新車というのはカーマニアは勿論、一般のファミリーにとっても嬉しいものだ。とはいえ、クルマ好きにとっては、慣らし運転のために折角の高性能エンジンを押さえながらの我慢運転を強いられる事によるストレスも大きい。
この慣らし運転については賛否両論もあり、そもそもメーカーの出荷試験でフルスロットルを踏むのだから無意味だ、なんていう意見も多い。確かに、メーカーの生産ラインでは最終段階で完成車が流れてくると、検査係のアンちゃんが乗り込みフルスロットルでガ~ッと前進して、ブレーキテスターの上にドーンと乗っかって‥‥という具合で、確かにこれを見れば慣らし運転なんていらねぇんじゃねぇの、という事になる。
そしてまた、最近の加工技術は高精度の為に慣らし運転で当たりを付けないでも問題ない、という考えもある。
しか~し、高性能車の場合はやはり慣らし運転は必要だと思う。実は以前、知人が乗っているポルシェ ボクスターを運転したのだが、何やらポルシェエンジンの良さが感じられない。試しにオーナーに「慣らし運転、どういうふうにやった?」と聞いたら、「ハア~、何それ」という返事が返ってきた。慣らし運転も知らずにポルシェを買っていうのもねぇ、とは思ったが、直ぐに話題を変えて、これについては知らん顔をする事にした。
慣らし運転と共に話題になるのは1,000キロ走行時でのオイル交換だが、これについてはBMWもポルシェも必要ないと思う。これは前述のように機械加工精度の向上により、1000キロ時点で細かい金属片が溜まる、何て事は無い。
それ以上にこれらドイツ車のオイルで注意するのは、全て100%合成油が指定されている事で、これは非常に高価だが劣化が少なく、BMWの場合は2万キロ、ポルシェに於いては何と3万キロでの交換を指定している。
まあポルシェの3万キロというのは精神衛生上よろしく無いので、2万キロ程度で交換する方が安心だが、とはいえ、メーカーが指定しているという事は絶対の自信があるとも言えるのだ。
そして最悪なのは、国産車の感覚で、高価なオイルを長期間交換しないよりも、安いオイルを頻繁に交換した方が良いという考えで、合成油で設計されたポルシェやBMWに鉱物油を入れると、エンジンに大きなダメージを与えてしまう。
オイルに関して、もう一つ気を付ける事として、一部のカーショップなどで勧めている粘度の低いオイルを入れる事で、これは確かにエンジンの吹け上りは良くなったように感じるのだが、粘度を下げるという事は潤滑性を下げる事であり、エンジンに対するダメージはこれまた大きくなる。
カーメーカーは膨大な開発試験を行っていて、特にエンジンの耐久試験に関しては純正指定のオイルを使用して行うから、メーカーが保証するエンジンの耐久性は指定のオイルを使った場合であり、本来それ以外では保証されないのだ。
特に合成油の場合は粘度表示などが同じでも添加剤などが違う他銘柄は避けた方が良い。
という訳で、1000キロまでは地獄の我慢。3000キロまでもジッと我慢。5000キロで遂に待望のフルスロットルで気分爽快、という事になる。
なお、この状況は依然BMW M5試乗記で、「慣らし運転編」とその後の「フルスロットル編」という事でアップしているので参考にされたい。
⇒BMW M5 慣らし運転編 (2005/11/12)
⇒BMW M5 フルスロットル編 (2006/6/17)
因みに、フルスロットル編で速度計の針が真上近くを指している写真をわざわざ公開したのは、巨大掲示板でアンチ達が速度違反だと騒ぐのを期待しての事だった。
M5クラスの速度計はフルスケールが 300km/h 以上が常識だから、これは150km/h以上だしているに違いないと思うのだろうが、実は‥‥
M5の速度計は0~120km/hとそれ以上ではスケールが異なり、要するに330km/hを均等に目盛ったら街中で40km/h付近の走行時に極めて使い辛くなってしまうので、このような目盛配分になっているのだった。さっすがーはBMW!。そしてそんな事を知らない無知なアンチ達を引っかけて悦に入るというのも密かな楽しみだった。
ところでポルシェのメーターはどうなっているのか‥‥といえば
911ターボの場合フルスケールは350km/hで均等に目盛られていて、しかも小径メーターであり、これでは40km/hと50km/hでは針一本分くらいで、実用性は全く無いっ!
ところが、真正面の回転計下部にはデジタル速度計が仕込まれていて、実は通常はこちらを使用するのが常識なのだった。
と、今回はBMW320iから離れてしまったが、元々この連載は「試乗記の裏話」なので、これは趣旨にあっているのだった。
次回につづく。