イランが最友好国である筈の中国の船舶までもホルムズ海峡通過を阻止したが、実はイランのイスラム教シーア派からすれば中国は異教徒であり、実は敵と思っていても不思議はないのだった。
表面上の「戦略的パートナーシップ」とは別に、宗教的・思想的な側面から見ると、イラン(シーア派指導部)と中国の間には「埋められない深い溝」が存在する。
イランが中国を「真の友」ではなく、むしろ「潜在的な敵」あるいは「警戒すべき異教徒」と見なす理由は、主に以下の3つの観点から説明できる。
1.徹底した無神論国家への宗教的違和感
イランはイスラム教シーア派の「神権政治」国家であり、政治の頂点に宗教指導者が君臨している。一方、中国共産党は「無神論」を党是としている。
• 宗教的な分類:イスラム教の法解釈では、キリスト教やユダヤ教は「経典の民」として一定の敬意を払う対象だが、無神論や多神教はより厳しい視線で見られることがある。
• 価値観の対立:革命防衛隊のような強硬派からすれば、中国は「単なる商売相手」に過ぎず、その物質主義的・無神論的な価値観は、彼らが守ろうとするイスラムの純粋性とは相容れないものだ。
2.ウイグル問題という「沈黙のジレンマ」
中国による新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒(主にスンニ派)への待遇は、イスラムの世界では大きな問題となっている。
• イランの沈黙:イランは「イスラムの守護者」を自任しているが、経済・軍事支援が必要なために中国のウイグル政策を黙認し続けてきた。
• 不満の蓄積:しかし、イラン国内の敬虔な信者や若年層の間では「なぜ中国のイスラム弾圧を非難しないのか」という不満が根強くある。今回のように中国船を阻止する行動の裏には、こうした「貸し」を作ってきた中国に対する、「いつまでも言いなりにはならない」という宗教的プライドの誇示も含まれている可能性がある。
3.歴史的な「大国」への不信感
イランは19世紀以降、ロシアや英国といった大国に翻弄されてきた歴史があるため、外国勢力に対して極めて疑り深い性質を持っている。
• 新たな帝国主義への警戒:中国の「一帯一路」による進出を、イランの一部では「新たな帝国主義」と警戒している。
• 実利主義への不信:中国はイランの窮地につけ込んで、安価で原油を買い叩いてきた。イラン側はこれを「困っている時の足元を見た行為」と捉えており、感謝よりも「搾取されている」という被害者意識に近い感情を抱いている側面がある。
今回の事態の解釈
今回の中国船阻止は、まさに「信条より実利で結びついていた関係の限界」が露呈した形だ。
そしてこれは
「異教徒であっても利用できるうちは利用するが、自国の生存(あるいは面子)が危うくなれば、その契約はいつでも破棄する」
というイラン側の冷徹なメッセージと言える。
トランプ大統領の揺さぶりによって「実利」のバランスが崩れた結果、本来持っていた宗教的・思想的な不信感が「通行阻止」という目に見える行動として表面化した、と考えるのが自然だろう。
日本や世界から見れば、この「不安定な野合」が崩れることは、物流リスクがさらに予測不能なステージに入ったことを意味している。