Z4のライバルといえばメルセデスSLKとポルシェボクスターということに異論はないだろう。国産のオープン2シーターといえば本家本元のマツダロードスターがあるが、価格的にもスペック的にも同一基準で比較するには無理がある。残るはフェアレディZだが、今現在
では新型のロードスターモデルは未発売である。ということで、下の表のように定番同士の比較となった。
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BMW Z4 |
BMW Z4(旧) |
Mercedes Benz |
Porsche |
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sDRIVE35i |
30si |
SLK 350 |
Boxster S |
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車両型式 |
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LM30 |
BU30 |
171458 |
987MA121 |
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寸法・重量・乗車定員 |
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全長(m) |
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4.250 |
4.100 |
4.110 |
4.340 |
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全幅(m) |
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1,790 |
1,780 |
1,810 |
1.800 |
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全高(m) |
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1,290 |
1.285 |
1,300 |
1.295 |
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ホイールベース(m) |
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2.495 |
← |
2.430 |
2.415 |
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駆動方式 |
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FR |
← |
← |
MID |
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最小回転半径(m) |
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5.4 |
4.9 |
4.9 |
5.2 |
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車両重量(kg) |
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1,600 |
1,430 |
1,500 |
1,420 |
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乗車定員(名) |
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2 |
← |
← |
← |
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エンジン・トランスミッション |
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エンジン型式 |
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N54B30A |
N52B30A |
272 |
- |
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エンジン種類 |
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L6 DOHC TURBO |
L6 DOHC |
V6 DOHC |
F6 DOHC |
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総排気量(cm3) |
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2,979 |
2,996 |
3,497 |
3,436 |
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最高出力(ps/rpm) |
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306/5,800 |
265/6,600 |
305/6,500 |
310/6,400 |
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最大トルク(kg・m/rpm) |
40.8/1,500-5,000 |
32.1/2,750 |
36.7/4,900 |
36.7/5,500 |
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トランスミッション |
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7DCT |
6AT |
7AT |
7DCT |
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燃料消費率(km/L)
(10/15モード走行) |
9.7 |
10.2 |
9.1 |
8.3 |
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パワーウェイトレシオ(kg/ps) |
5.2 |
5.4 |
4.9 |
4.6 |
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サスペンション・タイヤ |
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サスペンション方式 |
前 |
ストラット |
← |
3リンク |
ストラット |
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後 |
セントラルアーム |
← |
マルチリンク |
ストラット |
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タイヤ寸法 |
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Fr:225/45R17
Rr:255/40R17 |
225/45R17 |
Fr:225/45R17
Rr:245/40R17 |
Fr:235/40ZR18
Rr:265/40ZR18 |
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ブレーキ方式 |
前/後 |
Vディスク/Vディスク |
← |
Vディスク/ディスク |
Vディスク/Vディスク |
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価格 |
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車両価格 |
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695.0万円 |
610.0万円 |
754.0万円 |
799.0万円 |
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備考 |
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6MT:752万円 |
新型Z4は先代に比べて明らかに高級化していたが、スペックとしては多少寸法が大きくなった他、エンジンのハイパワー化(NAからターボへ)とミッションのDCT化が大きな違いとなる。またボディの剛性感も
充分に改善されているが、その代償は大きさの割りに増えた重量(1430⇒1600kg)だ。この170kgもの重量増加は、大幅なパワーアップ(265⇒306ps)にも関わらず、パワーウェイトレシオが5.4⇒5.2と大した変化はないという結果に終わっている。
高級化とハイパワー化の結果は当然ながら価格の上昇となったが、先代3.0に比べて85万円の差額には、新型エンジン+ツインターボ化とiDRIVEの標準化、それにソフトトップからRHT化が含まれている事を考えれば、決して不当な値上げではなく、むしろ先代より買い得とも思える。それに米国での35iの価格は$51,650で、しかもこれはDCT(+$1,525、標準はMT)、ナビ(+$2,100)など日本仕様と同等にするには$4,000程度の追金が必用だから、概ね$55,000程度となる。これに対してボクスターS(6MT)は$56,700とZ4 35iとほぼ同価格となっているが、国内価格はZ4の695万円に対してボクスターSは752万円と、50万円程割り高になっている。すなわち、今まで米国価格に対してもそれ程違わない良心的値付けと言われていたボクスターよりも、ボッタクリと言われてい
るBMWJが輸入するZ4が買い得価格を付けていることになる。BMWとしては本気でZ4で勝負をする気なのだろう。もっともZ4はボクスターSに対して、性能的には辛いものがあるから、国内でのライバルは実質的には2.9のボクスターとなり、価格はPDKで655万円。ただし、何時も言うようにポルシェの価格は本当のスッピンで、これにZ4並みの装備をすれば最低でも50万円はかかるから実質の価格は約700万円となり、Z4 35iとピッタリと一致する。
こうしてみると、新Z4は米国でも随分と強気の値段で、この5.5万ドルというのはM3クーペの$57,850やM3セダンの$54,850に近い価格だ。まあ米国のM3は日本国内仕様に比べれば装備が質素ではあるが、それにしてもM3の国内価格を考えれば、米国でそれに近い価格のZ4の国内価格が買い得であることは一目瞭然だ。あっ、ヤバイ、ヤバイ。またM3オーナーやM3が夢の
BMWオーナー達に喧嘩を売るような事を言ってしまった。
さて、ここまで比較してみて、価格的にはボクスター(PDK)がライバルのようだが、クルマの性格や性能は大いに異なるから、本来ならばユーザー層は全く別の筈だが、日本では案外競合する
場合もあるのかもしれない。ポルシェは最近はマイルドになったとは言うものの、Z4に比べればボクスターは遥かにマニアックだし、国産の高性能車(ランエボや32〜34GTR等)からの買い替えも結構あるようだ。
そして、こういうユーザーは他社は全く考えていない指名買いが多いとか。これに対してZ4、特に35iは裕福でオシャレなユーザーが対象だろう。先代Z4
の2.5ならば400万円代の中ごろで買えたから、国産車に乗っていた走り屋オーナーが頑張って買う例もあったが、今回からは2.5ℓ(何故か23iと呼ばれる)でも523万円もするから、ちょっと手を出しにくくなってしまった。
SLKやボクスターと比較するには、チョッとばかり格落ちだった先代に対して、新型Z4は同一クラスのライバルとなった。古典的なロングノーズと近代的な内外装のZ4か、設計時点は多少古いがオーソドックスで伝統を感じさせるSLK
か。そして正真正銘ポルシェその物で、しかもレーシングカーばりのドライサンプエンジンをミッドシップに積むボクスターか。どれも夫々の良さがあるから、どれを選んでもオーナーとしては十分な満足を得られるだろう。クルマも総額750〜800万円も出せば、確かに満足感は非常に高い。
しかし、二人乗りのオープンカーを法人の経費で落とすには結構根性が必要だし、実用性には縁遠いクルマを個人で買うには山ノ神の稟議が難航するだろう。そんな訳だから、一番のターゲットユーザーは子育ての終わった熟年夫婦だろうか。老後のフルムーンのドライブには確かに似合う。
でもなぁ、この手の低いクルマって、脊柱管狭窄症の身には乗り降りが辛いよねぇ。
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