BMW New(F10) 535i (2010/5) 前編 ⇒後編

   

アッパーミドルクラスとか、欧州Eセグメントなどと呼ばれるクラスで定番のメルセデスEクラスと共に、今や人気と二分するBMW5シリーズがFMCされた。昨年FMCされた7シリーズの開発コードはF01だったが、今回の5シリーズはF10で、 BMWの開発コードは以前から使われていたE○○からF○○になったようだ。そして5シリーズの先代はE60 (写真4)で、日本での発売は2003年8月だったから約7年ぶりとなる。そのまた前は1996年6月に国内発売されたE39 (写真2)だから、モデルサイクルはやはり7年となっていた。
これに対して、ライバルであるメルセデスEクラスの現行モデルは2009年5月に国内発売されたW212で、今回のBMWより一年先行している。先代W211の日本発売は2002年6月だから、こちらも7年ぶりだし、その前のW210は1995年10月の国内発売だから、 やはり約7年サイクルだったことになる。

5シリーズが先々代のE39から先代E60に進化した7年前には、その大胆な変化に話題騒然だった。何しろE39とE60を比べれはマルで方針が変わってしまい、E39は一気に旧型感満点となったから、成熟を求めてE39の末期モデルを購入したオーナーにしてみれば複雑な思いだったろう。それに比べれば今回のFMCはキープコンセプトで、2台並べれは違いはあるものの、 特にBMWに詳しくない人が別々に見れば、新旧の区別が一目ではつかないくらいの違いに見えるのではないか。 そしてよく見てみると、E39の面影もある。E60とE39を足して2で割ったといえば言いすぎだが、そういう傾向はある。

外観上で気が付くのはF10のワイパーが右(RHD)専用となったことだ。E60ではRHDでもLHDと共通だったため、アンチ輸入車派からは手抜きだの何のと叩かれていた。実はE60の場合、ワイパーは凝った作りの特殊なリンクにより反対側の吹き残しも殆ど無いために共用が可能だったのだが、これを非難する連中は普通の安物ワイパーの経験から判断していたわけだ(写真6)。そういう意味では今回の処置によって、素人見には手抜きを止めたように見えるが、恐らく実際にはコストダウンになっているだろう。若しかして、アホな日本人には手をかけても無駄だとばかりに、LHDでは特殊リンクのワイパーを継続して使用しているか 、と思ってカタログやネットで調べてみたが、欧州用でも一般的なリンクに変更されてしまったようだ。
 


写真1
3代前のE34(1988年6月〜)。
同時期のメルセデスは不滅の名作W124の時代で、世間ではE34はワンランク下との見方をされていた。

 


写真2
先々代のE39(1996年6月〜)。
ジェントル過ぎて人気がなかった。

 


写真3
アグレッシブだったE60に比べて、リアビューもより大人しくなった。

 


写真4
先代のE60(2003年8月〜)。
BMWが先鞭をつけたアグレッシブな鷹の目スタイルのヘッドライトは、その後他社が追従しトレンドとなった。

 


写真5
トランクは相変わらず幅方向にサスが出っ張り、外寸の割りには広くない。

 


写真6
凝ったリンク機構により、ハンドル位置に関わらず共通だったE60のワイパーと、”普通のワイパー”をRHD専用で装着したF10。

 


写真7
一見してキープコンセプトで、別々に見れば大きな違いは無さそうだが、サイドから見るとキャビンがより長くなっている。
E60に対して80mmも延長されたF10のホイールベースのお陰で、リアドアはより大きくなった。

ドアを開けようとドアグリップを見ると、水平にメッキのアクセントが入っていた。「だから、どうした」という事はないのだが、フェンダーサイドのマーカーランプと共にサイドに光り物をあしらったのは、単なるデザイン上のアクセントだが(写真6) 、以前のBMWには無い傾向だ。この多少光り物の入ったドアグリップを引いてドアを開けると、目に入った景色もBMWとしてのキープコンセプトだった。パワーシートの調整用スイッチもBMWらしく何の表示もなく、見れば判るだろうというか、どうせ座ったらば見えないのだから表示は付けないのか、何れにしても何時ものBMWどおりだが、 唯一シート調整スイッチの下端には、これまた光物がついていた(写真9)。

535iのシート表皮は先代E60に比べると同じダコタレザーとはいうものの、E60が独特の皺の寄ったレザーの張り方だったのとは違い、ピチッと平らに張ってある。またレザーのシボも少し浅く、よりなめしたように見えた。そして座ってみると、E60が多少柔らかめだったのに比べて、より硬 い座面となっている。これは明らかに方針を変えたのは判るが、どちらが良いかといえば何とも言えない。何れも出来が良いので、慣れればどちらでも良いような気がする。 シートに関しては相変わらず欧州車が進んでいるのは、生活の歴史からいっても仕方がないだろうが、何とかならない物だろうか。そう言えば、流石に国産車絶対派でも日本車のシートの方が良いと言っていないようだ。いや若しかしたら、そういう輩もいるのかもしれない?

さて、シートに座って大きなドアを軽く引くと、重々しく、それでいてスムースに引き寄せられて、ズシンと重厚に閉まる・・・・・・・筈なのだが、あれっ、大きい割には軽々しくてオマケにちゃんと閉まらずに半ドア!
いや、まてよ。これは半ドアではなく、一瞬後に静かにロックされる・・・・ことも無い。後ほどカタログで調べたらソフト・クローズ・ドアという機能は550iのみ標準で、試乗した535iにはオプションだった。F10のサイドパネルはリアクォーターパネルを除 き、言い代えればフロントファンダーと前後ドアはアルミ製となった。アルミのドアだから当然軽いし、重厚には閉まらないし、力が弱いと半ドアにもなる。 アルミのドアが重厚感がないのは20年ほど前にオフロードのロールスロイスといわれるレンジローバーに乗ったときに、アルミ製ドアの安っぽいフィーリングに唖然としてのを思い出す。 まあ、慣れれば力を入れてドアを閉めるようになるだろうし、それが嫌ならばオプションでソフト・クローズ・ドアを付けるのがお勧めか。

室内は確かにE60と並べて比較をすれば全く違うのだろうが、F10のみを見れば、その雰囲気は明らかにBMWそのものに見える。センタークラスターのオーディオやエアコンのコントロールパネルも確かに全く新しいデザインなのだが、不思議に共通感がある(写真14 、15)。 現在発売されている528i、535i、550iの3グレードともレザーシートが標準で、今のところファブリックシートのモデルは無い。したがってハイラインというグレードも無い。 そしてまた、BMWといえばMスポーツパッケージ(以下Mスポ)というくらいに人気のパッケージ装着車も今のところはない。元々、5シリーズのMスポというのは、何チャってM5的なグレードだったから、近い将来にF10のM5が発売されれば、そのイメージのMスポが発売されるのだろう。

F10のホイールベースはE60に対して80mmも延長されているから、当然リアの足元スペースは広いが、その数値ほどには広くないのは、少し前に発売された 5シリーズ グランツリスモの後席が圧倒的に広い事により、どうしても比べてしまう事が原因かもしれない。
その他の室内の状況は以下の写真とキャプションを参照願いたい。
 


写真8
ドアグリップにはメッキのアクセントが(写真上)
そしてフェンダーのサイドマーカーランプもチョッと派手なメッキとなった。

 


写真9
BMWの定石通りに一切説明書きの無いスイッチ類。珍しくスイッチ下端にクロームのアクセントが入っている。

 


写真10
WBが80mm延長された割には、リアの足元のスペースは決して広いとは言えない。少し前に発売された5シリーズGTの圧倒的広さには敵わない。

 


写真11
サルーンらしく高めの着座位置はE60譲りだ。

 


写真12
E60と違って皺がなくピッチリと貼られたレザーは、表皮のシボも浅いような気がする。

 


写真13
800万円超のクルマだけあって、内装も高級感があるが 500万円のフーガだって結構良い。

 

写真14
先代E60に対してデザインの変更はあるものの、基本的な雰囲気やコンセプトは変わらない新型のインテリア。
E60オーナーなら全く違和感がない。


写真15
E60に対してデザインは全く変わったが雰囲気は変わらないオーディ&エアコンパネル。

 


写真16
ダッシュボード右端のライトスイッチも相変わらずの回転式で、これもBMWオーナーならお馴染みのもの。

 


写真17
初期のポリシーを捨て周辺にスイッチを並べた最近の
iDriveの定石に従っている。

 


写真18
こういう部分は先代と大きく変わらない。

 

そしていよいよ走り出すことになるのだが、この続きは後編にて。  

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