半導体ファウンドリー(受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、日本の熊本県に新工場を作るための竣工式を行い、さらに第2工場も建設する計画で、日本政府は兆円単位の補助金を出して喜んでいる。
また米国では、昨年10月にアリゾナ州にTSMCの工場を建設し2025年前半に生産を開始する、と発表されている。
このような動きは、台湾が中国に侵略された時の事を考えて、TSMCを日米に退避させるのか、とも思える。しかし、日本の熊本工場で生産するのは22~28nmプロセスのロジック半導体と呼ばれるもので、用途はCPUなどの制御用の半導体なのだが、これは10年前の技術だ。
それでも、現状の日本の半導体製造能力は40nmであり、それよりは進んでいるのだが、最新のiPhoneやMacBookに使われているCPUは5nmであり、ハッキリ言って先端製品では無い。また、TSMCの圧倒的な収益源となっているのも5nmと7nmだ。
では28nmプロセスのロジック半導体は需要が無いのかといえば、これらは最新のPCには使えないが自動車の制御などに使われていて今でも需要は充分にある。少し前に半導体不足で自動車のラインが止まって大騒ぎになったが、その点では国内生産が出来れば確保しやすくなるというメリットはある。
これらの半導体は価格が安いが、TSMCでは既に償却した設備で製造するためにコストを下げる事が出来るが、これからラインを作る熊本工場では設備の償却分が出ないことになる。
要するに、熊本工場では収益率の悪い旧型を新規ラインで製造するという事で、それを日本政府が兆円単位の補助金を出して補う、という問題点が一部で指摘されている。尤も日本のマスコミは先端半導体工場が日本に誘致されたと大騒ぎしているが‥‥。
さて、それに対する日本企業の動きはといえば、22年8月にトヨタ自動車やNTTなど8社の出資でラピダスを設立し、20年代後半には米IBMとも協力し2ナノ半導体の生産工場を日本国内に設けてファウンドリー事業と展開する計画が進んでいる。
ただし、3ナノ工程を跳び越えて行き成り2ナノ級半導体を量産するというのは、安定的な収率と品質が保障されるかが未知数であり、恐らく相当な苦戦とは成るだろう。ただし、TSMCの最新ラインにしても、半導体製造装置は世界的に日本のメーカーが独占に近い状況であり、日本は半導体製造のノウハウも持っている筈だ。
何れにしても、2027年頃には現状が見えてくるだろう。何やら近未来の話のよに感じていたが、実はほんの3年後の事なのだった。
.
コメントを残す