日本の百円ショップ(100均)業界にとって、中国での生産が「コスト高」「政治リスク」「サプライチェーンの多角化」の観点で徐々に厳しくなっている、という状況であり、今後この業界は成り立つのか、という疑問がある。そこで、これについて纏めてみた。
先ずは中国での生産の問題点を整理すると‥‥
• 賃金の上昇:沿海部を中心に最低賃金・現場労働者の賃金が上昇しており、低価格品を作る工場のコスト構造に影響している。
• 他コスト(物流・エネルギー・土地・環境規制など)の上昇:輸送コストや電力コスト、あるいは輸入原材料価格の国際変動などの影響も大きくなってきており、“中国モデル”での低コストが必ずしも維持できる状態ではなくなっている。
• 地政学/規制リスク:米中の貿易摩擦・関税政策、輸入制限、輸出規制、また中国国内の政策変更(環境規制・労働法など)などが、サプライチェーンの安定性を揺るがしている。
これに対して100円ショップ業界の対応は
• 生産拠点の分散/シフト:
「中国 → 東南アジア」への移転、具体的にはベトナム、タイ、インドなどが代替地として注目されている。
• 仕入先の新規開拓:
既存の中国以外の国(ベトナム、インド、ミャンマー、スリランカなど)で、低価格の原材料・部品・完成品を調達する動きがあり、百円ショップ向け商品の企画段階から中国外の仕入れ先を見つける取り組みが進んでいる。
政策支援を受ける動き:
日本政府・官庁が「サプライチェーンの多様化」「中国依存の軽減」の観点から、移転を促す補助金等の制度を提供するケースがある。
しかし、懸念もある
・初期投資と立ち上げ期間:新拠点での工場の立ち上げ、品質管理システムの整備、サプライヤーネットワークの確立には時間とコストがかかる。
・現地法規制・ビジネス慣習:土地取得・税制・労働法・環境規制などが中国と異なり、経験によるノウハウが必要。
・輸送・物流のインフラ:東南アジアの一部ではインフラの信頼性・コストが中国沿海部に比べ劣ることがある。海上輸送・通関コストが上がることも。
・品質・検査・納期管理の信頼性:中国には既に長期間の製造業の歴史があり、製品仕様・検査・改善のサイクルが確立しているケースが多い。新拠点ではこの“慣れ”をつくる必要がある。
・賃金上昇の波が拡大すること:代替生産国でも労働力需給が高まれば賃金上昇が起こりうる。ベトナムなどでもそうした兆しが既にある。長期的には「低コスト国」であるという優位は薄れていく可能性。
という事で、百円ショップの行く先は厳しいが、経営力で乗り切る事は十分に可能なようだ。
なお、百円ショップ大手3社を比較すると
企業名 | 資本金 | 売上高 年商(最近期) | 従業員数(正社員/ 臨時・パート等含む) | 備考(店舗数など) |
---|---|---|---|---|
ダイソー(大創産業) | 約 27億円 | 約 6,249億円(2024年2月期、単体) 最新(2025年2月期)だと単体約6,765億円、連結約7,242億円 | 正社員 約 741人、臨時従業員 約 24,920人(1日8時間換算、2024年2月時点) | 店舗数:国内外合計 5,325店舗(2024年2月末) |
セリア | 約 12億7,883万円 | 約 2,363億2,700万円(2025年3月期) | 正社員 約 565人、パート・臨時等 約 26,066人(1日8時間換算含む、2025年3月末時点) | 店舗数 約 2,072店舗(直営2,037店、FC35店) |
キャンドゥ | 約 30億2,800万円 | 約 833億80百万円(2025年2月末、連結) | 正社員 約 573人、アルバイト約 3,692人(1日8時間換算) | 店舗数 約 1,340店舗(2025年2月末) |
こうしてみると、ダイソーは他の2社に比べて、売り上げや規模で圧倒している。