日本も昔はパクりだらけだった、その4 自動車後編




前回のホンダN360 とローレルは、パクリといえばそうだが、どちらかといえば欧州の先端である名車をリスペクトした、ともいえる。

ところが、今回取り上げるマツダの2車種、とりわけルーチェは外見だけをそっくりに真似たもので、クルマとしての思想はチョイと安易だった。

そのそっくりさんの一つは1978年に発売されたマツダ サバンナRX-7で、RX-7の初代に当たり、マニアの間ではその型式から「FB」と呼ばれているものだ。

スタイルは誰が見てもポルシェ 924のパクリだった。

RX-7はマツダ得意の2ローターロータリーエンジンを搭載し、1,005㎏の車両重量に対して130psのエンジンだからPWレシオは7.7㎏/psと、当時の国産車としては結構な動力性能だった。

これに対して、「本物」の方は1975年、RX-7よりも3年前に発売された。ポルシェといえば911だが、924はいわば廉価版シリーズであり、ポルシェマニアからは決して評判は良くなかった。エンジンは911の空冷水平対抗6気筒に対して、水冷直列4気筒で、VWの開発したものをベースとしている。

出力は日本向けでは排ガス規制の影響を受けて100psだった。車両重量は1,085㎏だから、何とRX-7はスペック上のPWレシオでは僅かに勝っていたのだった。RX-7のサスペンションはフロント・ストラット、リア・4リング、924はフロント・ストラット、リア・セミトレーリングアームと、形式だけで比較すればRX-7も決して劣らないのだが、実際の走りは‥‥ハテ。

とは言え、こうしてみると、RX-7はそれなりに頑張っていたのだから、もっとオリジナリティのあるデザインにすれば良かったのにねぇ。

尤も、スペック上の性能が似ていてもとはいえ、RX-7の発売時の価格は197~236万円で、対する924は438~488万円と2倍以上であり、当然ユーザー層は完全に異なっていたし、RX-7ユーザーは勿論、RX-7に憧れていた層からすれば、「924?何それ」状態だから、大した問題ではなかったが、本格的なマニアから見たらば顰蹙モノだった。

という事で、RX-7の場合はクルマ時代は当時の国産車としては決して悪いものではなかったが、パクリという点では次の5代目「ルーチェ」が歴史に残るパチモンだった。

先ずはそのスタイルから

おおつと、これはまた、当時のサルーンでは最高峰だったメエルセデスベンツの、それも最上級のSクラスをパクるとは、その根性はある面尊敬に値する。

RX-7の場合は、スペック上とはいえ近いものがあったが、こちらは正に月とスッポン。5代目ルーチェは1986年に発売されたマツダの上級サルーンで、アウターサイスは全長4,820×全幅1,705×全高1,395mmでホイールベースが2,710mmと、当時の国産車サルーンでは大型の部類だ。流石にマツダの高級サルーンだけの事はある。

これに対してSクラス(W126 )は1979年に発売され、世界的に高級車の代名詞となったクルマで、一番「短い」標準モデルでもアウターサイズは全長5,020×全幅1,820×全高1,430mmホイールベース2,935mmと、ルーチェに比べて圧倒的に大きい。

その為、実際に2車種を並べれば。その違いは一目瞭然だが、写真で比べるとそっくりという状況だったし、街中でルーチェを単独で見ると一瞬、「あっ、ベンツだ」と思ってしまうくらいだった。

因みに、当時は「広島ベンツ」なんて揶揄されたものだった。

そのマツダは、何度も倒産の危機に直面したが、そのたびに乗り越えて今では大きく進化し、トヨタよりも欧州車的なクルマを作るようになった。まあ欧州車といっても、マニアが大・大・大好きのベンツ・ビーエムと比較するのは無理にしても、VWやオペルなど、欧州の安物には充分に対抗できるまでになった。

おっと、こんな事を書くと、VWオーナーからクレームが来そうだ。何故かVWのオーナーは「外車」オーナー意識が高い傾向があり、これはディーラーも同じで、やたら高級感を強調したり、客を選別したりする傾向がある。

おっと、これぁ、傷口に塩を塗る結果になってしまった。