オリンピックの生中継でライフル射撃を見た(2)

 

本題の3姿勢に入る前にエアーライフルとの比較について述べてみる。

エアーライフルの競技は立射のみで、膝射と伏射は無い。標的迄の距離はそれぞれ10mと50m。下の写真で両種の銃を比較するが、ライフルは銃身が長く写真では判り辛いが銃には何やらごちゃごちゃした器具が付いている。以前はこの銃に対するルールの自由な事からフリースタイルと呼んでいたが、現在ではこれが標準となっている。

そしてどちらも単発で、一発撃つ度に弾を装填する。エアーライフルはとも角、ライフルでも連発にしないのは、弾倉を付けると次弾が遊底を押す事によって微妙に精度が落ちる事が最大の原因だ。

使用する弾はライフルが.22LRと呼ばれる口径5.6㎜の実包で、実は結構威力があり、ピストル用としても使用されている。映画007でジェームスボンドが所持するピストル、ワルサーPPKがこの弾を使用する。

対するエアーライフル弾は、鉛のつづみ弾と呼ばれるもので口径は4.5㎜、圧縮ガスの力をフルに利用する為に内部が中空になっている。

銃本体を比較すると、エアーライフルは一見するとライフルと似ているが実は各部の調整範囲が狭く、また銃身の下にガスボンベが見えるし、その銃身自体も太くて長い。

試合時の服装は、ルールでは上着として定義されている通称射撃コートで、実は少しでも体の動きを規制した方が有利になるために、ルールギリギリのところで分厚い牛革の裏に、これまたゴワゴワのキャンバスを張り付けたもので、更に銃が当たる肩や伏射時に肘で支える部分などにゴムのすべり止めが付いているなど、極めて特殊なものだ。

そしてズボンは射撃姿勢によって形状が変わるように、サイドが全てチャックで、立射以外はこれを開けて足を自由にする。従って競技の途中で姿勢が変わる度に段取り代えが必要となる。

シューズも靴底がまっ平な専用のもので、歩くことを想定していないシューズというのも他の競技には無いものだ。下の写真は伏射から立射に移る前の段取り代えをしている状況だ。

今回のライフル射撃の競技場は朝霞の自衛隊体育学校内に設置されているが、実は前回の東京五輪の際にも朝霞に射撃場を作り、その後は民間の競技場としても使用できた事で、東京都大会クラスの競技、また区や市レベルの競技でも使用する事が出来たが、何しろ半世紀前の施設だから設備がめっちゃ古かった。

今回はオリンピックのお陰で立派な施設が出来、今後は民間の競技会でもその恩恵を受けられるだろう。これは五輪に限らず国体でも同様だが、マイナー競技はこのような大規模な大会の為に整備された施設が、その後も使用できるという面では大きなメリットもある。まあ、一般人からすれば税金の無駄遣いと思うだろうが、マイナー競技の競技者からすれば実に有難い事なのだ。

実際に関東圏のライフル射撃上は、神奈川県の伊勢原、千葉県の四街道、埼玉の長瀞と全てのライフル射撃場は国体によって整備されたものだ。

以前はライフル射撃競技といえば、観客を入れてもTV中継しても、傍から見れば何がどうなっているのか判らず、全選手が打ち終わった後で集計された結果を見て初めて誰が優勝したのかが判るというものだった。

しかし今の時代、これでは全く不人気種目になってしまうという事から、予選を勝ち抜いた8人が、短時間に競い合い、その結果もリアルタイムで表示されるようになった。

ライフル競技の標的は、50m先に置くと殆ど豆粒くらいで、国体クラスの射撃場では個人が専用のスコープをセットしてこれで確認するが、オリンピック級の場合は各選手に専用のディスプレイが用意されている。

ライフル競技の標的は、50m先に置くと殆ど米粒くらいの大きさで、これを照準についているリングに対して同心円に合わせるのだが、それで10点圏は10円玉くらいの大きさだ。下の写真を見ると、50m先にポチっと見える標的に対して、上部にはその結果を表示するディスプレイがあり、観戦者もリアルタイムでその戦いが判るようになっている。

ただし、この方式は国際競技や全日本クラスであり、ローカルの競技会では使われる事は無いし、何より設備が無い。

そしてテレビなどの中継では、画面に結果のディスプレイが表示されるので、選手が撃った後、僅かなタイムラグはあるが、ほぼリアルタイムで結果が判るから、結構見ごたえがある。

という事で、各ポジションの詳細は次回につづく。
オリンピックの生中継でライフル射撃を見た(3)

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