麻薬密輸船爆撃に反発するベネズエラ、米国とは経済力・軍事力とも違い過ぎる

米国による麻薬密輸船爆撃に対して反発しているベネズエラだが、同国の経済は極端なハイパーインフレに陥っている。

同国は原油埋蔵量では世界一といわれ、以前は極めて裕福な国だったが、1992年に反市場原理主義を掲げたチャベス大統領就任により国は凋落の一途を辿り、2013にはそのチャベスが死亡。その後を継いだマドゥーロ前副大統領が昇格し社会主義路線を踏襲した事により、僅か数年で暴力と飢えとハイパーインフレに象徴される国にまで落ちぶれてしまった。

先ずはチャベス政権誕生から現在までのインフレの変遷を纏めると
2008年:VEB → VEF(1000:1)
2018年:VEF → VES(100,000:1)
2021年:VES → VES(新、1,000,000:1)
➡ 累計で旧通貨(VEB)から 100兆分の1 へ。

何と通貨の価値が 100兆分の1になってしまった。

こんな状況だから、マトモな兵器がある筈も無く、軍隊は国内の圧制の為に外国と戦うどころではない。

これでは他国からの支援に頼るしかないのだが、現実には
1. ロシア
• 長年マドゥロ政権を政治的に支持。武器供与(戦闘機Su-30、S-300防空システムなど)や軍事顧問派遣の実績がる。
• しかしウクライナ侵攻で手一杯であり、米国との直接対立を望む状況ではないため、実際の軍事介入はほぼ不可能。外交的擁護や武器輸出程度に留まる見通し。

2. 中国
• 石油利権を通じてマドゥロ政権を支えてきた最大の経済パートナーの一つ。
• ただし米国との関係悪化を避けるため、軍事支援には慎重。経済的な後ろ盾(石油取引・融資再開など)に留まる可能性が高い。

3. イラン
• 米国と対立する構図からベネズエラに石油精製技術や燃料を供給してきた実績あり。
• 軍事顧問やドローン供与の噂はあるが、本格的な軍事援助は制限的。

4. キューバ/ニカラグアなど左派政権国
• 政治的連帯は強いが、軍事的支援能力は極めて限定的。主に外交舞台(国連など)での擁護が中心。

5. 地域諸国(ブラジル、コロンビアなど)
• かつてはベネズエラと緊張関係にあったが、現在は「米国の軍事行動拡大を避けたい」という立場。直接擁護や軍事援助には動かない。

という事で、ベネズエラを軍事支援する国は無いに等しい。

それにしてもこれ程の悪政で国家が崩壊寸前にも関わらず、マドゥーロ政権が倒れないのは何故だろうか。これについては
・軍部と治安機関を握り
・反対派を弾圧・分断し
・石油と国外支援で最低限の資金を確保し
・国民の不満を国外移住で発散させ
・選挙制度を形だけ整えて正統性を演出

という構造により政権を維持しているのだった。

ここで、米国に対する麻薬密輸はベネズエラ自体が国家として関わっているのではないか、という疑問が湧いてくる。これについては
• 米国:政府中枢(マドゥロ含む)が麻薬密輸に関与していると公式に起訴・断定。
• ベネズエラ:全面否定し、米国の政治的攻撃と反発。
• 国際社会:ベネズエラが麻薬中継国である点は認識されるが、“国家ぐるみ”かは評価が分かれる。

まあ、西側国家はベネズエラが国家ぐるみで麻薬密輸で資金を稼いでいると断定しているようだ。