10月1日から米東海岸で大規模港湾スト





米国の東海岸とメキシコ湾に面したすべての主要港で港湾労働者がストライキ入りし、1977年以降で初めて港が閉鎖された。

約4万5000人の港湾労働者を抱えるILA(国際港湾労働者協会)が使用者団体のUSMX(米海運連合)と進めてきた新たな労働協約を巡る交渉が9月30日の期限を前に決裂した事でスト決行となった。このストにより1日当たり数十億ドルの経済損出をもたらし、物価は上がり、雇用も脅かすと警戒されておる。

任期の残り僅かでレームダック化しているバイデン政権は、スト終結の為に連邦政府の権限を行使する考えはないといい、ストは何時まで続くのだろうか。海運アナリストによると、ストは政府が介入するまでの5~7日程度続くと予想しているという。それでも影響は1月もしくは2月まで、欧州・アジアに至るネットワーク全体に及ぶ可能性がある、とも指摘している。

このストで最も打撃を受けるのは欧州の自動車メーカーだという。今回、ストに突入した港湾は欧州勢の依存度か高く、これにより自動車のサプライチェーンを弱体化させ、米国全体に経済・安全保障上の影響が波及して、自動車業界と消費者にとつて極めた有害となると言われている。今回ストを行っている港湾の昨年の自動車や部品取扱量は米国全体の34%だった。

また、米国に輸入される自動車部品の70%が、今回ストに入っている港湾を経由しているという。自動車メーカーはストの懸念を予想して事前に調達量を増やし、在庫の積み増しをしているとはいえ、いよいよ部品不足となってらば、空輸の必要が発生し、コストが大幅にアップしてしまう。

実は自動車部品の空輸というのはそれほど珍しい事ではない。通常はコンテナ船での輸送であり、日本や欧州から約1カ月かけて米国に届くが、何かの事情により生産ラインへの供給が滞りそうになった時には、航空便で輸送すれば通関などを含めても2日あれば十分だから、これで完成車の生産ラインを止める事は免れる事ができるが、輸送コストは一桁跳ね上がる。

大統領選挙まであと5週間というタイミングでの大規模ストは、政治的にどのような影響があるのだろうか?

前述のように、バイデン政権はストを阻止したり終結させるどころか、むしろ労働者を支援している。また、トランプ氏も海運会社を批判し、米労働者の賃金上昇要求に同調し、加えて上手く機能していない自動化技術を批判している。両陣営とも選挙を控えて労働者寄りの発言をしている。

ILAは港湾自動化技術については、世界中の港湾労働者が反対運動を起こすべく、組織化したいとも述べている。