中国人観光客は上流階級の筈なのに、何故あれほど下品でマナーが悪いのか


日本に旅行に来ている中国人の振る舞いは、驚くほどに下品でマナーの悪さには驚くばかりだ。あれを見ると、中国はバブルで無教養の下層階級でも旅行を楽しめるのだろう、と思ってしまう。

しかーし、中国は独裁国家であり、外国に観光に行けるのは共産党の幹部や企業の経営者、いわゆる上流階級の筈。という事は、そんな上位の国民ですら、あのマナーの悪さという事だ。

これはなぜか、と調べみた。

結論から言うと「経済的上流=文化的上流」ではない社会構造が中国には強く残っており、そこに急激な近代化・海外渡航の自由化が重なった結果らしい。

その詳細は

① 中国では「金持ち=教養層」という対応関係が弱い。
日本や欧州では
経済的上層=教養・公共マナーの内面化=国際的な振る舞い
が長い時間をかけて結びついてきた。
しかし中国では
・改革開放(1978年)以降、わずか40年程度で巨額の富が一部に集中
・富の形成が「投機・不動産・コネ・権力」経由で急激に起きた
・文化資本(マナー・公共性・国際感覚)が追いつく時間がなかった
という事情がある。
すなわち、経済的成功が「人格・振る舞いの選別」をほとんど受けていないのだった。

② 「上流階級」でも多くは農村・下層出身の第一世代
中国で海外旅行ができる層の多くは、
・祖父母世代:農民・労働者
・親世代:地方官僚・企業幹部・起業家
・本人世代:初めてパスポートを持った層
という急激な階層ジャンプの第一世代だ。
このため
・公共空間での振る舞い
・他者への配慮
・「見られている」という意識
が家庭内・社会内で一度も訓練されていないケースが珍しくない。

そういえば日本でも万博後の高度成長と、それによる土地の高騰で、下層農家が農地を売って億単位の金が入り、農協が欧米に団体旅行を企画した結果、現地ではとんでもないマナー違反が相次ぎ大ヒンシュクを買い、当時は「ノウキョウ」という単語が出来たくらいで、まあ、これと似たようなものだ。

③ 共産主義体制が「公共マナー」を育てなかった
中国では長く、
・個人より集団
・公共より国家
・礼儀より政治的正しさ
が重視されてきた。

その結果
・公共空間は「守るもの」ではなく「奪い合うもの」
・ルールは「守るもの」ではなく「避けるもの」
・他人は「配慮の対象」ではなく「競争相手」
という行動様式が社会に深く根付いてる。
これは貧富の問題ではなく、制度と教育の問題だった。

④ 海外旅行が「文明体験」ではなく「消費行動」になっている
日本や欧州では、海外旅行は本来
・異文化を学ぶ
・自国を相対化する
・行動を抑制する場
であった一方、中国では
・海外=「金を使う場所」
・観光=「自分が客で偉い立場」
・外国人=「文句を言わない存在」
と誤認されでおり、 そのため
・大声を出す
・列に並ばない
・店員・周囲への威圧的態度
が本人の中では「成功者らしい振る舞い」になってしまう。

⑤ 日本の「下層階級」との決定的な違い
日本の下層階級でもあんなに下品じゃないのは
・日本社会では階層を超えて公共マナーが共有されている
・恥の文化・同調圧力・長期教育が機能している
・「周囲に迷惑をかける=自分が恥」という感覚が浸透している

すなわち
・日本では「金がなくても最低限の公共性」は持っている
・中国では「金があっても公共性が欠如したまま
これはもう直しようが無いだろうから、日本渡航禁止令は願ったりかなったりとうい事だ。