NVIDIA AI半導体で米中間の攻防




AI技術の急速な発展は民需のみならず軍事利用の面でも極めて重要な技術となっている。そんな状況で、お馴染みのNVIDIAのAI半導体に関して、米国は中国に流出した半導体の調査を実施してきた。米国は過去2年間、NVIDIAのAIチップが中国に輸出されることを防ぐための規制を実施してきたが、中国が第三国経由の迂回輸入で先端半導体チップを確保している事が判明した。

そこで米政府は直接NVIDIAを対象に調査を行う事を指示した。IT専門メディア「インフォメーション」は、米商務省がNVIDIAに対し、自社半導体が中国でなぜ使用されているのか最終販売経路に関する内部調査を行うよう指示し、半導体商社を対象にした調査が行われていると報じている。

米国がNVIDIAのAI半導体を規制するのは、技術的な面とともに戦略的に重要である事が原因だ。中国はAIチップの入手により、超音速ミサイルなどの先端兵器を開発するにあたって、高性能なAIによるシミュレーションで兵器の性能を一気に向上させる事を狙っている。米国としてはこれを阻止する必要がある。

ところが、既に中国はNVIDIAのチップを大量に備蓄しているとも言われている。事実、米国による規制が本格化する前の2020年の時点でNVIDIA製のAI半導体を調達していた事が判明している。

ここで疑問となるのは、アップルやテスラなどの先端製品を中国で製造している事から、これらの為の高性能チップが中国に入っている事だ。アップルは中国生産の比率を減らしているとはいえ、未だ完全に他国に移管した訳ではない。それどころか、当分は生産にあたり中国への依存が断ち切れないというのが実情だ。

中国に対して極めて厳しい政策をとるであろうトランプ政権だが、とは言え、アップルなどの米国先端企業の生産を止めてしまうという事は出来ないから、さて、どうするのだろうか?