NISSAN FUGA 370GT & 370GT Type S (2009/11) 前編 ⇒後編


一見キープコンセプトのエクステリアは良く見ると随分マッチョになった。(写真はType S)
 

ニッサンフーガが2代目へとFMCされた。初代フーガはニッサンの伝統的な高級車であったセドリック/グロリアの後継車として2004年に発売された。その一年前の2003年にはライバルであるクラウンがプラットフォームを完全に一新してゼロクラウンと謳って大々的にアピールしたが、車名自体はクラウンを引き継いだのに対して、ニッサンは伝統の セドリック/グロリアという車名をあっさり捨ててしまった。ゼロクラウンもフーガも、それ以前の幅狭で腰高、小さいホイールとブレーキ容量、性能の悪いサスペンション等 の日本的な高級車とは一線を画した新規設計により、従来の日本的高級車から世界基準(というか、ドイツ車基準?)のEセグメントカーに変身することとなった。事実、ゼロクラウンやフーガはそれまで如何にもならないくらいに勝ち目の無かった欧州車(特にドイツ車)との差を大いに縮めることになり、いまやフィーリング等を別とすればクルマの性能自体はクラウン・フーガとEクラス・5シリーズの間には、以前ほどの決定的な差は無くなるまでになってきた。

先代(初代)フーガの目標は旧5シリーズ(E39)であることは ニッサン自身が公言していたことで、実際に乗ってみても従来の国産車とは大いに異なる欧州車的乗り味は、確かにE39に近いものが感じられたから、今回はどのように進歩したのかが楽しみだ。という訳で、今回は新型フーガのベースグレードである350GTとスポーツ系で足回りを強化して20インチホール&タイヤを標準装備し、マニュアルモード用にF1タイプのパドルスイッチの追加などを行った TypeSの2グレードについて試乗した。


写真1
フロント以上にグラマーなリアの眺めは、人によっては嫌うだろう。このクルマは本来米国向けインフィニティMで、国内では”ついで”に売っているのだ。

 


写真2
トランクルームはこの手の高級車のお約束であるゴルフバッグ4セット搭載を当然ながらクリアしている。
(写真は2セットを積んだ状態)

 


写真3
370GTのフロントエンド。

 


写真4
370GT TypeSのフロントエンドはバンバーのエアインテイク形状が異なる。スポーツモデルに対する、この手法は世界的なものだ。

 

先ずは370GT(ベースグレード)のドアを開けると、そこに見えたのは昔のクラウンやマークUも真っ青の短い毛足の安物モケットのシート表皮(写真7)や内装材で、今時何ともオヤジ趣味の設定をしたものだ。先代で も質感はイマイチだったが 少なくともオヤジ趣味では無かったのに、これほどの退歩をするとは・・・・・。 やはり日本の高級車は、この安物モケットでないと売れないのだろうか。まあ、これも趣味の問題だから欧州調の荒く織ったファブリックを誰もが好むわけでも無いのは当然なのだが。そして、 座り心地はというと軟いウレタンの癖に体全体をサポートしないという、表皮の見かけにピッタリの”演歌調”シートだった。これでは昔の日本車じゃあないか。

と嘆いてみたが、その後に調べてみたら、この内装はオプションのベージュインテリアを選んだ時のみ、布シートの材質がダブルラッセルの座面とスエード調トリコットのサイドサポートになることが判明した。そして標準 のブラックインテリアでは、シート表皮は座面がジャガード織りでサイドがネオソフィールという合成皮革となり、これは先代フーガでも御なじみのものだった。 先代の場合はサイドの合成皮革がイマイチの質感だったが、今度の新型は如何だろうか?それでもスエード調よりはマシだろう。それにしても、モーターショーやニッサンギャラリーの展示、そしてディーラーの展示でも、販売台数からは一番多そうな内装 (ファブリックのブラックインテリア)を直接見られないのは如何したものだろうか??

次に370GT TypeSの試乗車はオプションのレザーシート(それも上級のセミアニリン、写真8)が装着されていた。今度のフーガのレザーシートは3種類あり、一番高級なのが370 VIP(562.76万円)に標準装備され、他グレードにはオプション(プレミアムインテリアパッケージ45.15万円)となるセミアニリン本皮シートだ。 その次に本皮パッケージ24.15万円で装着されるレザーシートで、これにはTypeS用のスポーツタイプとその他のコンフォートタイプの2種類がある。なお、最廉価グレードの250GT Aパッケージ(399万円)に本皮シートは装着できない。このグレードは250GT(427.35万円)からドライビングポジションメモリーシステムと助手席パワーオットマン機構というくだらない機能を取っ払ったもの で、買い得感は一番高い。

スエード調シートで行き成りズッコケてしまったが、ブラックインテリアのフーガの内装自体は決して悪くない。というよりも、先代に比べて大いに質感がアップしている。たとえば、ドアのオープン用レバーやATセレクターのベースプレートなどに使われている艶消しクロームなどは、ポルシェパナメーラに 使われているものに比べても大きく見劣りがしない程だ。 また、メーターフードやドア側のアームレストなどは人口皮革とはいえ、シッカリとステッチも入っていて実に高級感がある。またダッシュボードを指で押すと大きく凹むから、これは弾性樹脂ではな くウレタンなどを挟んで表皮を貼ったようだ。内装パネル(トリム)については370GT TypeSの試乗車にはオプションの本物ウッド (写真13)が使われていたが、本来は370 VIP意外はフェイクウッド(写真9)となる。 この木目”調”はニッサンとしては中々の出来だが、これは寧ろ艶消しクロームも設定してもらいたい。これは 最近の欧州車でも結構トレンドになっているから、 TypeSのようにスポーティーを謳うモデルには木目よりも合っていると思うのだが。  


写真55
リアのスペースは充分に確保されていて、このクルマがショーファードリブンでも使われることを考慮している。

 


写真6
写真はTypeSにオプションのレザーシートを装着したもの。(試乗車とは別のクルマ)

 


写真7
370GT(ベースグレード)の試乗車はオプションのベージュインテリア装着の為に、シート表皮はスエード調トリコットだった。しっかし、オヤジ臭〜い。

 


写真88
370GTタイプSの試乗車にはオプションのセミアニリン本皮シートが装着されていた。

 

写真9
先代に比べて大きく質感がアップしたインテリア。写真はTypeSで光り輝くウッドパネルは実はフェイクの木目”調”。


写真10
先代では特徴的な水平のナビの操作パネルは、新型ではより垂直に立っている。アナログ時計を組み込むのはニッサンの高級車の伝統か。

 


写真11
ドアハンドル付近の艶消しクロームの質感や、ドアアームレストに貼られたステッチ入のフェイクレザーと軟らかいパッドの触り心地など、高級車としての質感は中々良い。

 

内装も一通り見回したことで、いよいよエンジンを始動して走り出すことにする。
この続きは後編にて。

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