HONDA CR-Z α 6MT (2010/4) 前編 ⇒後編


2代目CR−X(EF)のイメージを現代に表現したスタイルは、直線的なEFに比べて全体に丸みを帯びている。
 

1983年、ホンダシビックの姉妹車であるバラードの派生車種として誕生したファストバッククーペが初代CR−Xで、キャッチフレーズは「FFライトウェイトスポーツ」。バリエーションとしては1.3ℓ SOHC CVCCのEV型、1.5ℓ SOHC CVCCのEW型、そして1.6ℓ DOHCのZC型の3種類 だった。

2代目は1987年発売のEF型で、キャッチフレーズは「サイバー・スポーツ」。初代に比べてワイドアンドローとなり、エンジンは1.5ℓ SOHC 105psと1.6ℓ DOHC 160psのSiRという2種類のバリエーションを持っていた。中でもSiRはリッター当たり100psのハイチューンエンジンとフロントの大径ブレーキ、そしてMTのみの設定などにより、当時のジムカーナでは無敵の存在を誇っていた。
3代目は1992年に発売されたが、タルガトップというコンセプトで車名もCR−X Delsolとなり、軽量高性能の先代とは全く異なるクルマへと進化してしまった。
今回話題のCR−Zは、正に2代目CR−X(EF)のコンセプトを現代に再現し、しかも時代の先端を行くハイブリッド車として発売されたのはご存知のとおりだ。そして、当サイトでも既にCVT 搭載車について速報版として簡易試乗記で発表済だが、今回は本命の6MT車に試乗できたことから、詳細な紹介をしてみようと思う。内容的には一部簡易試乗記と重複するが、読みやすさを考えて本試乗記単独での完結とした。

エクステリアはCR−Xのイメージを現代風にアレンジしたもので下の写真1〜2を見れば一目瞭然だろう。こういう時にメーカーの歴史というものが生きてくる訳で、韓国車が幾ら頑張ってもこの手のコンセプトでは勝負できないし、そのホンダもメルセデス(例えばSL−R)にはチョッと敵わないのも頷ける。
CR−Xはスタイルという点では実にスポーティに感じるのは幅の割りに高さが低いプロポーションが効いているのは間違いない。例えばライバルである アルファロメオ ミトと比べると幅は20mm広く、高さは85mmも低い。確かに並べて比べると、ミトはコロっとユーモラスではあるが、カッコ良いかというと疑問がある。
CR−ZのCD値は0.30とインサイトの0.28には及ばないが、これはCD値を多少犠牲にしてもスポーティーなスタイルを優先したためだろう。なお、プリウスはLグレードの場合、何と0.25という驚異的な数値を達成している。あれっ?そういえば、 どこかのHVもCD=0.25といっているようだが?
 


写真1
リアウィンドウは水平近く寝ているため、視界確保にテールエンド上部はガラスとなっているのはインサイトと同様で、今やHVでは定番となりつつある。

 


写真1-B
2代目CR−X(EF)。確かにCR−Zは似ている。  

 


写真2
短い全長と前後オーバーハングを詰めて目一杯長くとったホイールベース。往年のCR−X(EF)のイメージをシッカリ受け継いでいる。

 


写真2−B
2代目CR−X(EF)。流石にCR−Zと比べると時代を感じる。

 


写真3
空気抵抗が少なそうな、お洒落なデザインのドアノブ。

 


写真4
リアのラッゲージスペースは思ったよりは広いが位置が高いのはHVの宿命か。

 

ドアノブは最近流行のグリップ式ではなく、かといって以前からある引き手でもなく、一寸凝ったというか、おしゃれなデザインを採用している(写真3)。 ただし、コンセプトとしては フェアレディZが以前から採用しているタイプ と同類でもある。そのノブを引いてドアを開けてみると、ホールドの良さそうなシートを始めとして、一見しただけなら価格に対して充分な質感を持ったインテリアが見える。
フロントシートのバックレストを前に倒して後席を覗いて見ると、そのスペースは完全な+2でドライバーが175cm級以上でフロントシートを少し下げたら、後席は足を置くスペースが殆ど無くなる(写真5)。 これでは小学生でも上級生だとチョッと無理かもしれない。まあ、ここは手荷物や脱いだコートの置き場と割り切るしかないが、リアシートはグレーのフロントシートと異なり内装と同じ黒一色の表皮で覆ってあり、荷物置き場を強調しているのかも知らない。
標準のフロントシートの表皮は欧州車的なファブリック(写真7)で、このクルマの性格からして合っているし、無理してオプションのレザーシート (約19万円)を装着することも無さそうだ。 いよいよシートに座ってみると、適度に柔らさを感じるがシッカリしていて、見かけどおりに座り心地も結構良い。とはいってもレカロに代表される硬い座面にも関わらす必要な部分は確実に凹んで体をサポートする、というほどに出来が言い訳で もない。 今回は前回のCVTに比べたら乗った時間は長かったが腰の疲れなどは全く感じられなかった。着座位置は最近高めになった一般的な乗用車よりは低いが、 マツダロードスターのように並のクルマとは異次元の低さを感じる程ではない。 まあ、乗用車ベースのクルマだから、この辺が限界なのかもしれない。
 


写真5
リアスペースは特に前後方向が狭い。手荷物置き場と割り切りが必要。
 

 


写真6
着座位置は適度に低く、シートのホールドも中々良いが、 マツダロードスター程には低くない

 


写真7
シート表皮も欧州調のファブリック。オプションでレザーシートもあるが、このクルマには似合わない。

 


写真8
金属質のドアハンドルは樹脂にメタル蒸着のフィルムを真空圧着したもの。

 

ダッシュボードを見回すと、ステアリングコラムの左右に多くのスイッチを集中させているのが判る。左側はエアコン関連で、右側には走行モード切替スイッチを主として、これにミラー調整などのスイッチ類 があり、どちらもステアリングコラムと同様の高い位置にあるから、走行中の操作でも視線移動が最小限となり、実に使い易い(写真10)。 このためセンタークラスターの部分は上端にディスプレイがある以外は、事実上何も無い。
CR−Zの内装での目玉はメタル蒸着フィルムを樹脂に圧着した金属質を感じるドアハンドルで、確かに独特の質感はあるが大騒ぎする程かといえば、さて ・・・・(写真8)。そして、冷静になってダッシュボードを見てみれば、シボはワザとらしいし質感もプラスチッキーだ (写真11)。

CVT搭載車との大きな違いはシフトレバーと3つのペダルは当然として、それ以外に大きな相違は見当たらなかった。
 

写真9
内装色は写真のグレー/ブラックのコンビのみで他のカラーは無い。
CVTとの大きな違いはシフトレバーと3つのペダルのみ。

写真10
センタークラスターにはスイッチは無く、ステアリングホイールの左に空調、右に走行モードやミラーの調整スイッチなどが配置されている。
オーディオはナビと共通で、ナビなしはディスプレイの位置にオーディオユニットが取り付けられる。

写真11
ダッシュボードの質感はプラスチッキーで、シボもわざとらしい。MarkXの高級感に比べたら、その違いに唖然とする。
この辺はホンダもマダマダ研究の余地がある。

イグニッションをオンにするにはクラッチを踏んだままステアリングコラム右側面のスイッチを右に捻る。エンジンが冷えていた試乗車は極普通にエンジンが始動してアイドリングをしている。この始動方法自体は一般的なMT車そのものだが、クラッチを踏んだ瞬間に妙に踏力が軽いのに気が付く。

そしていよいよ走り出すことになるのだが、この続きは後編にて。  

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