クルマ試乗記の裏話38 【羊の皮を被った狼2】




前回はトヨタの羊の皮を被った狼を取り上げたが、今回は日産に目を向けてみよう。

日産、というよりも合併前のプリンスには1.5L級の小型ファミリーセダン、2代目スカイライン(S5)のボンネットを延長して、4気筒1.5Lに代えてグロリア用の6気筒2.0Lを強引に詰め込んだスカイライン2000GTが存在した。

まあ、標準に比べればボンネットが妙に長くで違和感はあったが、羊の皮を被った狼と言えない事もない。

この2000GTは本来、第2回日本グランプリ出場の為に急遽開発されたもので、レースのホモロガーション用に合計100台が生産され、92台が一般に販売された。なお、この時の車名はスカイラインGTだった。この車はその後生産する気はなかったというが、完売後も希望者が多い事から、1965年に2000GTとして発売した。

スカイライン2000GTには日本グランプリ用とほぼ同じ、3連ウェーバーキャブと5速MTを装備したGT-Bと、グロリアと同じシングルキャブエンジンを搭載したGT-Aも発売された。この車種の簡単な見分け方はサイドのGTエンブレムで、青がGT-Aで赤がGT-Bであり、当時中学生だった私は街中で偶に見かけるスカイラインGTのエンブレムを確認するのが楽しみだったが、残念ながら赤いエンブレムは一度もお目に掛かれなかった。

1968年、スカイラインは3代目(C10)にFMCされた。C10は1.5Lに加えて最初から6気筒2.0LのGTも準備されていたが、これはS5でいえばGT-Aに相当するものだった。S5と異なり最初から6気筒エンジンを搭載する設計となっていた事から1.5LとGT(2.0L)は同じボディを使用していた。

そして翌1969年にレース用のDOHC4バルブのS20型エンジンを搭載したGT-Rを発売された。しかも最初は4ドアセダンのボディのみだったから、正に「羊の皮を被った狼」そのものだった。

大人しい4ドアセダンのボンネットフードを開けると、そこに見えるエンジンやキャブレターなど、正に圧巻だった。

とは言え、その価格は150万円と、グロリアやセドリックが100万円で買える時代では、これを買う事の出来るクルマ好きは限られていた。

C10はその後マイナーチェンジでホイールベースを70㎜短縮した2ドアクーペも発売され、これは「ハードトップ」と呼ばれた。GT-Rも設定されていたから、主力はこのハードトップに移っていったが、いやいや、4ドアセダンだからこそ「羊の皮‥」を楽しめるのにねぇ。

つづく