Subaru Forester XT
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元を辿れば3月7日の日記でハリアーを取り上げた時に、読者のいわゆるスバヲタさんからライバル一覧表にホンダ CR-V が入っているのにフォレスターが無いのは何事だ、という複数のクレームがあって、その一つに至ってはフォレスターは SUV としてはポルシェ マカンにも勝る性能だという気持ちの入れようだった。そこでそれなら試乗記特別編でマカンと対決させて、まあ正直いってフォレスターをコテンパンにするか、逆に恥ずかしいくらいの褒め殺しでもやってみうかという魂胆もあり、その為にはマカンより高性能というフォレスター XTに試乗し無くてはならない、といことで今回の試乗記となった。

それでぇ〜、なんでぇ、簡易試乗記なのかといえば、そりゃ車格から言っても当たり前で、レヴォーグを本編で取り上げたのは栄光のレガシィ ツーリングワゴンの末裔だという、いわゆる出自の良さを買った訳で、この辺は人間と同じで‥‥とかいう話はここではやらないが。

ということなので今回は試乗結果だけさらっと纏める事にして、車両の内外装については 4月8日からの日記を参照願うことにする。

それでは早速ドライバーズシートに座ってみることにする。標準的なサルーンよりも少し高めのボティとは言ってもトラック的な ”よじ登る” 感じはなく、身長のあるドライバーならば普通に乗用車に乗るのと大きく変わる事は無い。これはフォレスターに限らず最近の SUV では普通の事で、まあフォレスターの全高1,751o という寸法はレヴォーグの約1,500o よりも高いが、本格的なオフロード車のランドクルーザー70 の全高は 1,900o 以上もあるから、SUV はセダンとオフロード車の中間ということで、要するにクロスオーバーだ。

そしてシートに座ると、これはスバルに限らないが以前に比べれば遥かにマトモになったシートは体をちゃあんとサポートし、どう調整しても体の一部が浮いてしまうような事も無い。ただし、すご〜く良いかと言われれば、まあそこまでは言えないが‥‥。そして前方の視界は適度に高い視線のお陰て見切りも良いし、サルーンからいきなり乗り換えても大きな違和感は無い。

エンジンの始動は今では当たり前のインテリジェントキーと丸い押しボタンであり、その位置はダッシュボードの右端で近隣にある他のスイッチを含めてレヴォーグと共通だった。そしてコンソール上の AT セレクターもレヴォーグと同じで、まあエンジンとトランスミッションが共通なのだから当然ではある。ところがパーキングブレーキを解除するにはレヴォーグのように電気式ではなくその昔から伝わるレバーによる方法で、これは車両の搭載レイアウト上の関係なのか、それとも単に設計時点の違いでフォレスターでは間に合わなかったのかのどちらかだろうが、恐らく後者だと思う。

実際に走りだす前にフォレスターXT とレヴォーグ 2.0GT のエンジンについて比較しておく。両車共エンジンは水平対向4気筒 2.0L ターボで型式も FA20 と同じだが、最高出力と最大トルクはそれぞれ、280ps / 350N-m および 300ps / 400N-m であり、数値上ではレヴォーグが優っている。そしてエンジンルーム内の外観も少し違う。という事を踏まえて、いよいよ走り出す事にする。

D レンジで走り出した時のフィーリングは当然ながらレヴォーグと殆ど同じで、公道に出て2/3 程度のアクセルを踏んでの加速は何やらレヴォーグよりもトルク感があるというかレスポンスも少し良いようにも感じる。そこで今度は走行モードを変えてみる。モード切替スイッチはレヴォーグと同様にステアリングホイールのスポーク部分に仕込まれていて慣れないと面食らうが、この点では既にレヴォーグで一度面食らった経験から、今回はスンナリと操作出来た。なお、デザイン自体はレヴォーグと少し違っていて、言ってみれば設計時点の新しいレヴォーグの方が垢抜けている。

スポーツモードに切り替えるとこれまたレヴォーグのスポーツモードよりも明らかにレスポンスが向上して、レヴォーグの時は正直言って「ダメだこりゃ」という気持ちも湧いていたが、フォレスターの場合はまあ合格という感じだ。勿論欲を言えば色々あるが、なんたってフォレスターは背の高い SUV であり、これがスポーツワゴンのレヴォーグよりも体感上では性能が良いというのはこれいかに。しかもスペック上はレヴォーグの方がパワーもトルクも大きいのだが。

この件は最近試乗したプリウスでも先代よりもモーターのスペックをダウンしたら返ってレスポンスも加速自体も旧型よりも良くなってしまったという事実を示すように、フォレスターの場合も寧ろ無理なカタログパワーを出さない方が、実用性能は上回るという事だろう。

次に操舵性はどうだろうか。今回の試乗もそんなに気合を入れたものではないから、コースの途中にワインディング路なんていうモノも無く、まあそれでも一般道での多少のコーナーで試した範囲では背の高い SUV としては十分に合格だが、マカンと比べると‥‥おっと、これは特別編の楽しみにしておこう。元来クロスカントリータイプの4WD なんていうのはハンドリング云々を論じるどころの騒ぎでないくらいで、下手をすると高速道路の100q/h 巡航だって避けたいクルマもあった。それがトヨタのハリアーでは FF中型セダンのカムリベースという事でチョイと出来の悪いセダンくらいになったのは、実は当時としては驚きだった。それがBMW X5 では、何と高い視点の4WD車が遠心力を感じる位のコーナーリングが出来るという、これまた大変な驚異だったが、その後は各社も研究を重ねたようで、まあX5 とは言わないまでも結構良くはなっている。

なお中心付近でのステアリングの応答性は SUV としては決して悪く無いし、操舵力も適度に軽く万人向きということろだが、言い換えればレヴォーグとも似ている。ということはスバルというブランドから想像するようなマニアックなものではないが、動力性能も含めてそういう用途はWRX STi に任せておけばいいだろう。そして乗り心地については適度に固いが不快ではないという昔だったら「欧州車顔負けで国産車では飛び抜けている」と表現してスバヲタさん達を優越感に浸らせる事が出来たが、最近では国産他社もレベルが上がってきて、スバルが特別という訳ではなくなってしまった。

最近の国産車の進歩という点ではブレーキも同様で今時効きの悪いブレーキなんていうのは先ずお目にかかれないが、その中でもフォレスターはスバルの他車と同様にフロントに2ピストンキャリパーを採用しているから容量的にも十分だろう。こういう部分は普段の市街地走行では違いは判らないが、例えば箱根旧道を降坂するような場合では差が出るかもしれない。といってもシングルピストンの他車でも、降坂の最後のほうで少し効きが悪くなる程度だろうとは思うが。

さてフォレスター XT の結論だが、性能自体は国産中型 SUV としては文句無しだが、313万円という価格を考えれば、もう一頑張りして BMW X1 (385万円) という選択もある。勿論動力性能では圧倒的にフォレスターXT だが、なんたって天下の BMW の SUV だから成金のプチセレブ御用達高級幼稚園にも鼻高々で乗り付けられるが、これがスバルじゃあねぇ。

ただし未だ試乗はしていないがフォレスターのノンターボである2.0i だったらば何と215万円から用意されているし、ミッションだって 6MT も選択できる。レヴォーグでも強烈な加速以外では 2.0GT より寧ろ 1.6GT の方が優位な点も多く、しかも価格は買い得ということで、スバルの場合は寧ろ廉価モデルに掘り出し物がある場合も多い。おっと、それならフォレスター 2.0i の試乗記を書けよ、なんて言われないように、このくらいで終わりにしておこう。

注記:この試乗記は2016年4月現在の内容です。

追 伸
冒頭に述べたように今回の試乗はポルシェマカンとの比較の為というのが主な目的であり、本命はこれから先の特別編となる。

ここから先は例によってオマケだから、言いたい放題が気き入らない人達は、読まないことをお勧めいたします。

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