相手国の有能な者を冷遇し、逆に扱いやすい者・無能な者を厚遇することで内部を弱体化させるという謀略は、中国古代の兵法書『六韜(ろくとう)』巻二(武韜)にある「文伐(ぶんばつ)第十五」の第五節(文伐十二節の5番目)に記されている教えだ。
🔷『六韜』における該当箇所(文伐第十五・第五節)
『六韜』では、武力を使わずに敵国を内部から崩壊させる12の心理戦・間諜術を「文伐十二節」として説いている。その中の「五曰(五に曰く)」がまさにこの工作を指している。
原文
五曰、嚴其忠臣、而薄其賂、稽留其使、勿聽其事。亟爲置代、遺以誠事、親而信之、其君將復合之。苟能嚴之、國乃可謀。
訓読文
五に曰く、その忠臣を厳(げん)にし、その賂(まいに)を薄くし、その使を稽留(けいりゅう)し、その事を聴くこと勿(な)かれ。急ぎために代(だい)を置かしめ、遺(おく)るに誠事を以てし、親しみてこれを信ずれば、その君将(まさ)に復(ま)たこれと合せんとす。苟(いや)しくも能(よ)くこれを厳にせば、国乃(すなわ)ち謀るべし。
🔷意味・解釈
の謀略;敵を自滅させる4つのステップ-1024x572.jpg)
① 忠臣・有能な使者の冷遇
敵国から忠臣や優秀な使者がやってきたら、贈り物を少なくし、滞在を長引かせて引き止め、その要求を跳ね除けて冷遇する。
② 無能・扱いやすい者への交代
交渉が進まないため、敵国の君主は「あの使者では拉致があかない」と考えて焦り、別の使者(より御しやすい者や無能な者)へと交代させる。
③ 無能な使者の厚遇
新しく送られてきた代わりの使者に対しては、盛大に歓迎し、誠意を示して親しく交わり、交渉をスムーズに成立させる。
④ 結果(敵国の自滅)
敵国の君主は「新しい使者は有能で相手と良好な関係を築けた」と勘違いしてその者を重用し、最初に派遣された本当の有能な忠臣は「役に立たなかった」とみなされて失脚・冷遇される。
🔷 現代における通俗的・要約表現
現代の論壇やインターネット上では、この第5節の教えが次のような分かりやすい格言風の言葉で要約・引用されることがよくある。
の核心;戦わずして内側から崩壊させる謀略-1024x571.jpg)
・「敵国からの使者が有能であれば何も与えず冷遇して帰せ。無能であれば大いに歓待し、手土産を持たせて帰せ。
・手ぶらで帰った有能な使者は自国で『役立たず』と責められて失脚し、手土産を持って帰った無能な使者は『優秀だ』と評価されて出世する。
・これを繰り返せば敵国では無能な者が重用され、自ずと衰退して滅ぶ。」
🔷 「文伐(ぶんばつ)」という戦略の核心

「文伐」とは、「武(武力・兵器)」によらず、「文(謀略・外交・買収・心理戦)」によって相手国を打ち破る(伐つ)戦略のことだ。
• 敵の君主の欲望(酒色・財宝)を満たして骨抜きにする
• 側近を買収して内情を探る
• 賢者を排除させて無能な者を要職に就かせる
『六韜』では「十二節備わりて、乃ち武事を成す(12の工作が完了して初めて、本格的な武力行使を行う)」とされており、直接戦闘に入る前に相手国の内情を削ぎ落とし、勝てる状態をあらかじめ作り出すことが最上の兵法とされている。
中国が石破や岩谷を持ち上げて、高石首相をボロクソに言うのは、正にこの兵法を現代でも使っているのだった。