クルマ試乗記の裏話35 【レクサスの「M」】




レクサスISの最大のターゲットはBMW3シリーズであろう。しかし米国でも日本でも、ISは3シリーズに歯が立たなかった。そこで人気挽回策の一つとして、M3に匹敵する高性能モデルであるIS-Fを2007年12月に発売した。

価格はベースグレードが766万円で、これはBMW M3の996万円に対して約200万円安い。ややっ、またまた200万円差だ(笑

流石にIS-Fの試乗車がディーラーに常駐する事は無かったが、持ち周りで各営業所を回っていたようで、発売3カ月後に馴染みの営業所に来るので試乗が出来るとの連絡があった。という事は、IS-Fの想定購買者と思われたのか?

いやいや、そんな筈も無いが、実はこのディーラーは当時の勤務先が既に複数のレクサス車を購入している事もあり、その縁でのお誘いだった。

えっ、社用車って、役員車か何かかぁ、と思うだろうが、実は‥‥実●車だった。

この試乗は何時もと違って、高速道路やワインディングロードを含む特別なコースが設定されていた。その結果は
Lexus IS-F 試乗記 (2008/3/8)
その後ライバルのM3にも試乗している。
BMW M3 Coupe 試乗記 (2008/7/12)

ところでこのIS-Fだが、不運にも発表時期が日産GT-Rと重なってしまい、クルマ好きの関心は完全にGT-Rに向かった事で、モーターショーでも長蛇の列ができたGT-Rに対してIS-Fは閑古鳥が鳴く始末だった。しかもGT-Rの価格は性能からすれば破格の777万円で、何とIS-Fとほぼ同等だった。

こんな状況だからIS-Fは在庫が余っているかと思いきや「、実はバックオーダーを抱えていると発表された。何の事は無い、ほぼ手作りでマトモな生産ラインも無い事から、生産台数が極めて少ないのが理由だった。それでは、このIS-Fの購入者は一体どんな層なんだろうかと思ったら、どうやら中小企業の息子用の社有車として購入する例が結構あったと聞く。そういう用途には4ドアセダンというのは実に具合が良く、「クラウンより小さいクルマに乗っている」という言い訳も立つ(笑

親の家業を継ぐ褒賞としてIS-Fに乗れるという事だが、その代償はつまらない下請け仕事とレベルの低い社員相手の毎日‥‥。

な~んて言ったら中小企業経営者に怒られそうだが‥‥。

実は何を隠そう、この私の実家も中小企業の経営者であり、一時期では後を継ぐことで実家に戻って、その代償に国産高級車に乗ってはいたが、やはり仕事内容や身の回りにいる社員のレベルの低さに満足出来ず、結局大手企業に再就職した経験からの発言なのだった。