地獄の受験勉強真っ只中の高校生(浪人生含む)にとって、晴れて大学生になったらば、恋人作り放題で、暇な時間がたっぷりとあり、正に天国のような4年間を期待するだろう。
勿論、それはある面では、間違いではない。
そのためには、お馴染みのMARCH以上の大学群に入学すれば、綺麗なおねえさんの同級生も大勢いるし、しかもそれなりに優秀だし、育ちだって良いだろう。まあ、百歩譲って「日東駒専」でも良いが、ハッキリ言ってもて具合はイマイチだ。
そして、早慶なら最強、というか、この面では慶応が一番だろう。
しか~しっ。
これらの話は文系の場合であり、理科系、とりわけ工学系に入学すると、この夢は露と消える事になる。
まず、女子学生が殆ど居ない世界だ。
それなら文系学部の女子を狙えば良いだろう、なんて思うのは‥‥あま~いっ!
そもそも、総合大学であっても、キャンパスが文科系とは全く離れた場所にある場合が多い事だ。
そして、工業大学だったら‥‥いうまでも無く女子は居ないと考えてもよく、まあごく少数の女子は超高倍率となるのは、容易に想像できるだろう。
それなら、女子大にでも出かけていくか‥‥なんて思うだろうが、そもそもそんな暇な時間が無いっ。
とりわけ、就職のつぶしが効くとばかりに、安易にガチな学科、すなわち機械工学や電気・電子工学なんて選んだら、朝から晩までギッシリのカリキュラムで、重要な科目を落とすと留年となってしまう。実際に2年になって最初のガイダンスでは、見慣れた友人の何人かが見当たらなくて、そのうちに噂で留年したという話が伝って来たりする。
そして私立なら、2年から実験が始まるが、これが地獄の始まりだ。毎週実験があるのだが、一度でも休んだら、それで終わり。一応やむ得ない事情で休んでしまった場合に備えて、前期・後期の最後に1回だけ予備日があるのだが、これは最後の手段であり、風でもひいてフラフラでも、熱があっても、とにかく這ってでも出て来る事になる。
機械工学科の場合は、例えば発電の実験ならボイラーを焚いて蒸気タービンを回して発電機で発電して、その負荷は電球をずらっと並べたりして、夏何て熱いになんの。流体実験で、風洞実験ではバンバンと強風が出て来る傍でデーター撮ったり、水力学では水を流してそのデーターを取るのだけど、もう全身ずぶぬれだったり、などなど。とにかくガテン系の能力が必要とされる。
しかし、このような大規模な実験設備を持っているのは私立大学では、大手総合大学か伝統のある工業大学という事になり、ガチな工学系学科がこれらの大学にしか無い理由となっている。
実験は90分を2コマ使うから、午前中もしくは午後の全てを使う事になる。やれやれ、無事終了して必要なデーターもとれたし、とホッとしたのもつかの間、次の週までにレポートを提出しなけらならないが、これがまた大変なのなんのって‥‥。
実験は数人のグループに分けられて毎週1つのテーマを行うから、データー整理などはメンバーが手分けして処理するなどで効率を計るのが得策だが、この時、人との付き合いが下手な陰キャだと、一人で全てを処理する事になり、これではレポートが間に合わない。そして、いつの間にが自主退学して行く、という現実がある。
それでも当時は未だ学部の4年間を我慢すれば良かったが、最近では工学部は大学院進学が常識となっているようで、これがまた学部に輪をかけて大変らしく、自分の研究でも大変なのに、学部生の卒論の指導やら、前述の学生実験の手伝いなど、2年間の殆どを大学で過ごすという恐ろしい事になる。
それでも、6年間の地獄の生活を乗り切って無事就職すれば、4年間バラ色の生活を満喫した文系の友人たちに比べて、多くの場合収入も上回る事に成る。
それで、ようやく彼女を作ってルンルンと暮らそうとしたら、彼女いない歴二十数年の性格からは、そう簡単には抜け出せず、金はあっても一人暮らし‥‥。
駄目だ、こりゃ!