高市政権がロシアへ訪問団を派遣すると表明





今回のロシア訪問団派遣は、表向きは「事実無根」とされながらも、水面下で進められてきた「ポスト・ウクライナ」を見据えた実利重視の戦略といえる。

1.経済的権益の「つなぎ止め」と戦後復興への布石
政府は当初否定していたが、経済産業省が主導し、三井物産、三菱商事、商船三井などの大手商社やエネルギー関連企業に対し、5月下旬(26〜27日頃)の訪露を打診していると報じられている。

• エネルギー安全保障: サハリン2などの権益を維持し、ホルムズ海峡の封鎖といった地政学リスクに備えたエネルギー調達ルートを確保する狙いがある。

• 先行優位の確保: 侵攻が終息した際、欧米諸国に先んじてロシア国内での事業再開や、製造業・商業の主導権を握るためのパイプ維持が目的となる。

2.ロシア・中国の「蜜月」への楔(くさび)
2026年に入り、ロシアと中国が軍事・歴史認識の両面で急速に接近していることへの警戒感がある。

• 日本としては、経済的な窓口を完全に閉ざさないことで、ロシアが過度に中国へ依存するのを防ぎ、アジア太平洋地域の勢力バランスが極端に崩れるのを阻止したい考えだ。

3.国内向けの実績作りと墓参事業の再開
高市政権下において、支持層から要望の強い「北方墓参」の再開は重要な政治課題となっている。

• 経済訪問団を派遣し、ロシアの産業貿易省高官と接触することで、中断している人道的な事業(墓参など)を再開させるための「交渉の糸口」にしたいという側面がある。

背景の補足
4月の段階では、木原官房長官や茂木外相はこの計画を「事実ではない」と強く否定していた。しかし、5月に入りロシア産原油の輸入が一部再開されるなど、水面下での動きが表面化した形だ。対露制裁を継続しつつも、エネルギーや将来の経済*が行われているようだ。

そもそもトランプ政権は中国とロシアの分断を図ることを考えているようで、その流れからすれば日本とロシアの関係改善は日米関係を考えても理にかなっている。

第2次トランプ政権の基本戦略には、かつてのニクソン・キッシンジャー外交を彷彿とさせる「中露の分断(デカップリング)」という大目標が透けて見える。この文脈で日本の動きを捉え直すと、以下の3つのポイントで日米関係とも整合性が取れてくる。

1.「中露門戸開放」を防ぐための楔(くさび)
トランプ政権にとって最大の脅威は、中国の経済・技術力とロシアの資源・軍事力が完全に融合することだ。

• 日本がロシアとの経済的パイプを維持し、訪問団を派遣することは、ロシアに対して「中国一辺倒にならなくても、西側諸国(特に日本)との実利的な道が残されている」というメッセージになる。

• これは、アメリカが直接手を下しにくい「ロシアを中国から引き剥がす作業」を日本が肩代わりしている、という解釈が可能だ。

2.エネルギー安全保障の相互補完
現在、中東情勢(ホルムズ海峡のリスクなど)が緊迫する中で、エネルギー価格の安定はトランプ政権の国内経済政策(インフレ抑制)にとっても不可欠となる。

• 日本がサハリン2などの権益を維持し、ロシアからの供給ルートを確保しておくことは、グローバルなエネルギー需要の逼迫を和らげる効果がある。

• アメリカが「制裁」の建前を守りつつ、同盟国である日本が実利を確保することは、結果的に日米同盟全体の経済的強靭性を高めることにつながる。

3.「ディール(取引)」の環境整備
トランプ大統領は「ウクライナ戦争を早期に終結させる」と公言している。

• その「出口戦略」においては、ロシアに対する経済的なインセンティブ(制裁緩和や投資)が必ず交渉材料になる。

• 日本が今このタイミングで訪問団を送り、実務レベルのパイプを再構築しておくことは、将来アメリカがロシアと「ディール」を始めた際、日本がその枠組みに即座に乗り、日本の主導権を確保するための準備とも言える。

まとめ
つまり、今回の政策は単なる「独自の対露融和」ではなく、トランプ政権が進める「対中包囲網」の一環として、ロシアを中国から中立化、あるいは引き離すための戦略的布石と捉えることができる。

かつて安倍政権とトランプ政権が緊密だった時期にも、日本独自の対露外交が一定の理解を得ていた背景には、こうした「対中戦略上の利害一致」があった。今回もその再来を狙った、極めて現実的な立ち回りと言える。

こうした「大国間のパワーゲーム」を前提にすると、政府が当初この計画を「事実無根」と隠していたのも、欧州諸国や米国内の対露強硬派への刺激を避けるための慎重なポーズだったと考えられる。