スバルインプレッサがフルモデルチェンジされた。国内のスバルラインナップは軽を除くと、事実上レガシィとフォレスター、そしてインプレッサだからメーカーにとっては外すことの出来ないモデルチェジでもある。
ラインナップとしては今回試乗した15S(約150万円〜)と2ℓ自然吸気の20S(約195万円〜)、そして2ℓターボのS-GT(約247万円〜)で、15SのみFFとAWDが選べ、他はAWDのみの設定となる。
最近は少数派となってしまったMTについては、15SとS-GTに設定があるが、一番売れ筋の20Sには設定がないから、自然吸気のMTに乗りたいマニアは嫌でもアンダーパワーの15Sを選ぶ羽目になる。
そして、この事情は何故かライバルであるマツダアクセラと同じだ。
将来的にはセダンも発売されるようだが、当分は5ドアハッチバックのみとなる今回の新型は先代の面影が全く無い。
先代で始めたプロペラをモチーフにしたグリルは、好き嫌いは別としても、スバルのアイデンティティという面では歓迎できたのだが、なんと今回はあっさりとそれを捨て去ってしまった。
メルセデスベンツのスリーポインテッドスターは当然として、BMWのキドニーグリル、そしてアウディは従来の4シルバーリングに加えてシングルフレームグリルで大成功したように、他社とは一味違う特徴的なブランドになりたいのなら、誰が見てもスバルと判る事は絶対に必要なのだが
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それでは、新型インプレッサのスタイルはといえば、先行で発表されていた写真でみたよりも実物のほうが遥かに良いことは間違いない。5ドアハッチバックというよりもワゴンに近い形状は、VWゴルフよりもアウディA3に近い。
新型インプレッサのリアスペースは、このクラスとしては十分
な前後空間を持っている。これなら、大人4人でのロングドライブも可能だろう。シートの表皮は2Lモデルに比べると流石に落ちるのは仕方ないが、座り心地自体は以前のスバルのように10分で腰が痛くなったり、走行中にズルズルと体が前にずっこける程の酷さでは無い。
フロントシートは前後とリクライニングに加えて、最近流行のラチェットハンドルによる上下も備えているなど、それなりの進歩はしている。
シートに座って何よりも感じるのは、幅方向に余裕があることで、これならレガシィよりも上じゃないかと思ってしまうが、実際に旧型に対して幅を増やしたわけでもなく、
ドアの内張りをえぐるなどのテクニックで実質の幅を広げたそうだ。やはり今度のインプレッサは社運が賭ってるぞ、という気迫を感じる。
内装の質感は一見したところではスバルとしては大いに進歩している。ダッシュボードのシボも綺麗な革目で、トヨタも顔負けのレベルだ。
が、指で叩いてみると痛てえ〜っ!コチコチと音がして気が付いたのは、硬質樹脂による見かけだけのパット風で、これはドアの内張りなども同じだった。実はインプレッサを試乗した直ぐ後に、これまた最近モデルチェンジされたトヨタのプレミオを
見たのだが、
こちらのダッシュボードにはシッカリと弾性樹脂が使われて、指で押すと凹むし、叩いてみてもシッカリと衝撃を吸収した。
シボのついたパットとともにシルバーのトリムやパネル類もチョと見た目は非常に高級感があるが、これまたよく見れば安っぽい表面処理で、
少し高級な携帯電話やラジカセのレベルだった。このチョット見の良い内装は、見かけが悪くても実用には差し支えないし、むしろ耐久性では有利だからコレでいいのだ!というスバル的なメッセージを捨てて、大衆を誤魔化したほうが勝ち的なものを感じるが、まあ、経営を安定されるためと思って許そうじゃないか。
15Sエンジンは110ps/6400rpmの最高出力と14.7kgm/3200rpmの最大トルクを発生させる。
最近のクルマとしては車重1230kgと軽量ではあるが、それにしても110psのエンジンと旧式な4ATの組み合わせから得られる動力性能は、ハッキリ言ってトロい。これはインプレッサに限らず、アクセラ15にしてもゴルフE(1.6)にしても、ブランド物のBMW116やアウディA3の1.6などでも同じではあるが、
個人的にはこの手の低出力なモデルは堪えられないので、これ以上の評価は止めておく。ただし、メーカーの思惑では女性ユーザーの街乗り用途が目的のグレードだから、特に問題は無いのかもしれない。問題
になるとしたら、2Lの自然吸気である20SにMTの設定が無いことから、
この15SのMTを買うマニアの場合で、果してこの動力性能で満足できるのだろうか?
既に新型インプレッサに試乗したアマチュアのサイトで話題になっている乗り心地を中心にしたサスの出来の良さを調べる為に、今回は未舗装の凸凹道を選んで走ってみた。
結果は噂どおりで、こんな凸凹道でも乗り心地は極めて良いし、この柔らかいサスにも関らずに、シッカリ安定している。ドイツ車のダンパーを効かして一発でショックを吸収するのとは異なり、それでいたクラウンに代表されるフワフワではない。
強いて言えばフランス車的と表現すればいいのか、プジョーの猫足やシトロエンのハイドロも真っ青という程にレベルが高い。
この結果に記を良くして、以後はマンホールの段差や橋のジョイント、ついでに継ぎ接ぎだらけの舗装路を好んで走ってみたが、いづれも何事も無かったように通過した。