1970年にデビューしたトヨタセリカは背の高いセダンが主流だった当時としては、例外的にスポーティーなクーペスタイルで登場した。しかも米国のフォードマスタングに端を発したスペシャルティーカーのコンセプトを真っ先に日本で展開した車種でもあった。そして何よりの話題は、各部の仕様がユーザーの好みで自由に選べるフルチョイスシステムと呼ぶオーダーで注文するという、当時としては実に画期的なシステムを採用していた。
セリカのエンジンは1400-OHV
が1種類、1600-OHVがシングルキャブとスポーティ版のツインキャブ、合計3種類からフルチョイスで選択できる。そして最上級モデルはヤマハ製の2T-G型1.6ℓ DOHCを搭載する1600GTで、このモデルのみフルチョイスシステムが適用されなかった。
この2T-Gエンジンは、ダブルチョークソレックスキャブレター2基を備えて115psの最高出力を発生し、しかもミッションは、これまたマニア心をくすぐる5速MT。その後カリーナGTや初代レビン/トレノ(TE27)にも搭載され、トヨタのスポーツエンジンの定番ともなったのは今更言うまでもない。
セリカ1600GTの87.5万円という価格は当時の1.6ℓ級DOHC車としては破格の安値で、例えば同じトヨタの先輩に当たるトヨタ1600GT5の100万円やギャランGTO−MRの112.5万円に比べると買い得感は抜群だった。
しかし、セリカに対するマニア層の評価は必ずしも高くはなかったと記憶している。スペシャルティーカーといえば響きは良いが、裏を返せば見かけ重視のカッコだけのクルマというイメージにも繋がる。実を言えば、当時は
B_Otaku
もセリカ1600GTを、どらかといえば馬鹿にしていた。このクルマのドライバーは、見かけに惚れた軟弱ユーザー向けで、DOHCもソレックスキャブも宝の持ち腐れ・・・・というのが、セリカ1600GTのイメージだったように覚えている。
ただし、1600GTはセリカの中では少数派で、殆どはSHCの1.6ℓ版だった。
セリカ1600GTはその後、豪華装備を外したスパルタンなGTVを追加したり、後にはリフトバックモデルを追加したりと、成功街道をまっしぐらに進んで、今日のトヨタの繁栄に大きく寄与した。
特に、セリカの弱点でもあり、これが元でダルマセリカなどと呼ばれていたリヤビューが、見違えるようにカッコ良くなったリフトバックは当然ながら大いなる人気を獲得した。 |