イラン革命防衛隊のサイバー部門はどのような手法でSNS工作や情報戦を行っているのか


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イラン革命防衛隊(IRGC)のサイバー部隊および関連するハッカー集団(セキュリティ業界で「Charming Kitten」や「APT35」などと呼ばれる組織)は、単なるネットワーク侵入にとどまらず、ハッキング技術とSNS上の心理戦を融合させた「サイバー影響工作(Cyber-Enabled Influence Operations)」を展開している。

各国の諜報機関やサイバーセキュリティ企業の分析に基づき、IRGCが用いる主な手法と戦術を以下に整理する。

1. 偽ペルソナとボットネットワークの長期運用
SNS工作の基盤として、実在の人物の写真を盗用したりAIで生成したりして、架空のジャーナリスト、人権活動家、シンクタンク研究員などの「偽ペルソナ(人格)」を精巧に作り上げる。

• 信頼の構築:すぐに政治的な発信はせず、数ヶ月から数年かけてターゲット(政治家、実際のジャーナリスト、反体制派など)と個人的なやり取りを重ね、オンライン上での信頼関係を構築する。

• 拡散と誘導:信頼を得た後に、偽情報の拡散や、マルウェアを仕込んだ偽のログインページへのリンク(スピアフィッシング)を送りつける。

2. 「ハック・アンド・リーク」と心理戦
標的のシステムやメールアカウントにハッキングで侵入し、盗み出した情報をSNSや偽メディアを通じて暴露(リーク)する手法だ。

• 偽造データの混入:盗み出した本物のデータの中に、巧妙に偽造した文書を混ぜて公開し、対象者の信用を失墜させたり、政治的なスキャンダルをでっち上げたりする。

• 脅迫と萎縮効果:特定の有権者や反体制派に対し、盗んだ個人情報を元に「あなたの行動は監視している」といった脅迫メールやダイレクトメッセージを送り、心理的なパニックや投票行動の抑制を狙う。

3. 偽ローカルメディア網の構築(ロンダリング)
ターゲット国の言語(英語、フランス語、スペイン語など)で、一見すると現地の正当な独立系ニュースサイトに見える「偽メディア」を大量に構築する。

• 情報のロンダリング:イランの国営メディアの主張をそのまま流すのではなく、現地のニュース記事をコピー&ペーストしつつ、その中に親イラン・反米・反イスラエルの論調や偽情報を紛れ込ませる。

• IUVMネットワーク:過去には「国際仮想メディア連合(IUVM)」と呼ばれる巨大な偽メディアネットワークを構築し、そこからSNS経由で世界中に情報を拡散していたことが摘発されている。

4. 既存の社会的分断への便乗(フリーライド戦術)
ゼロから偽の話題を作るよりも、標的国がすでに抱えている「分断の火種」に油を注ぐ戦術を好む。

• 両極端の扇動:人種問題、移民政策、中東情勢(ガザ紛争など)、選挙制度への不信感など、世論が二極化しているテーマにおいて、右派と左派「両方」の極端な意見をボットアカウント群で同時に煽る。

• これにより、社会全体の対立を激化させ、標的国の政府を機能不全に陥らせることを目的とする。

5. 民間IT企業(フロント企業)への「外注」
IRGCの軍人が直接キーボードを叩くのではなく、イラン国内の民間IT企業やサイバーセキュリティ企業、大学の研究機関に工作活動を「外注」している。

• もっともらしい否認(Plausible Deniability):国家機関と実行犯の間に民間企業を挟むことで、外国政府から非難された際に「国家の関与」を否定しやすくしている。アメリカの司法省は過去に、「Emennet Pasargad」などのイラン企業をサイバー工作の実行犯として起訴し、制裁を科している。