イランのホルム海峡封鎖はそう簡単にはいかない





一時的休戦提案がまとまりそうで、そうなればイランのホルムス海峡封鎖は中止される筈だが、そもそもイランは本当に海峡封鎖ができるのだろうか。

実はイランがホルムズ海峡を物理的に支配しようとしても、「言うほど簡単ではない」のかとも考えられる。その理由を3つの技術的側面から整理すると‥‥

1.レーダー発信=「ここにいます」という宣伝
船を精密誘導ミサイルで攻撃するためには、火器管制レーダーで標的を照射し続ける必要がある。しかし、レーダー波を出すということは、暗闇の中で懐中電灯を点けるのと同じだ。

• 対輻射ミサイル(ARM):イスラエルや米軍が保有するミサイル(例:AGM-88 HARMなど)は、敵が発信したレーダー波を「逆探知」して、その発信源に自動的に突っ込んでいく。

• 電子戦支援対策(ESM):イスラエルの偵察機や無人機は、常時ペルシャ湾周辺の電波を傍受している。レーダーをスイッチオンした数秒後には、その正確な座標が特定され、攻撃対象となる。

2.熱源(サーマル)と赤外線監視
ミサイルの発射準備段階での「熱」も大きな隙になる。

• 発射前の予熱:多くの大型ミサイルシステムは、発射前にジャイロの起動やシステムの予熱、あるいは液体燃料の注入など、赤外線センサー(IR)に感知されやすい熱を発する。

• エンジン点火の瞬間:ミサイルが発射される瞬間の噴射熱(プラume)は極めて強烈で、これは衛星や高高度無人機から即座に検知され、発射地点が特定される。「撃ったら最後、その場所から逃げる前に反撃が届く」のが現代の常識となっている。

3.「テレポート」できない大型ミサイルの弱点
イランが保有する対艦弾道ミサイルや大型巡航ミサイルは、発射台(TEL:移動式発射機)が非常に巨大だ。

• 衛星による常時監視:イスラエルや米国は、解像度数十センチ単位の光学衛星や、雲を透過する合成開口レーダー(SAR)衛星でイラン沿岸部を監視している。

• トンネルからの露出:イランは「ミサイル・シティ」と呼ばれる地下基地を多数持っているが、ミサイルを撃つには地上に出る必要がある。地下の出口から出て、発射体制を整えるまでの数分〜数十分の間に、上空の無人機から捕捉されれば、発射前に破壊されるリスクが極めて高い。

結論
イラン側もこの弱点を理解しているため、以下のような「物量作戦」で対抗しようとしている。

• ドローン戦:レーダーを使わず、自爆ドローンを大量に飛ばして相手の防御網を飽和させる。

• 飽和攻撃:1〜2発ではなく、数百発のミサイルを同時に発射することで、イスラエル側の反撃や迎撃能力をパンクさせる。

したがって、「技術的には非常に困難だが、イランはそれを『数』で突破しようとする可能性がある」というのが、軍事アナリストたちの共通した見方のようだ。

結局、現代のセンサー技術の前では「隠れて撃つ」こと自体が、かつてないほど難しくなっている。