韓国では、半導体産業を牽引していくべき人材の離脱が加速化していて、大学志願者の医学部集中現象の影響で半導体学科の学部生の中退が増加しているのに続き、大学院でも半導体専攻の学生たちが学位過程の途中で退学するケースが相次いでいる、というのだ。
韓国の半導体専攻の大学院生ならば、サムスン電子やSKハイニックス等の大企業への就職が約束されたも同然というのに、最近中退する学生が増えていて、その理由は医学部人気の高まりが主な原因らしい。
大学院自主退学者の80%強が首都圏の大学院生であり、医学部進学が可能な難関大学の大学院生の退学が多いという。また、大学院のみならず学部生も同様で、そもそも就職条件の良い理工系人気は高かったが、最近は医学部志向が強まるにつれて、一部の大学では入試で定員割れが起きているほか、自主退学を選ぶ学生も増えている、とか。
これでは、韓国の半導体企業を担う次世代の人材が集まらない事になり、これは業界もとって大いなるマイナスとなる。
また、大学の半導体学科に合格しても入学手続きをしない受験生も多く、これらは同時に医学部にも合格している場合が多いらしい。要するに、半導体学科は医学部の「滑り止め」になってしまったのだった。
医学部への転身以外にも、やっとの事で卒業に漕ぎ着けた貴重な半導体技術者が、卒業と同時にTSMCを始めとする海外企業に就職する例も増えていて、特にTMSCが日本に建設中の新工場に投入するエンジニアとしての採用が多いと言われている。
今や韓国を支える産業となった半導体だが、優秀な学生達はサムスン電子やSKハイニックスという韓国の半導体大手企業の凋落を、鋭く察しているのだろう。
ところで、優秀な受験生による医学部人気というのは日本でも同様の傾向がある。噂では、地方国公立医大の難易度は東大の理科1類と同等とも言われている。日本の産業のトップを牽引する筈の高級エンジニアの素材が、皆医師になってしまったら、日本の産業はどうなるのだろうか。
しかし、この東大理1同等という話は、東京科学大(旧東京医科歯科大)、千葉大、筑波大などの場合で、地方の国公立医大は流石に理1並みではないらしい。実は医学部というのは「職業訓練校」の超高度なやつで、事実、戦前の医学校の多くは通称「医専」とよばれた医学専門学校だった。また、女性医師の養成も積極的だったようで、女子医専というのが全国の点在していた。
現在の東京女子医大は「東京女子医専」だったし、今は共学だが東邦大学医学部は「帝国女子医専」だった。
同様にパイロットも、やっている事はバズの運転手の超高度なヤツであり、最近一部で見受ける大学のパイロット養成学科も、これまたハイレベルな職業訓練校だ。要するに「大学」は本来研究者を養成する機関だったのが、いつの間にか一部の超難関大学以外は研究者になる学生なんていないのが現状で、特に私立文系なんていうのはセールスマン養成機関ともいえるものだ。
そういう意味では、医科大などが本当の「専門職大学」の筈だが、現実には専門学校と同様な全入「Fラン」大学になってしまっている。