スイスポのステアリングホイールは可也の小径で、操舵力は重すぎず軽すぎずで丁度良い。
この小径ステアリングホイールの影響もあり、レスポンスは極めてクイックで、これぞ軽量級スポーツハッチの真髄と言いたくなるくらい楽しさ満点だ。よくミニクーパーのことをゴーガートのようだと表現されるが、スイスポは本当にゴーカート感覚で、それでいて決して過敏ではないのも嬉しい。
これはもう、どこかワインディング路を探すしかないと思い、少し道が狭いのとゴミゴミしているという難点はあるが、とに角カーブが続く場所に行ってみた。実は殆ど初めてに近
いコースであったことと、道幅が狭く(と、いってもセンターラインはある)見通しも悪いし、その割には案外人通りが多いという条件なので決して無理は出来ないが、それでも常識的な
範囲で目一杯速いコーナーりングを試してみたが、FFとしては最も素直な部類で、しかも全幅が1,695mmの5ナンバーサイズだから、実に取り回しが良い。
というよりも、感覚的には更に車幅が狭いようにすら感じるのはボディ自体はもっと狭くて、5ナンバー一杯というのはあくまでフェンダーの張り出した部分であり、実質の全幅は
もっと狭く感じるからだろう。
クルマにも慣れてきたので、今度はもう少し色んなことをやってみる。前方にチョッときつそうなブラインドコーナーが見えてきたので、3速2,000rpm(40km/h弱)から軽くブレーキングしながら、2速にシフトダウンする。この時ブレーキを踏んだ右足を左回転に捻って、踵でチョイとスロットルを踏んでやり、エンジンが一瞬吹け上がったところでクラッチを繋ぐと2,300rpmくらいで繋がり、この時の速度は30km/h強だった。
このままきついコーナーを回ってみるがチョッと減速しすぎたようで、ここは40km/hのままでも余裕だったようだ。スイスポの4輪ディスクブレーキは最近の実用車らしく軽い踏力で良く効くが、こういう運転をするにはちょいと効き過ぎの感はある。それでも慣れれば問題なくH&T
(ヒールアンドトウ)が出来るのはオジサンマニアには嬉しいものだ。こんなことを繰り返していると、目一杯のコーナーリングなんて気張らなくても、リズムに乗って余裕で連続コーナーを次々にクリアしていくのも充分に楽しいものだ。
そして、直線では無駄とは知りながらもシフトアップして、つぎのコーナーでシフトダウン、なんていう無意味なことをやりたくなってしまう。
以前、先代スイスポ(AT)に試乗したとき、やたら硬いサスが気になった。スポーツというからには硬くても当然だが、先代スイスポの固さは所謂ガキっぽい硬さで、ストロークの短いガチガチの足回りだった。これに対して今度のモデルは硬めではあるが剛性感のあるボディとしっかりしたダンパー(モンローが付いている)
によって、出来の良い欧州車的な乗り味だった。
まったく、ここ10年程でのスズキの進歩には目を見張るものがある。
何やら、前回のインプレッサに引き続いて、べた褒め状態になってしまったが、あれ程感心したインプレッサも操る楽しさから言えば、スイスポの敵ではない
(ただし、しなやかな乗り心地はインプが上か)。実際にスイスポのライバルとして戦えるのは、一部の欧州車ではないか、なんて思うほどに国産車では唯一の存在だろう。
まあ前編で述べたように、良いも悪いも1.6LのBセグハッチバックがスイフトのみだから、比較しようもないが。それに、この手のクルマを喜ぶユーザーの絶対数は知れているから、結局スイスポ1車種で日本中の需要を満たしてしまいそうだ。近日中には一足遅れでATのスイスポも発売されるだろうが、このクルマはMTで乗ってこそ意義がある。
しかし、幾らオヤジがMTに乗りたくても、このスイスポを家族で使う下駄代わりというか、買い物などの近場専用車とするには、MTという事実が重く圧し掛かる。
さ〜て皆さん、家族を教育するか、諦めてATにするか。な〜んて悩んでいるのも楽しいものだ。
注記:
この試乗記は2012年1月現在の内容です。
簡易試乗記は本編の試乗記に比べて評価基準を甘くしています。従って簡易試乗記で高評価であっても、本編では並以下である場合も考えられます。
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