、BMWでいえばX3に相当するワンサイズ下のXC60が発売された。XC60は今現在では3ℓターボのT6SEのみのワングレードで価格は599万円と、 最近のボルボらしく99円ショップ的な正札を付けている。

エクステリアはV70の全長をホイールベースごと詰めて背を高くしてたという感じで、最近のボルボのアイデンティティを上手く表現しているから、誰が見てもボルボだと判る。なお、ラジエターグリルのボルボマークは2010モデルから随分大きくなった(写真5)ようで、V70の2010モデルも同様のマークが付いていた。そして、リアに回って見ればルーフまで伸びるテールランプも 確かにボルボだが、ピラーは結構寝ているから実用的な積載容積という面ではボルボらしくない。
リアゲートを閉める時はゲート下端の電動スイッチを押すと(写真4)ウィーンとゆっくり下がってくる が、この動作は結構トロくて高級感が無い。電動式というがモーターでワイヤーを巻き上げているようで、なんだか頻繁に使ったら直ぐにぶっ壊れそうだし、保障期間が過ぎて故障したらべら棒な修理代を請求されそうだ。


写真1
ボルボワゴンと言えば垂直なテールゲートを想像するが、XC60は結構寝ている。

 


写真2
ウエストラインは後方に向かって大きくキックアップしている。V70に比べてホイールベースごと縮められている。

 


写真3
外観寸法の割には意外と狭いラッゲージスペース。特に幅方向が狭い。

 


写真4
リアゲート下端にある電動クローズのスイッチ。

 


写真5
2010年モデルからはボルボマークが大きくなった。

 


写真6
ヘッドランプはバイキセノン、スモールランプはLEDタイプが標準となる。

 

20年程前に見たボルボの室内は確かに北欧家具を彷彿させる出来だったが、フォード傘下となったここ10年程は見ただけで質感の落ちた内装や座るとツルツル滑る チャチなレザーシート等、安物路線まっしぐらだったが、日本では2007年から販売されている現行V70では大分改善されてきた。そして今回のXC60では20年前の 760とは言わないまでも、これなら充分に許されるという程度までは改善されていた。
少し前のオフロード4WD車といえば、まるでトラックのように運転席によじ登ったものだが、最近のSUVという奴はチョッと高めの乗用車という感じで、シートに座ることが出来る。シートの座り心地は中々良いし、座面にシボのハッキリした厚めのレザーを使い、サイドはよりなめした軟らかくてシボの少ないレザーという使い分け をしている(写真10)。

センタークラスターは最近のボルボのイメージどおりのものだが、BMWのように多少ドライバーの方に向いているし、上部にはナビが標準で装着されている。ボルボといえばS40/V50、 それどころかV70でさえ今時ナビの装着を全く考えていないような設計をしているのに唖然としたものがが、XC60はやっと他社並みとなったようだ。
エンジンの始動はダッシュボードのナビの左にあるスロットに電子キーを差し込んでから、その上にある小さなスタートボタンを押す(写真14)。スタートボタンといえば丸くて大きいのが普通だが、XC60は何故か小さいので知らないと何処にスタートボタンがあるのか判らない(写真14)。XC60は今のところ直6、3ℓターボのみの設定だから、アイドリングも十分に静かだし振動も感じない。まあ、如何考えてもバランスの悪い5気筒と比べてはいけないが。


写真7
リアは十分なスペースがあるから少なくとも大人2名の長距離ドライブは充分い可能だ。ボルボ自慢のサンルーフはオプション。

 


写真8
シートの背もたれの張り出しは大きくて見るからに座り心地が良さそうだ。実際に座っても悪くない。

 

写真9
センタークラスターはBMWのようにドライバー側を向いていて、ボルボとしては初めてナビを標準で組込んでいる。


写真10
シボの違いに着目すると座面とサイドでレザーという使い分けている。ステッチもハッキリしていて、昔の良き時代に少し近づいた。

 


写真11
ドアの内張りのフェイクレザーはシボの目が大きく、ちょっとカローラチックなのがイマイチだが、他の部分は結構高級感がある。

 


写真12
シート側面の調整スイッチとメモリーボタンはオーソドックスなタイプを使用してる。

 


写真13
ボルボ独特の人体を模したエアコン調整スイッチは如何にも人と環境に優しそうに見える。こういうイメージ造りが実に上手い。

 

写真14
エンジン始動は電子キーを差し込んで上部のスタートボタン(黄↓)を押す。このボタンはやけに小さい。

写真15
ステアリングコラムからみて右側のダッシュボードにはライトおよびリアゲートと給油口のスイッチがある。給油口はドイツ車のように車両キーと連動では無いようだ。
その下はパーキングブレーキスイッチ。

ブレーキペダルを踏みながらダッシュボード右側下部にあるスイッチ(写真15)を引くと、パーキングブレーキが解除される。ATセレクターは極オーソドックスなティプトロタイプ (写真18)だから何の違和感も無くDレンジに入れる。駐車場から隣接する国道に 出ると、3ℓターボは低回転域から充分なトルクを持っていて、ちょっと右足を踏み込めば走り出した瞬間からグイグイと加速する。6速ATのレスポンスも結構良くて、例えば いつもの一級国道バイパスで左折車がいたために30km/h程度まで減速して、その後スロットルペダルを2/3程踏み込むと充分に短いタイムラグでシフトダウンをして、全幅1.9m、車両重量1930kgの車体をグイグイと加速する。 フル加速時のエンジン音は結構勇ましいが音の質感はあまり良くないし、6気筒だけあってスムースではあるが、BMWの6気筒と比べるとガサツでフィーリングも良くない。とはいってもV70やV50でお馴染みの直列5気筒エンジンと比べたら、そのスムースさには雲泥の差がある。


写真16
メーターはV70と共通。このエンジンで7,000rpmのレッドゾーンはチョッとラテン的だ。

 


写真17
ペダルは左に寄っている。アクセルペダルは欧州車には珍しく吊り下げ式。

 


写真18
ATセレクターはオーソドックスなティプトロタイプのパターンを持つ。

 


写真19
最近のボルボの特徴であるフローティングパネルのセンタークラスター。

 

ATセレクターを左に倒すとSモードとなるが、このモードは明らかに回転数が上がるという訳でもなく、元々低域から十分なトルクがあるだけに殆ど意味を成さないし、使うことも無さそうだ。このSモードからセレクターを前に押すとアップ、手前に引くとダウンとなるのは現行のBMWとは反対で、ポルシェのティプトロやPDKと同じ方向だ。

⇒後編